愛読しているメルマガを転載する。
経済の予測に関してはマスコミに出てくる評論家の言うことは操作されているといってもよいだろう。
つまり、何らかの意図を持ってその論考は公表されている。

本当の経済予測はこの「吉田氏」の予想のように数学的に経済の公式に変数を当てはめてこそ理解できるものである。そのような優れた予想を知らない人が日本人の殆どであり、経済を生業にしている人ですら本当の予想を知らない。

まるで医療を生業にしている人々でも本当の病気の治療法を知らないのと同列である。
ならば我々は、その道の真実を探求するべきであり探求する手段を持つべきである。

経済はこれから悪化する、日本が依存している輸出先である中国は急速に景気を減速してきている。なぜなら中国の大きな輸出先であるヨーロッパが急減速はなはだしいからである。
なぜ減速しているかというと、ギリシア問題が巨大化し、新たにスペイン問題が表表面化してきており、イタリア問題が萌芽しているからである。

実は私は毎朝world wave というニュース番組を視聴するのだが、そこでも問題の本質を隠匿しようとする海外メデイアの論説が多くて閉口する。それでも日本のメデイアよりは随分ましである。日本では20年前のオーム事件のほうが、今起こっている世界的経済危機よりも重要なようだ。ヨーロッパ問題は一切報道、論考されない。

お笑い番組ばかり作成していてマスコミ人種は情けないと思わないのだろうか?ばかげた話である。
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<ギリシアとスペインの債務問題>

著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治
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おはようございます。ユーロについての日本の分析や論調は、地理
的に欧州が遠いためか、のんびりしているように感じます。日本人
は、米国は心理的に近く感じるのですが、欧州は遠い。

米ドルを論じるエコノミストは多くても、欧州経済とユーロに対し
ては少ない。金融が大きくなった経済では、経済を論じることは、
通貨を論じることでもあります。通貨の価格は、各国の株価のよう
なものでしょう。

ギリシアとスペインでは、預金者が、銀行から預金を引き出してし
まうBank Run(取り付け)が起こっています。

政府(スペインの財務大臣モントロ氏)は、当然に「スペインでは
取り付け起こらない。」と否定しています。取り付けがあっても、
政府は、あると言えません。

あると言えば、取り付けが急拡大し、銀行にはパニックの群衆が並
ぶからです。いや今はインターネットで引き出しができます。ネッ
トのほうが先行するでしょう。

銀行からの預金取り付けは、預金総額の5%であっても、その国の
金融システムを崩壊させて、信用恐慌を生みます。

信用恐慌は、投資や在庫サイクルからくる普通の不況(リセッショ
ン)ではない。経済取引に必要なマネー(=信用)が抜けることか
ら起こるものです。

借入であれ、自己資金であれ、企業と世帯のお金が減れば、投資と
商品購買は、その分減ります。GDPは、投資と商品購買の総額です。

【マネーの増加は、信用乗数】
銀行システムでは、最初は1000億円の預金の増加が、銀行の支払準
備率を5%としたときは、[1000億円÷5%=2兆円]の貸付と預金
を増やします。預金の増加は、約20倍の乗数効果があります。

【マイナスも、負の信用乗数】
逆に、1000億円の預金が銀行システムから流出し、タンス預金にな
ると、2兆円の貸付金と資金運用を、銀行全体から減らさねばなら
ない。これがマイナスの乗数効果です。こうしたマイナスの乗数効
果が起こった場合、明白に、その国は信用恐慌になります。

●預金取り付けは、銀行の貸付及び運用のマネー量をマイナスの乗
数効果で急減させ、実態経済(商品の購買と投資)を恐慌に至らせ
ます。

【公的な発表】
スペインの公的な銀行統計では、取り付けによる銀行預金の流出は、
大きくは起こっていません。銀行の不良債権問題でも、政府が実態
より数分の1以下の少ない額を言うことは同じです。

経済と金融を見通すには、公的統計から、実態の数値を推計せねば
ならない。こうしたとき政府は、嘘(または事実の隠蔽)を言いま
す。
福島原発での、政府や東電の発表と同じです。

以下は、2008年の1月を100としたときの、欧州の銀行の、預金額の
変化です。日本の内閣府がまとめた『世界経済の潮流(2012年6
月)』によります。元データは、ユーロを発行しているECB(欧州
中央銀行)の公的な統計です(同上72ページ)。
http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh12-01/pdf/s1-12-2-1-3.pdf

