心身療法はがんにかかわらず健康維持にも非常に重要な事柄である。
しかし、実際には日本のどの大学病院で心身療法外来が行われているだろうか??
現状では保険診療では何もできないし、患者も心身療法まで求めていないのかもしれない。
しかし、心の癒しや体の癒しが免疫をためけるだけではなく、遺伝子の発現にも大きな鍵を握っていることがわかりつつある。このMDアンダーソンの研究は基礎的なものであるが、これからはこういった心身療法が新たな医学分野になると私は思っている。
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http://www.cancerit.jp/1641.html
第3相臨床試験では、乳癌治療に心身治療を組み込むことの有効性、費用効率および作業生産性を研究する
M.D.アンダーソンがんセンター

2010年4月12日
心身治療が患者の健康に効果的であるという従来の考え方を科学的に検証する現在進行中の取組みにおいて、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターは、乳癌女性患者の治療プログラムにヨガを組み込むことの効果の研究に対して450万ドルを超える助成金を受けた。

今回の助成金は、癌治療におけるヨガの研究に対して米国国立癌研究所が支給したものとしては過去最大で、これにより研究者らは乳癌女性について、放射線治療期間中と治療後における身体機能およびQOLの改善度を決定する第3相臨床試験を実施することができる。また、このようなストレス軽減プログラムが、経済面や作業生産面にも効果をもたらすかについても調査する。

M.D.アンダーソンの教授で統合医療プログラムのディレクターを務めるロレンツォ・コーエン博士が助成金を受けた。
「研究では、標準治療に組み込まれたヨガなどの心身治療が患者の結果を、中でもQOLを改善することが示されています」と、本研究の主任調査官であるコーエン氏は述べた。「しかしながら、心身治療は標準治療ではなく、癌患者のための臨床ケアにも用いられていません。今回の助成金によって、乳癌女性に対する治療計画にヨガを組み込むことの効果を明確に決定することができます。」
本研究はインドのバンガロールにあるヨガ研究財団でもあり大学でもあるVivekananda Yoga Anusandhana Samsthana(VYASA)と共同で行われている。M.D.アンダーソンは6年以上にわたりVYASAと共同研究を行っている。

コーエン氏と研究者らが主導し、乳癌患者に類似の集団を対象にヨガの効果について調査した先の2件の研究では、簡単なストレッチをした患者や同様のプログラムに参加しなかった患者に比べて、ヨガを行った患者では身体機能に有益性が示された。ヨガプログラムに参加した患者からは、階段を一気に上る、近所を散歩する、買い物した荷物を運ぶという日常生活におけるあらゆる能力の向上が報告されたとコーエン氏は述べた。本研究ではまた、睡眠の改善および疲労レベルの低下が見られ、予備分析ではヨガ群におけるストレスホルモンレベルの低下が示唆された。

このような研究に基づき、第3相臨床試験には、M.D.アンダーソンで放射線治療を受けている第0〜3期の乳癌女性が参加する。患者はヨガ(YG)、ストレッチおよびリラクゼーション(STR)または標準治療のみで運動プログラムには参加しない治療待機対照群(WLC)の3つの集団のいずれかに無作為に割り付けられる。ヨガ群とストレッチ群の患者は、6週間の放射線治療の間、週3日のセッションに参加する。

参加者は身体機能、メンタルヘルス、疲労レベルなどのQOLの側面について自己申告する。睡眠の質の報告に加え、患者はぐっすり眠れているかを客観的に監視する活動監視モニターを着用する。コルチゾールレベルも収集し、研究の対象とされる。コルチゾールレベルの緩やかな低下は、乳癌においては好ましくない結果に関連しているとコーエン氏は述べた。

臨床試験における2つ目の非常に重要な目的は、病院のための費用効率分析および医療を利用する上での一般的な費用の評価に加え、患者の作業生産性の調査であることをコーエン氏は強調した。
「この医療改革の時代においては、病院のためだけでなく、女性の人生と、家庭を切り盛りしている母親か外で働いているかにかかわらず、生産的に仕事に臨める能力のためにも、費用削減を決定することは非常に重要です」とコーエン氏は述べた。「費用効率分析などのデータを取り入れることで、われわれはこの国における乳癌女性の標準治療法を変えることができるかもしれません。」
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横山加奈子訳
原 文堅(乳腺科)監修