コエンザイムQ10の働きは抗酸化作用、ミトコンドリア機能の向上である。癌細胞ではミトコンドリア機能の低下とともにがん細胞のアポトーシス機能が低下する。そのためにコエンザイムやαリポ酸が使われる。また、ATP産生作用が低下するために細胞のエネルギー不足が生じ、酸化や炎症からの回復が遅れてしまう。線維筋痛症の患者さんにも有効なのはそのためである。

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今月の科学誌プロスワンに、コエンザイムQ10+セレンサプリメントによる高齢者の死亡率への影響を検証した臨床研究が、北欧のグループから報告されていました。 (PLoS One. 2015 Dec 1;10(12):e0141641.) コエンザイムQ10は、抗酸化作用やATP産生作用を有する機能性成分で、体内でも産生されます。 しかし、加齢とともに内在性コエンザイムQ10は減少し、生活習慣病や慢性疾患でも低下がみられることから、アンチエイジング分野で広く摂取が推奨されているベーシックサプリメントです。 セレンは、抗酸化作用を有する必須ミネラルの1種です。 今回の研究は、コエンザイムQ10とセレンのサプリメントを4年間投与した臨床研究の追跡調査です。 先行研究では、高齢者443名を対象に、 コエンザイムQ10+セレン投与により、心血管疾患による死亡率の低下が認められました。 投与されたサプリメントは、1日あたり200mgのコエンザイムQ10、200マイクログラムのセレン です。 今回は、スウェーデンに在住の健康な高齢者443名を対象に、サプリメント投与後の10年間にわたる追跡調査が行われ、心血管疾患の死亡率が調べられています。 心血管疾患に関する追跡期間の中央値は、3668日 (range 348–4488日)、つまり約10年間でした。 生存者のグループでは、3836 日(range 689–4488), 非生存者グループでは、2505 日(range 348–4347) でした。 解析の結果、コエンザイムQ10+セレン投与により、心血管疾患による死亡率の有意な減少が認められたということです。(49%の低下:HR: 0.51; 95%CI 0.36-0.74; P = 0.0003) 4年間の介入後の10年間のフォローアップ期間において、コエンザイムQ10+セレンによる心血管リスク低下効果は継続して認められたということです。 また、この効果は、男女共に示されています。 虚血性心疾患に対するリスク低減効果も同様に認められました。 (49%のリスク低下:HR: 0.51; 95%CI 0.27-0.97; P = 0.04) 以上のデータから、地域居住の健康な高齢者において、コエンザイムQ10+セレンのサプリメントを4年間投与することで、その後も継続して、心血管疾患リスクの有意な低下効果が示唆されます。 コエンザイムQ10は、抗酸化作用やATP産生作用を有する機能性成分で、体内でも産生されます。 しかし、加齢とともに内在性コエンザイムQ10は減少し、生活習慣病や慢性疾患でも低下がみられることから、アンチエイジング分野で広く摂取が推奨されているベーシックサプリメントです。 日本では、数十年前に、厚生省(当時)により、心不全の治療薬として認可されていますが、1日用量が30mgと少なく、日本の臨床現場では、コエンザイムQ10は効果を実感しない、といった’風評被害’になっています。一般に、アンチエイジング・健康増進・疾病予防の目的では、1日あたり90mgから100mg前後、 また、心血管疾患や生活習慣病の治療(補完療法)目的では、 1日あたり200mg~300mgといった用量となります。 コエンザイムQ10には、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。 還元型CoQ10のほうが、酸化型CoQ10よりも体内で利用されやすいと考えられます。 (酸化型CoQ10は、体内に吸収された後、いったん還元されてから、利用されます。) コエンザイムQ10に関するこれまでの研究の多くは、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)を用いています。したがって、一般的には、生活習慣病の予防やアンチエイジング目的に関して、酸化型CoQ10のユビキノンの摂取で十分な効果が期待できます。 一方、特定の疾患に対して用いる場合、あるいは、体内の生理機能が低下している高齢者の場合には、還元型CoQ10の利用が推奨されます。