08年1月        10年1月      12年3月
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イタリア    100           120            135
フランス    100           110            130
ドイツ      100           100            120
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ギリシア    100           115             85
スペイン    100           115            100
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【ギリシアの預金取りつけと、その結果】
ギリシアの銀行預金は、08年9月のリーマン・ショック後ではあっ
ても、2009年12月までは、120に増えていました。預金は、1年に5
%くらいは増えるのが、マネーを使う量が増える成長経済にとって
は平常なことです。

政府の財政赤字と負債の擬装が発覚した09年1月から、「銀行が危
ない」と感じた預金者の引き出しによって減り始め、12年3月では
85です。

(実態よりはいい数字を示す)公的統計でも、すでに12年3月で、
35%の預金が減っています。

ギリシアの債務危機、つまりギリシア国債の売却が、ECBによる貸
し付けと国債購入で落ち着いたと見られた時期が3月でした。とこ
ろがその後、12年4月、5月、6月と、「戦争が起こったかのように
(ギリシア国民の弁)」、預金取り付けが激しくなっています。

誰も言いませんが、12年6月時点では、ギリシアの総預金の50%は
減っているでしょう。物価が数十倍以上に上がるハイパー・インフ
レになった国以外では、どの国も経験したことのない規模の、金融
システムの崩壊が生じているのが、現在のギリシアです。

(注)ハイパー・インフレには、通貨の購買力が無価値になるため、
預金の全額引き出しが必ず伴います。引き出した現金で、人は争っ
て商品を買い、価格を上げます。

欧州中央銀行(ECB:最後の貸し手)が、ギリシアの総預金の減少
を補う額である20~40兆円くらいのユーロを、新規に、ギリシアの
銀行に貸し付けねばならないことを示しています。実体で言えば、
ドイツ中央銀行(ECB本部)が、ギリシアの銀行に、20~40兆円の
追加貸し付けを迫られているということです。

もっとはっきり言えば、ドイツ国民が所有する金融資産を、ギリシ
アに提供することです。提供というのは、貸しても返ってくること
はないからです。

(注)ドイツ国民の金融の実質資産は、ギリシアに提供した分減り
ますが、中央銀行のECBには、無から作ったマネーを貸し付けた資
産(対ギリシア債権)が残ります。これによって、貸し付けたECB
が破産後のギリシア経済を支配します。

これは、貸付けた銀行が、倒産した企業の、残余の資産を得る「屍
肉に群がるハゲタカ金融」になるということと同じです。ハゲタ
カ・ファンドの方法はLBO(相手資産を担保にした借入で買収す
る)でした。

通貨の増刷がされたとき、通貨の価値の低下で実質損を受ける国民
と、無から資産を得る中央銀行の利害は、反します。国民の金融資
産の損の分が、中央銀行の、通貨発行による資産利益になると言っ
ていいのです。発行した通貨で国債を買えば、その国債(資産)は
中央銀行のものになります。

(注)徳川幕府は、金の含有量の多い小判を一両で回収し、銅や銀
を混ぜて二両に改鋳し再発行していました(通貨量は2倍に増加)。
これは、国民から一両につき0.5両づつの税を徴収したことと等し
い。このため、1両の価値は金の含有が半分に減って0.5両分にな
った。これが、物価が2倍に上がることです。1両でそれ以前の商品
の半分しか買えなくなった。これが通貨増発による国民の金融資産
の掠奪です。見えない掠奪です。1両は1両のままです。

ドイツ国民は掠奪された価値に気がつかない。中央銀行が、無から
マネーを印刷できるというのは嘘です。中央銀行は、マネーを増発
した分、広く浅く、国民の金融資産の価値を掠奪することができま
す。ケインズは「戦費調達はマネーの増加印刷」によるほうが、増
税より容易と言っていました。

ECBがユーロを刷って貸さないと、どうなるか?  ギリシアの政府、
銀行、企業、世帯は、債務の返済と利払いするお金がまるでないの
で、デフォルト(ギリシア国債、企業債務、世帯債務の無価値化)
が起こるということです。

これは、貸しているフランスとドイツの銀行、及びPIIGS債のCDS
(債務回収保証保険)を引き受けている米銀の、純損になります。
その純損を避けるために、ECBが貸し付けるのです。

