マスクの誤った着用法は感染リスク 米国の専門家が警告

3/5(木) 8:00配信

 

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新型コロナウイルスの市中感染が米国でも始まった。見知らぬウイルスや病気に対する人間の自然な反応は、不安を感じることだ。そして、それに対して「何かしなければ」と思うことだ。それが今、多くの人をマスクの買占めと買いだめに走らせている。

だが、世界中で供給が不足するなかでも、マスクは誰もが必ず買っておくべきものだろうか? また、もし手元にあるなら、外出時には必ず着用すべきものだろうか?どちらも答えはノーだ。

近隣の地区で感染者が発生した場合でも、たとえ隣人が感染した場合でも、答えは同じだ。コロナウイルスから身を守るために、必ずしもサージカルマスク(医療・処置用)やさらに高性能のレスピレーターマスク(N95マスクなど)を着用する必要はない。

感染予防の専門家であるアイオワ大学医学部のイーライ・ペレンセビッチ教授(内科・疫学)は、必要がないどころか着用すべきでない場合もあると指摘する。

「健康な人の感染予防にマスクが効果的だということを示すエビデンスはない。大抵の人はマスクの使用方法を間違っているほか、着用によって顔に触る回数が増えることで、感染のリスクを高めている場合がある」

現在までの研究によれば、新型コロナウイルスは空気ではなく飛沫(ならびに接触)によって感染する。つまり、呼吸をしているだけで感染するというものではない。また、一般的なサージカルマスクは着用している人から飛沫が飛び散るのを防ぐためのもので、感染を防ぐものではない。

「マスクをする必要があるのは、インフルエンザにかかっている、またはCOVID-19新型コロナウイルス感染症)にかかった可能性があると思われる場合だ。周囲に感染を広げないために、着用が必要になる…家の中でも、家族を感染から守るために、マスクをしていなければならない」

「N95」マスクは買ってはいけない──なぜか?

N95などのレスピレーターマスクを使用する医療従事者は、着用方法に関するトレーニングを受けている。それでも、感染の可能性はゼロにはならない。ペレンセビッチ教授によれば、「レスピレーターをしていることが、誤った安心感を与える可能性があるためだ」。外す前、そして外した後に手を洗わなければ、感染するリスクを自ら高めることになる。

医療従事者に十分行き渡らなければ惨事に

ペレンセビッチ教授はさらに、「N95レスピレーターマスクが不足することの潜在的なリスク」として、ツイッターに次のようにコメントしている。

「最も懸念されるのは、医療従事者が感染して自宅待機となることだ。そうなれば、感染が拡大する現在の状況を乗り切るために必要な医師や看護師が不足する」

米国のジェローム・アダムス医務総監もツイッターで「深刻な話」として、マスク(レスピレーター)を買うのをやめるよう訴えている。医務総監は、マスクには一般の人たちを感染から守る効果がないと指摘。さらに、こうコメントしている。

「感染した患者の治療にあたる医療従事者が必要とするマスクがなければ、その人たち、そして私たちのコミュニティーを危険にさらすことになります!」

どう備えるべきか?

もう何度も聞いた人も多いだろう。コロナウイルスから身を守る最善の方法は、せっけんと水で手をこまめに洗うことだ。ペレンセビッチ教授もジョンズ・ホプキンス大学のカレン・フレミング教授(生物物理学)も、同様にそう説明する。

何か食べる前と食べた後には手を洗い、そして自分の顔、“特に口と鼻”に触らないように自分を訓練することが重要だという。また、ウイルスや細菌が付着している物の表面(ドアノブなど)に触ってもすぐに手を洗えない場合に備えて、手指消毒剤を持ち歩くことだ。

また、社会的距離を取ることも効果的だろう。咳やくしゃみをしている人、具合が悪そうな人を見かけたら、その人との間には数メートルの距離を取ること。

一方、免疫不全の人や合併症のリスクが高い人は、マスクの使用が適切な場合もある。懸念がある人は、医師に相談すべきだという。

マスクを買いだめする必要はない。だが、居住する地域でのアウトブレイク(大流行)に備えておく必要はある。

服用している薬があれば、少なくとも3~4週間分を手元に置いておくべきだ。大量の食料品を備蓄する必要もないが、緊急事態(気象災害など)には常に備えておくべきだろう。3日分の食料と水(1人1日当たり4.5リットル:日本では3リットルとされる)、停電した場合に必要なものは、準備しておくことだ。