とてもいい記事が載っていた。
抗がん剤は過剰投与されている。その理由は主に製薬メーカーの利益のためである。それを科学的に証明することも可能となってきた。
患者さんもこの事実を知って賢く治療をしてほしい。
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シリーズ「がん新時代」⑤ 抗がん剤の用量は、果たして適切なのか(サンデー毎日×週刊エコノミストOnline) - Yahoo!ニュース
過剰投与されていると考えられる抗がん剤はこれだ !
薬剤一般名 現在の投与量 推奨用量
イブルチニブ 420mg(※~560mg) … 140mg
エルロチニブ 150mg ………………… 25-100mg
ダサチニブ 100mg…………………… 50mg
ペムブロリズマブ 200mg…………………… 2 mg/kg
アビラテロン 1000 mg 空腹時…………250mg
食事と一緒に ラパチニブ 1250mg 空腹時…………500mg 食事と一緒に
昔からある抗がん剤は、体が毒性に耐え得る最大量をもとに投与量が決められてきた。しかし、精緻な分子標的薬などの新たな薬は、それとは異なる治療概念が必要との考えがアメリカなどでは広まっている。適切な投与量は、患者にとっても副作用が少なくすみ、医療費も抑えられるメリットがある。がん臨床現場の最先端のあるべき姿を追う。 ◇投与量は従来のままでいいのか 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤は、抗がん剤のなかでも新薬が次々と誕生している開発華やかな分野だ。現代においては研究者や医師、患者にとっても、もっとも関心の高い薬の領域といえるだろう。だが、果たしてそれらの抗がん剤の投与量は、適量といえるのか。「がん新時代」シリーズの前回は、その点に疑問を投げかけた。『誰も考えようとしなかった癌の医療経済』(中外医学社)の著者であり、日本赤十字社医療センターの化学療法科部長・國頭(くにとう)英夫氏は言う。 「現在の薬剤用量の決め方は科学的にも臨床的にも、不適切な場合があります。その理由として挙げられるのは、1950年代から使われてきた殺細胞性抗がん剤という従来型のがん治療薬は、どこまで毒性に耐えられるかという〝最大耐用量〟をもとに投与量が決められてきた経緯があるからです。しかし近年、主流となっている抗腫瘍分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤では、その最大耐用量が必ずしも最も効果的な量、つまり〝最大有効量〟とは限らないと考えられています。多くの薬剤で、じつは通常量そのものが、過量だとも指摘されている。実際に、規定の量より減量して治療をしても、効果は変わらないという研究報告がいくつもあります」 17年にアメリカで設立された「Optimal Cancer Care Alliance(OCCA)」は「最適ながん治療とは何かを追求する」のを使命としている。そのホームページにはこう記されている。 「現在のがん治療で、なぜ過剰投与が行われるのか。それは歴史的に、がんに対して有毒な化学療法を用いる際にどれだけの量を投与できるか、つまり量が多いほどいいと考えられてきたからです」。そして続ける。「私たちはいまではよりよく理解しています。新たに開発された精密な医療薬は、患者に過剰投与しなくても十分に効果を発揮します。低用量により副作用が少ない、または副作用がまったくない状態で、同様の効果を得られるのです。こういった科学や医薬品開発の劇的な変化を踏まえて、臨床医や規制当局は次のことを問うべきです。〝がんを効果的に治療するために、どれくらいの量を与えれば十分なのか?〟(傍点は筆者)」
◇食事と一緒に摂れば量を減らせる アメリカの臨床薬理学分野の権威ある学術誌『Clinical Pharmacology & Therapeutics』は「薬がヒトにどのように効き、どう使うべきか」をたびたび記事にしている。その学術誌とOCCAにより、投与量を減らせる代表的な薬として挙げられているものを下に表にした。 薬の服用量を少なくしても同程度の治療効果があるという報告は、これに限らない。前立腺がんに標準治療として使われるホルモン療法薬アビラテロン(ザイティガ)について見てみよう。米国臨床腫瘍学会(ASCO)の機関誌であり、最新のがん治療に焦点をあてた腫瘍学領域のトップジャーナル『Journal of Clinical Oncology』には、シカゴ大学のマーク・ラテイン医師らの臨床試験結果が掲載されている。 転移性前立腺がんで他の標準療法をしたあとにがんが進行した男性72人をランダムに振りわけ、アビラテロンを空腹時に定量の4錠服用するグループと、低脂肪の朝食とともに1錠服用するグループとにわけた。 12週間の治療後、前立腺がんリスクや進行度を測る血液検査の前立腺特異抗原(PSA)の濃度は、両グループともに低下した。またその後の病態悪化(もしくは死亡)までの期間は、どちらも約9カ月間で統計学的な差はなかった。 アビラテロンが空腹時に飲むよう推奨されているのは、承認を得るための大規模臨床試験で、患者が空腹時に服用していたためである。しかし、ラテイン博士はその論文に「食事と一緒に摂(と)ると、体がより多くの量を吸収できます。これは、食品に含まれる脂肪分子が薬を効率的に胃や腸へと運ぶためです」と書く。 この結果は、世界最大級のがん専門機関「National Cancer Institute(NCI=米国国立がん研究所)」も「ひとつの可能なアプローチ」として認めている。またケンタッキー大学のジル・コレサー薬学博士とウィスコンシン大学のグレン・リウ医学博士も賛同を見せている。
