鉄分過剰「がんの一因」 名大グループ「制御で発生予防期待」
読売新聞 8月31日(金) 配信
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名古屋大医学系研究科の豊国伸哉教授と赤塚慎也助教の研究グループは、体内の鉄分が過剰になるとがんを引き起こすリスクが高まる可能性があることを、ラットを使った実験データなどで明らかにした。研究成果は、29日付の米科学誌「プロスワン」電子版に掲載された。

 豊国教授らのグループは、体内にある鉄分は生きるために不可欠だが、細胞が傷つくなどすると鉄分がたまり、過剰になると病気を引き起こす悪性の鉄分が発生する点に注目。鉄分の過剰が発がんに関わっているのではないかと考えた。

 実験では、鉄分を過剰に投与し、ラットの腫瘍を最新の解析方法で調べた。その結果、腫瘍細胞内の染色体の異常な変化が、腎臓がんなど人のがんと似ていることを発見。鉄分過剰が人のがんの一因と推測できるデータという。

 がんの多くは、腫瘍内で染色体の数が増減するなどの異常な変化が見られるが、こうした染色体数の異常と発がんの関係はいまだに解明されておらず、がん発症の原因はいまだ不明なものが多い。

 豊国教授は「鉄を制御することでがんの発生を予防したり、遅らせたりする効果が期待できる有用なデータであり、今後も研究を進めたい」と話している。