先日「県がん診療連携クリニカルパス作成検討会」に参加してきた。
趣旨は以下のとおりである

県がん対策推進計画に基づき、県内のがん医療機能の分化・連携を推進し、がん医療の水準の向上を図る目的で、がん診療連携協議会(会長:○○大学医学部附属病院  院長)及び県在宅緩和ケア推進連絡協議会(会長:○○大学医学部附属病院  がん治療センター部長)が中心となり、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、婦人科がん、肝臓がん、前立腺がん、在宅緩和ケアに関する地域連携クリニカルパスの試案が作成されました。

 地域連携クリニカルパスは、がん患者が急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような診療計画を作成し、治療を受ける医療機関で共有して用いるものです。
診療に当たる複数の医療機関が、役割分担を含め、あらかじめ診療内容を患者さんに提示・説明することにより、患者さんが安心して医療を受けることができます

この会に参加した感想がいくつかあるので述べてみたいと思う。
① がん治療に取り組む中で医療機関の連携を深めていくことは素晴らしい
今までのガン難民はこういった連携をすることで半分は解消できるだろう。

というのもガン難民の意味にはガンの治療を受けられない状態になった患者さんが、ほかにいくところがないというのが問題であるからだ。このクリニカルパスによって、できることはガンの再発が起きたり増悪起きた場合にすばやく対応して抗がん剤治療が(主に)受けられるということである。また、3大治療が効かなくなった場合にもホスピスへスムースに患者を紹介できるからである。

② 次に感じたことは、まるで抗がん剤と放射線療法と手術しか方法がないという前提の下に考えられた発想だということである。
これではガン医療の水準の向上を図る事はできないのではないだろうか?

日本のガン死亡率は毎年上がっている。いまや日本人の2人に1人はガンになり、3人に一人はガンで死亡しているのだ。

そしてガンの治療は進歩しておらず、死亡率は上がり続けている。

一方代替医療統合医療を取り入れたアメリカでは年々ガンでの死亡率は減ってきているのだ。

今現在の3大治療では限界があるのに、アメリカの例を見ても統合医療の役割は大きいのにどうしてこれを取り入れないのだろう?

確かに現在の日本の保険医療は上の3つの治療手段しかないのであるが、それだけが治療方法だというドグマからは逃れてないな、という感想である。

ガン難民の多くは実は、ホスピスに行けば解消するのではなく、もうほかに治療法が無いといわれた時に発生し、ホスピスへといわれて完成するのではないかと私は考えている。

つまりガン難民とは治療法が無いという暗闇へ突き落とされてしまうことから起こっているのだ。あなたにはもう余命が3ヶ月である。治療法は無い、と言い切ることが本当にできるのだろうか?

もしできるとしたらその医師は世界中で効果がある代替医療や統合医療に精通しているのだろうか?私はそう考える。

もし私の家族が担当する医師から「3大治療以外に方法が無く、そのいずれも効果がない。つまり後は死ぬことを待つだけです。」
といわれたら私はその医師に心があるのかと疑ってしまうだろう。

患者さんは弱気立場にいるのだ。その患者さんに自分の知っている治療法が効かないから、あなたはもう助からないというから、患者さんは精神的に殺されてしまうのである。そして、傷ついてた心で難民のように治療法が無いかとさまようのだ。

本来医師は、患者のために働くものである。患者さんを救うために勉強し新しい方法を模索し、そして患者さんの心に同情して、一緒に頑張ろうと励ましあうのではないだろうか?

3大療法しか認めない医師は患者さんに最後の通告するのが仕事なのだろうか?もっとほかにも方法があるのではないかと考えて、謙虚になるべきではないだろうか?医師が科学者であるなら少なくとも私はそうあるべきだと思う。

③ クリニカルパスは結局のところ3大治療の中で治療を完結させようとしている。
 
そこには代替医療も統合医療も入り込む隙間は無かった。少しでも再発すれば、抗がん剤治療が待っている。放射腺療法が待っているのだ。このパスを作る目的はがん患者さんをこの3つの治療法の中に閉じ込める働きを強烈に補完するものの用に思えてしまった。

これで本当に患者さんは安心して医療を受けることができるのだろうか?逆に3大治療に封じ込められ、3大治療から外れたときには死の宣告が待っている刑務所に入れられたような気持ちになるのではないだろうか?

そういえばこの会合のホテルの会場代金や会食の立食パテイーのお金も協賛しているのは当然のことながら抗がん剤のメーカーであったことは言うまでもないだろう。

医師が治療の手段を薬剤に求める限り製薬メーカーとの共同作業は必要である。しかし、われわれは製薬メーカーの利益のために医師をしているのではない。

製薬メーカーと一緒になって患者のために医療技術を研究し発展させて、最終的には患者のメリットをもたらすために存在するのだ。

そういう意味では、このクリニカルパスの中にもまだ埋もれている統合医療に関しての理解が欲しかったと感じている。

しかし、時代は確実に統合医療に向かっていると私は感じている。
なぜならば患者さんがそれを求めているからである。
そして我々医師は患者さんのために存在しているのである。

副作用の無い治療、栄養療法による治療、免疫療法による治療、こういった統合医療のアプローチが必要な時代になってきていると毎日痛感している。