葉酸サプリメントによる大腸がん一次予防効果

葉酸は動脈硬化のリスクとともに大腸がんリスクを下げる働きを持っている事が明らかになっている。

 

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今月のがん予防の研究ジャーナル(電子版)に、葉酸サプリメントによる大腸がんの一次予防効果を示した臨床研究が、中国のグループから報告されていました。(Cancer Prev Res (Phila). 2013 May 16.)

大腸腺腫は、大腸がん(結腸・直腸)の前駆段階であり、いくつかの因子が、大腸腺腫リスク低下作用が示唆されています。
今回の研究では、葉酸サプリメントによる大腸腺腫リスクへの影響が調べられました。

具体的には大腸腺腫を有していない50歳以上の被験者を対象に、・1日あたり1,000μg(1mg)の葉酸サプリメント投与群、・非投与群
の2群について、3年間の介入が行われ、血中葉酸値および大腸内視鏡による評価が行われました。

791名(91.98%)が試験を完了しました。
大腸腺腫は葉酸サプリメント投与群では64名(14.88%)、
非投与群では132名(30.70%)に認められました。

まず、葉酸サプリメントによって大腸腺腫リスクが51%低下、という相関が見出されています。
また、左側の腺腫については、葉酸サプリメント投与によって46%リスク低下となっています。

さらに、進行型では葉酸サプリメント投与群において、64%リスク低下が認められました。
なお、3個以上の複数個の腺腫では、リスク低下傾向のみで有意差は認められていません。
(unadjusted RR, 0.70; 95%CI: 0.36-1.77; P=0.38)

右側の腺腫でも有意差は認められていません。(unadjusted RR,0.55; 95%CI: 0.30-1.00; P=0.07)
その他、葉酸の血中濃度が低いほど、大腸腺腫リスクが高いという相関が見出されています。

以上のデータから、1日あたり1,000μg(1mg)の葉酸サプリメント投与による大腸腺腫リスク低下作用(一次予防効果)が示唆されます。

葉酸はビタミンB群の一つです。
妊娠初期に不足すると、小児の発達障害を生じ神経管欠損症のリスクを高めることから、日本でも、妊娠中の葉酸サプリメントの利用が推奨されています。

(葉酸は、妊娠初期において重要ですので、妊娠がわかってから摂取するのではなく、妊娠を計画している時点で摂り始めるのがポイントです。)

成人の場合、生活習慣病、特に動脈硬化性疾患に対する葉酸サプリメントの効果が知られています。
また、大腸がん抑制など抗がん作用も知られています