さらに前出の國頭氏は、「血管新生阻害剤のベバシズマブ(アバスチン)は結腸・直腸がんや非小細胞肺がん、乳がんや卵巣がんなど多くのがん患者に使われていますが、半量にしても効果は大きく変わらないというデータが多々あります」とも語る。 こういった臨床試験の新たな試みはいずれも小規模であり、今後はより大規模、かつ長期的に効果があるかどうかの研究が待たれるが、いまのところ製薬会社に積極的な姿勢は見られない。 「製薬会社はより多くの治療薬を売ったほうが利益も上がるので、そういう研究には興味がないのです。トラスツズマブ(ハーセプチン)という乳がんでよく使用される薬の術後投与は1年とされていますが、短縮できるとの見方もあります。知り合いの乳がんの専門医が、1年とその半分の期間の6カ月で投与比較する臨床試験を日本でもしてはどうかと中外製薬にもちかけたところ、一蹴されたと言っていました」(國頭氏) ◇患者のために「過剰」な医療を「適正」に 抗がん剤の副作用は、実際に治療を受けた人にしかその身体的、精神的苦痛はわからないとよく言われる。腫瘍が小さくなる、あるいは再発しないことを願い、患者はときに重篤な副作用にも耐え忍ぶ。もしがん治療薬の投与量が少なくても同様の効果が得られるとすれば、副作用もまた減り、患者のQOL(生活の質)が上がるのは明らかだ。 特に、数カ月など一定期間の短い投与にとどまる昔から使われてきた細胞障害性抗がん剤と比べて分子標的薬などは毎日、しかも何年にもわたって服用する必要があり、それによるQOLの低下と、長期間の服用による蓄積毒性などが問題視されている。 なにより求められるのは、これまで抱いてきたがん治療への固定観念から、医師も患者もいかに脱却できるか、だ。なるべく少量の薬を、短期間の使用にとどめて、同等の治療効果を得る。それは「過剰」な医療を「適正」にすることにほかならない。がん臨床現場の真価と進化が、今後は問われていく時代になるだろう。
2013年以降、アメリカ食品医薬品局(FDA)、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、米国がん学会(AACR)などは多くのワークショップを開催、論文を発表するなどして、がん治療薬の用量の最適化を議論してきた。そして近年、FDAは薬を開発する製薬会社に対して臨床試験の際に最大耐用量ではなく、低用量を使用するようにとも促している。 そういった背景には、アメリカならではの医療の現実が潜む。「アメリカでがんに罹(かか)ったら破産する」とは決して大袈裟(げさ)な比喩ではなく、毎年53万世帯が破産するうち、約6割が医療費関連によるとされている。またがん患者の約半数にも上る人が、医療費関連の借金を抱えているのだ。表にもある免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブ(オプジーボ)、ぺムブロリズマブ(キイトルーダ)、アテゾリズマブ(テセントリク)などの薬価は大変に高額であり、がんに罹ると年間医療費が1000万円を超える人も少なくない。その意味でも、減薬により医療費が下がることには意義がある。 翻って、日本はどうか。国民皆保険制度と高額療養費制度に支えられている日本では医師も患者も、高額な薬を使用し続けることで、治療にいくらかかるかとの意識が欠如しているのが現状だ。しかし近年、盛んにニュースで報じられるとおり、その日本の医療制度自体が限界にあり遅かれ早かれ、破綻する危機にあるのは疑いようもない事実だ。 がん医療とコスト。その今後、欠かせないであろう課題に取り組んでいる数少ない医療機関が岐阜県にある。大垣市民病院・薬剤部長の宇佐美英績氏は話す。 「昔は、抗がん剤が1バイアル1万円でも高いと思っていました。でも2001年から分子標的薬が登場すると、1バイアル30万円や50万円と高額な薬剤も出てきた。注射や点滴で投与する抗がん剤をミキシングすると、そんな薬剤でも調製残薬として半分近くを廃棄することがよくあります。もったいないなと日々感じていました」
