オメガ3系脂肪酸の効用は血管や脳細胞を老化や酸化から守ることであるが、長寿遺伝子のテロメアの短縮を防ぐ作用もあることがわかった。

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栄養学の専門ジャーナル(電子版)に、EPA・DHAのオメガ3系脂肪酸投与によるテロメア短縮抑制効果を示した臨床研究が、オーストラリアのグループ(CSIRO)から報告されていました。
Nutrition. 2013 Oct 3.)

テロメア (Telomere) は、細胞の染色体の末端部にある構造で、ゲノムDNAの末端に相当します。
テロメアは、細胞分裂とともに短くなり、寿命を決めるといわれています。
(テロメア長は、加齢とともに短くなります。)
テロメア長に影響を及ぼす要因として、酸化障害や炎症に関係する環境やライフスタイルが注目されています。

ただし、食習慣とテロメア長との関係は、まだ限られたデータしか知られていません。
そこで、今回の研究では、高齢者において、オメガ3系必須脂肪酸サプリメントの投与によるテロメア長への影響が検証されました。

具体的には、軽度認知機能障害(MCI)を示す65歳以上の33名を対象に、
・EPA+DHA投与群(高EPA群);(EPA; 1.67 g EPA + 0.16 g docosahexaenoic acid DHA/d; n = 12)、
・EPA+DHA投与群(高DHA群); (1.55 g DHA + 0.40 g EPA/d; n = 12)、
・オメガ6系脂肪酸投与群(リノレン酸); (LA; 2.2 g/d; n = 9)
の3群について6ヶ月間の介入試験が行われました。

解析の結果、オメガ6系脂肪酸投与群(リノレン酸)投与群に比べて、オメガ3系必須脂肪酸投与の2群では、テロメア短縮の抑制効果が認められたということです。

高DHA投与群では、赤血球中のDHA値の上昇と、テロメア短縮抑制との間に有意な相関が見出されています。以上のデータから、高齢者におけるテロメア短縮に対して、オメガ3系必須脂肪酸サプリメントの投与による抑制効果が示唆されます。

今後、臨床的意義の検証が期待される分野です。
EPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸には、抗炎症作用が知られています。
オメガ3系脂肪酸の抗炎症作用のメカニズムとして、以前は、オメガ6系との比率からアラキドン酸カスケードへの機序が考えられていました。
現在では、これに加えて、EPAとDHAの代謝物自体に抗炎症作用があることがわかっています。

EPADHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。
一般に、臨床研究におけるオメガ3系脂肪酸の投与量は、1日あたり数百ミリグラムから4グラム程度です。

また、EPA:DHA=2~3:1の割合です。日本人の食事摂取基準では、EPAおよびDHAの摂取量を一グラム/日としています。EPAもDHAも、どちらも健康維持や疾病予防に重要です。
一般に、DHAは脳の栄養素、EPAは血管の栄養素といえるでしょう。