ノコギリヤシの抗炎症作用@前立腺がん細胞

がん細胞において炎症反応が低減することは大きな意味を持つ。炎症はガンを促進するからである。ノコギリヤシは前立腺がんの進行を抑制することが期待できる。

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今月の炎症研究の専門ジャーナルに、前立腺がん細胞におけるノコギリヤシエキスの抗炎症作用を示した基礎研究が報告されていました。(J Inflamm (Lond). 2013 Mar 14;10(1):11)

慢性炎症は、がんや動脈硬化性疾患、肥満・メタボリック症候群など生活習慣病全般に共通する病態です。
かつて、一般誌のTimeも、‘Inflammation: The Secret Killer’としてカバー特集を組んだことがあり、広く認知されています。
そこで、サプリメント研究では、抗炎症作用を有する機能性食品成分の働きが注目されています。
分子レベルでは、NF-κB経路に対する抑制作用を介した抗炎症作用が知られています。
(例えば、ウコン成分クルクミンによる抗炎症作用は、NF-κB抑制です。)

さて、今回の研究では、ノコギリヤシによる前立腺がん細胞における炎症惹起遺伝子への影響が調べられました。
具体的には、2種類のヒト前立腺がん細胞
 -- アンドロゲン依存性前立腺がん細胞(LNCaP)と、アンドロゲン非依存性前立腺がん細胞(PC3) -- 
を用いて、ノコギリヤシによる細胞増殖/アポトーシス比、炎症関連遺伝子発現、NF-κB活性化への作用が測定されています。

炎症関連遺伝子としては、IL-6, CCL-5, CCL-2, COX-1, COX-2, iNOSの各分子の遺伝子発現が測定されました。

また、LNCaP とPC3の2種類のヒト前立腺がん培養細胞系に加えて、
前立腺がん患者から得られた、40のヒト前立腺がん初代培養も用いられています。

これらの前立腺がん細胞に対して、ノコギリヤシエキス(44と88 mug/mlの2種類の濃度)が、
16, 24, 48, 72時間のタイムコースにて投与されました。

解析の結果、ノコギリヤシエキス投与によって、
前立腺がん細胞および正常細胞の細胞増殖おける有意な抑制作用が見出されたということです。
(p <0.001)

このとき、アポトーシス活性の有意な亢進も見出されています。
また、炎症関連遺伝子(IL-6, CCL-5, CCL-2, COX-2, iNOS)の発現は、ノコギリヤシエキス投与によって、抑制されました。

さらに、NF-κBのp65サブユニットの核への移行が30%以上抑制され、NF-κB活性の阻害が認められています。

以上のデータから、ノコギリヤシエキス投与によって、
前立腺がん細胞(ヒト前立腺がん培養細胞系および初代培養系)における抗炎症作用が示唆されます。
今後、臨床的意義の検証が期待されます。

ノコギリヤシに関しての臨床試験や基礎研究では、次のような報告があります。
男性型脱毛症(AGA)に対するノコギリヤシの効果
ノコギリヤシの安全性を示した臨床試験
・ノコギリヤシによる前立腺肥大症と勃起障害の症状改善作用
・前立腺の健康維持にはノコギリヤシ+リコピン+セレン
・ノコギリヤシによる細胞増殖抑制作用
・ノコギリヤシによるBPH症状改善作用
・ノコギリヤシの前立腺肥大症改善作用

・前立腺切除術前のノコギリヤシ投与の効果
・ノコギリヤシ複合サプリによる慢性前立腺炎改善効果
・ノコギリヤシ・カボチャ種子による前立腺肥大症
・前立腺切除術の出血にノコギリヤシは影響しない
・ノコギリヤシでは医薬品との相互作用報告はなし

・男性型脱毛症とノコギリヤシ
・ノコギリヤシの安全性に関する系統的レビュー
・前立腺炎に対する補完療法としてのノコギリヤシ