◇1バイアルの量を減らすことに成功 抗がん剤は、体重などに基づき体表面積を計算し、患者ごとに投与量を決める。欧米人より体の小さい日本人は1バイアルの用量が少なく設定されているものもあるが、それでも使いきれず廃棄しているのが現状だ。 「2014年に、当院採用の高額な抗がん剤12品目について、どのくらい廃棄しているか?という単純な疑問を論文に書きました。調査の結果、我々の病院だけで1年間に約5000万円分の調製残薬を廃棄しているとわかったのです」(宇佐美氏) その薬剤のひとつにがんの増殖を抑える分子標的薬ボルテゾミブ(ベルケイド)があった。その当時、1バイアル3㍉㌘で薬価は16万円。それを調製するたびやはり30~40%ほどを廃棄していた。 「現在の医療制度では、たとえ40%の調製残薬を廃棄しても病院側は全量分を診療報酬として請求できます。病院は残薬を廃棄しても損はしないので、どうしても薬剤費に対する意識が働きません。一方で製薬会社も3㍉㌘という無駄に多い量だとしても、改善しようとしない。そのベルケイドに関して大垣市民病院の3年分の残薬廃棄量を計算したところ、金額は1億円を超えていました。それでふと3㍉㌘ではなく、無駄を減らすため2㍉㌘のバイアルを作ってもいいのではないかと考えて、論文を書いたのです」(宇佐美氏) いまの医療の現状では見向きもされないだろう。そう考えていたが、東和薬品の開発責任者とMR(医薬情報担当者)がある日、宇佐美氏のもとを訪ねてきた。 「〝ベルケイドのジェネリックは当社も含めて6社から発売されています。先発品のベルケイドは3㍉㌘ですが、当社は初めてジェネリックで2㍉㌘バイアルを発売しました。論文を読んで、私も宇佐美先生の意見に賛同し、2㍉㌘バイアルを開発しました〟と。2㍉㌘にすると製薬企業の営業利益は減るはずですが、6社が競合するなかで、無駄な廃棄の軽減ができて、他社との差別化もできると考えたのでしょう」(同)
薬剤師の提案により、製薬会社が動くという成果を得たことになる。そんな薬剤師の存在は、がんの基幹病院では近年、高まりつつある。大垣市民病院では、経口薬の抗がん剤を処方している患者に対して、医師との診察に入る前に、薬剤師とまず面談する時間を設けている。 「そういった薬剤師外来がはじまる契機となったのは、2013年に大腸がんに使うスチバーガ(レゴラフェニブ)の副作用コントロールが非常に難しかったことによります。患者に処方するのに医師だけでは対応できない、薬剤師も治療に参画してくれないか、との要望が医師側からありました」(同) 同病院の薬剤外来の主担当・郷真貴子氏は、その仕事内容についてこう話す。 「診察前に、患者さんが薬をきちんと飲めているか、体調の変化や困っている症状がないかを確認し、医師に伝えています。そうした症状が薬の影響、いわゆる副作用と考えられる場合には、吐き気止めや下痢止め、皮膚の炎症をやわらげる塗り薬などを、症状に合わせて医師に提案します。症状が強い場合には、一般的な量で薬を使っていても、いったん休んだり量を減らしたりする選択肢について医師と相談し、患者さんが無理なく治療を続けられるようにしています」 大病院では3時間待ちの3分診療とも揶揄(やゆ)される、医師の診察時間。しかし医師が50~60人もの患者を診る多忙な外来診療のなかでは、患者一人に多くの説明時間を割けない現実が、そこにはある。医師の重労働にともなう働き方改革が求められるいま、薬剤師外来は業務の一部を薬剤師に分担するタスク・シフト/シェアという意味でも価値がある。その仕組みは、また患者側にとってもメリットが大きい。自分の体の状態を薬剤師に訴えれば、医師にわかりやすい形で伝えてもらえるからだ。そうした取り組みのなかで見えてきたのが、経口抗がん剤の残薬の存在だった。 「医師から〝薬はきちんと飲めていますか?〟と尋ねられると、本当の状況をそのまま伝えにくいと感じる患者さんもいます。医師を前にすると、つい遠慮してしまうこともある。薬剤師が間に入ることでワンクッションが生まれ、患者さんも実際の状況を話しやすくなります」(同)
◇患者の飲めなかった残薬を把握 残薬の実態を把握しようと、郷氏は薬剤師外来を受診した患者270人を調査した。その結果、指示どおりに服用できずに自宅に残っていた薬の数を確認し、新たに処方する際にその分を差し引く「残薬調整」を行うことができた患者は、21・5%にのぼった(2018年)。 その残薬理由として約53%を占めたのが抗がん剤による副作用で、下痢や口腔粘膜炎、食欲不振や皮疹、倦怠(けんたい)感などだった。それにより郷氏の患者だけで、月平均約56・1万円が削減できたという。海外では経口抗がん剤が瓶にまとめて入っていることも少なくないが、日本では1錠ずつ包装されたシート剤が主流である。そのため自宅に残っている薬でも適切に保管されていれば、衛生面で大きな問題が生じることはほとんどない。 「残薬が生じた理由をひとつずつ聞き取り、解消していくことは、医療費の無駄を減らすだけでなく、最終的には治療効果に関わるアドヒアランスの向上にもつながっていきます」(同) アドヒアランスとは、患者が治療方法を自らきちんと理解し、医療関係者の指示にしたがって、自主的に服薬や生活習慣の改善に取り組む姿勢を意味する。がんの臨床現場は多くの面でまだ、変革の余地が残されている。

