進行癌は単剤治療後に再発する可能性が高い/ジョンズホプキンス大学

分子標的薬よ!お前もか!
といいたくなる記事である。要は、抗癌作用を持つ薬はすべて効かなくなるということである。
がん細胞が耐性を獲得してしまうためである。
とすれば、本当の治療とはがん細胞を自分の免疫で駆除することと、自然の物質の力で発生させないことだろう。
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http://www.cancerit.jp/18508.html
リリース: 06/12/2012
標的は腫瘍細胞の遺伝子経路
June 11, 2012

人工のタンパク質を使用する癌分子標的治療は治療開始から2~3カ月で多くの腫瘍を劇的に縮小させるが、ジョンズホプキンス大学の研究者らによる新たな研究から、それらの細胞があまりに多くの場合耐性を持ち、治療が無効となり、再発してしまう理由が明らかになった。

モノクローナル抗体のパニツムマブで治療された進行結腸癌患者28人を対象とした研究において、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究チームは、薬剤耐性変異を持つ腫瘍細胞が5~7カ月後の患者の血液中に現れ、またその低レベルの変異は治療開始前のほとんどすべての腫瘍に存在しているため,がんの再発は起こるべくして起こっていると報告している。

「このような耐性変異は癌細胞の分裂時に偶然発生するので、腫瘍には常に何千もの耐性細胞が存在しています」と、ジョンズホプキンス大学の、腫瘍学准教授でSwim Across America研究室責任者であるLuis Diaz, M.D.氏は述べており、この研究結果はどのような癌分子標的治療でもあてはまるだろうと語る。

「治癒の可能性が最も高いのは腫瘍が非常に小さい場合です。癌が進行している場合、私たちの研究では単剤分子標的治療による治癒可能性を数値化します」と、ジョンズホプキンス大学の教授でLudwig Center副理事であり、Howard Hughes Medical Instituteの試験担当医師である、Bert Vogelstein, M.D.氏は述べる。「単剤による分子標的治療で進行癌の長期寛解を得ることは殆ど不可能でしょう」と付け加えている。

ジョンズホプキンス大学の研究者らは、28人の進行大腸癌患者から採取した血液サンプルを分析した。これらの患者は、パニツムマブ―新しく登場してきたモノクローナル抗体のひとつで、癌細胞の重要な増殖経路に向かって進む合成タンパク質―の臨床試験に登録された。 パニツムマブはEGFRと呼ばれる増殖因子受容体を標的とする。この薬剤に反応する可能性が最も高い患者においては、腫瘍にはKRAS遺伝子の正常なコピーも含まれている。

研究対象となった28人の患者のうち24人には腫瘍に正常なKRAS遺伝子のコピーが認められた。一方4人にはKRAS遺伝子に変異が認められたことから対照群とされた。血液サンプルは、治療開始前および治療期間中の4週間間隔で採取され、全体で計169回の採血が行われた。

研究者らによると、ほぼ全ての癌で血液中にDNAが放出されており、通常の外科生検では入手し難い病巣からの分子的証拠を容易に得るルートとなっている。「血液中の腫瘍DNA量は、HIVウィルス量を測定するために用いられる検査に似ています」とDiaz氏は述べる。

7月13日付のNature誌オンライン版に掲載された分析によると、正常なKRAS遺伝子を持つ24人の患者のうち9人(38%)で、治療開始後5~7カ月以内に血液中で検出可能なKRAS変異が認められた。3人の患者で画像スキャンで転移性腫瘍増殖が明らかになる以前に、KRAS変異が検出された。その後、ハーバード大学のMartin Nowak, Ph.D.氏と彼の研究チームと共に、試験担当医師らは数学モデルを用いてKRAS変異が発生したと思われる時期を算出した。

Nowak氏とそのチームは、KRAS変異がパニツムマブによる治療開始以前に存在していると判断した。
「治療開始時にその変異が存在していない可能性は極めて低いものです」とVogelstein氏は述べ、薬剤耐性が生じることは既成事実であると結論付ける。癌が再発するまでの時間は、単に変異遺伝子を持つ癌細胞が増殖するまでに要する時間で決まる、と付け加えている。

長期寛解の可能性が最も高いのは併用療法である、と研究チームは述べる。「朗報は、癌が増殖する経路の数は限定されていますので、多くの患者に対して使用できる少数の薬剤を開発することは可能なはずです」とVogelstein氏は述べる。「しかし、私としては今回の研究によって、医薬品承認の過程で現在の規準よりももっと早く併用療法として新薬テストが実施されることを期待しています。」

本研究は以下の諸機関から資金提供を受けた: The Virginia and D.K. Ludwig Fund for Cancer Research、the National Colorectal Cancer Research Alliance、Swim Across America、米国国立衛生研究所(NIH)(CA43460、CA57345、CA62924、N01-CN-43309、CA006973)。

本研究に関与した他の研究者は以下のとおりである:ジョンズホプキンス大学のIsaac Kinde氏、Jian Wu氏、Kenneth W. Kinzler氏;Amgen社のRichard Williams氏、Kelly S. Oliner氏;UCLAのRandolf Hecht氏;ヴァンダービルト大学のJordan Berlin氏;ハーバード大学のBenjamin Allen氏、Ivana Bozic氏、Johanness Reiter氏。
Johns Hopkins Kimmel Cancer Center
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豊 訳
廣田裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)監修