― 当院のウゴービ治療は、美容目的の安易な投与とは一線を画します ―

近年、SNS上で糖尿病治療薬「マンジャロ」を“やせ薬”として扱う投稿が急増し、無許可販売や不正転売が社会問題となっています。2026年6月には、実際に医薬品医療機器法違反での書類送検事例も報じられました。さらに、マンジャロを美容目的で使用したことによる嘔吐、脱水、膵炎などの健康被害が800件以上報告されており、厚生労働省も「糖尿病治療以外での安全性は確認されていない」と注意喚起を行っています。

こうした状況の中で、SNSや一部メディアでは「GLP-1受容体作動薬=安易なダイエット薬」という誤ったイメージが広がり、適正な医学的肥満治療を行う医療機関まで同列に扱われる風潮が見られます。当院としては、この風潮に強い懸念を抱いています。

■ 当院の立場 ― 美容目的の安易な投与とは根本的に異なります

当院では、肥満症治療薬ウゴービ(セマグルチド)を「肥満症と診断される患者さん」に対してのみ使用しています。 ウゴービは、厚生労働省が「肥満症治療薬」として正式に承認した薬剤であり、マンジャロとは異なり、ダイエット目的での使用が法的に認められている唯一のGLP-1系薬剤です。

しかし、薬剤の適応があるからといって、誰にでも投与してよいわけではありません。 当院では以下の基準を厳格に守っています。

  • 肥満症と診断される患者さんのみを対象とする
  • 初診時に詳細な問診・既往歴・内服薬の確認を行う
  • 体重・体脂肪率・腹囲などを定期的に測定し、治療効果と安全性を評価する
  • 食事指導・運動指導を必ず併用し、薬剤単独の“楽して痩せる治療”は行わない
  • 副作用リスクを十分に説明し、患者さんの理解と同意を得た上で治療を開始する

つまり、当院のウゴービ治療は、SNSで拡散されている「手軽に痩せる魔法の注射」とは全く異なる、医学的根拠に基づいた肥満症治療です。

■ 患者さんの努力こそが治療の中心です

SNSでは「GLP-1は打てば痩せる」といった誤解が広がっていますが、これは明確に誤りです。 ウゴービはあくまで「食欲調整を助ける薬」であり、生活習慣の改善が伴わなければ十分な効果は得られません

当院の患者さんは、

  • 食事内容の見直し
  • 適度な運動習慣の確立
  • 睡眠・ストレス管理 などに真剣に取り組んでおられます。

私たちは、薬剤を「努力を後押しするための補助」として位置づけており、患者さん自身の主体的な取り組みこそが治療の中心です。 そのため、SNSで見られるような「薬だけで簡単に痩せる」「美容目的で気軽に使う」といった風潮は、医学的にも倫理的にも容認できません。

■ 不適切な使用が医療全体の信頼を損なう

マンジャロの不正転売や安易な処方が横行すると、

  • 本来必要な糖尿病患者さんへの供給不足
  • 副作用による健康被害の増加
  • 医療機関への不信感の拡大 といった深刻な問題が生じます。

さらに、適正に治療を行っている医療機関まで「儲け目的」「美容クリニックと同じ」と誤解されることは、医療者として看過できません。

当院は、医療倫理に基づき、患者さんの健康を最優先にした肥満症治療を行っています。 不正転売や安易な処方とは一切関係がなく、むしろそのような行為は医療の信頼を損なう重大な問題であると考えています。

■ 最後に ― 正しい肥満症治療を守るために

肥満症は生活習慣の問題だけでなく、遺伝的要因やホルモンバランス、代謝異常などが複雑に絡む「疾患」です。 適切な治療を受けることで、糖尿病・高血圧・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群などのリスクを大きく減らすことができます。

当院は、

  • 科学的根拠
  • 医療倫理
  • 患者さんの努力 を大切にしながら、今後も適正な肥満症治療を提供していきます。

SNSでの誤った情報や不正な薬剤流通に惑わされず、正しい医療を選択していただけるよう、引き続き情報発信を続けてまいります。