キノコ類によるIL-23を介した免疫調節作用

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今月の栄養学の専門ジャーナルに、シイタケなどのキノコ類による免疫調節作用のメカニズムを調べた基礎研究が、米国のグループ(Oklahoma State University)から報告されていました。
(Nutr Res. 2013 May;33(5):388-396.)

キノコ類には、ベータグルカンなどの多糖類が含まれており、免疫調節作用を介した抗がん作用や生活習慣病予防作用などが示唆されています。
そこで、食用キノコや薬用キノコは、健康食品・サプリメントの成分としても用いられています。

例えば、アガリクス霊芝メシマコブ、マイタケなどです。
これらのキノコ類に関する研究として、まず、多くの基礎研究で抗がん作用や免疫調節作用が知られています。臨床研究では、QOL改善作用を示した報告などがあります。(がんの補完療法としてのRCTを組むのは容易ではありません。)

また、食用キノコとしてシイタケ(Lentinus edodes)には、有効成分としてレンチナン((1-6,1-3)-β-グルカン)が含まれています。
インターロイキン-23(IL-23)は、炎症性サイトカインの1つで、病原体の感染が生じたときに、樹状細胞やマクロファージで産生されます。(樹状細胞は、抗原提示細胞として働く免疫細胞の1種です。)

IL-23の受容体は、Th17細胞に発現しており、Th17の増殖や安定化に関与しています。
先行研究では、HL60細胞において、食用キノコ類由来抽出物投与による抗菌物質α-ディフェンシンの増加が示されています。
今回の研究では、各種の食用キノコ類摂取によるIL-23産生と腸管炎症への影響が調べられました。
具体的には、8週齢のC57BL/6マウスを用いて、対照群
あるいは、
5%シャンピニオン(White button mushroom、学名Agaricus bisporus)投与群、
5%ポルタベッラ(portabella)投与群、
5%シイタケ投与群
の各群(n=7~8)について6週間の介入が行われました。

6週間の最後の5日間に、in vivoおよびin vitroにて3%DDS誘導性サイトカイン分泌の測定が行われ、
各キノコ類投与によるIL-23分泌が測定されています。

まず、DSS非投与群では、キノコ類投与によって、血中IL-23値の有意な増加とIL-6の有意な低下が認められました。(P < .05)
次に、DDS投与群では、キノコ類投与によって、IL-6とIL-23の有意な増加が見出されています。
(P < .05)

さらに、キノコ類は、カードラン(curdlan)誘導性IL-23分泌を亢進し、キノコ類のIL-23分泌促進は、
ラミナリン (laminarin)投与による阻害が認められなかったことから、
デクチン-1(dectin-1)依存性および非依存性の2つの経路を介して作用すると考えられます。
いずれのキノコ類投与でも大腸でのIL-6上昇は認められましたが、
WBMとシイタケの2群において、IL-23値の上昇が見出されました。

以上のデータから、
これらの食用キノコ類は、IL-23を介した腸管免疫調節作用を有すると考えられます。