ベジタリアン食による大腸腺腫リスク低下効果@アジア人

ベジタリアン食といってもいろんなベジタリアンがあるが、適切にコントロールされたベジタリアン食は大腸がんの発生が低く、大腸良性腫瘍の発生も低いことが示された。

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今月の消化器病学の専門ジャーナル(電子版)に、ベジタリアン食と大腸腺腫リスクとの関連を調べた疫学研究が報告されていました。(Dig Dis Sci. 2013 Dec 10)

これまでの多くの研究によって、ベジタリアン食摂取群では、非ベジタリアン食摂取群よりも、生活習慣病リスクが低いことが知られています。また、AICRなどがん予防指針では、赤肉や加工肉の摂取によるがんリスク増大が示されています。

さて、今回の研究では、アジア人において、大腸がんの前段階である大腸腺腫と、ベジタリアン食との関連が検証されました。
(大腸がんは、近年、増加しており、超高齢社会や食生活の変化などの影響が考えられています。)

具体的には、横断研究として、ベジタリアン食を実践している仏教の僧侶:ベジタリアン食摂取群、
対照群:年齢や性別を一致した被験者の2群について比較が行われました。

解析の結果、大腸腺腫の罹患率は、非ベジタリアン食摂取群のほうが、ベジタリアン食よりも高率でした。
(Colorectal adenoma;25.2 vs. 17.9 %, advanced adenoma;6.7 vs. 2.0 %)

一方、ベジタリアン食摂取群のほうが、BMIやウエスト周囲径が大きい値でした。
(つまり、ベジタリアン食摂取群のほうが肥満ということになりますが、この要因として、単純炭水化物の過剰摂取が推定されます。

また、肥満であることは大腸がんのリスクになりますが、ベジタリアン食摂取群であれば、そのリスクを上回るがん抑制効果が見出されています。)単変量解析の結果、
ベジタリアン食摂取群に比べて、非ベジタリアン食摂取群では、大腸腺腫リスクが有意に上昇していたということです。(Colorectal adenoma;54%上昇, advanced adenoma;3.6倍に上昇)

回帰分析でも同様に、ベジタリアン食摂取群に比べて、非ベジタリアン食摂取群では、大腸腺腫リスクが有意に上昇していました。(Colorectal adenoma;52%上昇, advanced adenoma;2.94倍に上昇)

以上のデータから、ベジタリアン食摂取による大腸腺腫リスク低下効果が示唆されます。
なお、ベジタリアン食であれば何でも健康的になる、というわけではありません。
(例えば、野菜はナシで、パスタにチーズ、パンの組み合わせでも、ラクトオボにはなりますが。)

もちろん、栄養学的にバランスの取れた、適切なベジタリアン食を摂取することが重要です。
一般に、植物性食品の摂取が多いベジタリアン食では、ファイトケミカル・ポリフェノールの摂取が多く、抗酸化作用を介した生活習慣病の予防効果が想定されます。

北米の栄養士会が共同で発表した見解によると、「適切に準備されたベジタリアン食は、健康に有益であり、必要な栄養素を満たしており、いくつかの疾患の予防や治療にも利点がある」とされています。

実際、これまでの疫学研究によって、肉食をする人々に比べて、ベジタリアンでは生活習慣病が少ないことが示されています。
ベジタリアン食による具体的な効果として、肥満、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、高血圧、脂質異常症、糖尿病、前立腺がん、大腸がんの発症リスクが低下します。

また、日本人ベジタリアンを対象にした調査でも、ベジタリアンは、非ベジタリアンと比べて、体格指数(BMI)、血圧、血中総コレステロール値、中性脂肪値が有意に低いことが見出されています。