【米銀の損はデリバティブ】
健全とされていた米銀JP・モルガンの、決済期限がきたCDS(債務
回収保証保険)による巨大損($500億)も発覚しています。

加えて、PIIGS債と他の国債を複合的に組みこんだCDO(債務担保証
券)の損失は、一体何が入っているのか複雑すぎ、誰もわかってい
ないとされています。

CDOは、いろんな種類の債券(各国の国債、ローン債権、住宅・不
動産証券など)を混合し、それらの債券から生まれる毎月のキャッ
シュフロー(償還金と金利)を、優先・劣後の構造で受けとること
ができるようにしたデリバティブ証券です。

優先債は、償還金を最初に受けとることができる証券ですから、金
利は低い。他方、劣後債(エクイティ債)は、最後に償還金を受け
とるので、金利は高い。AIGの破産とリーマンッショクを生んだ、
サブプライム・ローンのCDOと同じです。こうしたCDOやCDSを、
PIIGS債に対し、100兆円かかえるのが米国の大手金融機関です。

CDOの他に、CDS(保証保険)を複合化した「シンセティックCDS」
もあります。21世紀金融は、債券のままの購入や売却ではない。複
合化され(ちゃんこなべのように混合されて)、証券化されている
のです。

2011年12月末の、世界の銀行間でやりとりされているCDSの対象債
権の残高は、$28.6兆(2288兆円)と巨大です。そのCDSの価格
(時価)は$1.6兆(128兆円:対象債券の5.6%)でした(BIS統
計)。
http://www.bis.org/statistics/otcder/dt1920a.pdf

21世紀に大きく進んだ世界金融の連鎖構造のため(これをグローバ
ル金融と言う)、PIIGS国債の下落危機(=金利の高騰)は、同時
に、米銀の危機にもなります。

対外貸し付けが多い英国の銀行も、同じでしょう。英国の金融部門
は、英国GDP(208兆円:08年)の2.2倍の債権・債務(460兆円)
もつからです。華やかなロンドン・オリンピックの裏で、英国がも
つPIIGS国債(PIIGS債の総額は400兆円)をめぐり、どろどろの損
失が生じます。

【日本の銀行】
ただし幸い、日本の銀行は、こうしたCDSやCDOをわずかしかかかえ
ていません。このため、「円はまだ大丈夫だ。」という認識から、
ユーロ売り・ドル売りと円買い(=円の高騰)が起こっているので
す。

【預金取り付け】
ギリシアで預金取り付けが起こって、現在進行形である理由は、ギ
リシアがユーロから離脱を迫られ、離脱する日になると、今はユー
ロの預金が強制的に新ドラクマの預金に振り替わるからです。

1ユーロが1新ドラクマの公定レートで交換されたとします。こうし
た通貨の変更は、当日まで、極秘で運ばれます。*月*日からとす
れば、その前に、銀行預金が全額引きだされるからです。

政府は、預金封鎖をせねばならなくなる。預金が、ごく一定額しか
引き出せない封鎖がされると、企業や世帯は払うお金がなくなるの
で、経済活動の停止が生じます。

債務が払えずデフォルトしたギリシアのドラクマは、為替市場で売
り浴びせに合いますから、すぐに、2ドラクマが1ユーロに下がるで
しょう(大方の予想)。当方、1/3以下に下がると見ています。も
っと下がるかも知れません。

他方で、ギリシアのユーロ建ての現在債務は、ユーロのままです。
ドラクマが1/3に下がれば、ドラクマにとって3倍の金額になった
ユーロ建ての債務を、ギリシアが払えるはずもない。

ユーロに属しているとき3000万円の価値(=商品購買力)があった
ギリシア国民と企業の預金が、1/3の1000万円に下がって、預金者
は大損をします。

誰でも、自分が破産するような損をするのはいやですから、ユーロ
であるうちに引き出し、ユーロ札をもっておこうとします。預金者
の資産防衛です。これが、ギリシアにおける預金取り付けです。

以下では、ギリシアの約5倍の、政府と民間の債務(400兆円)をも
つスペインを見ます。

【2012年の必然】
結論を言えば、数値で詰めると、スペインのデフォルト(債務不履
行)は、100%の可能性で、決定しています。このため、ECBのユー
ロ印刷も、必然になります。

加えて、CDSとデリバティブで損をしている米銀の救済のために、
米国FRBも、近々ドル紙幣の印刷(QE3という量的緩和)を行います。
予想ではない。必ずそうなるという必然です。FRBも、BISと同じく
民間銀行の資本です。

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<599号:ギリシアとスペインの債務問題>
2012年6月13日号

【目次】

1.回復が不可能なスペイン債務問題
2.ギリシアに続く、スペインの銀行預金の取り付け
3.スペインの債務は、ユーロにとって大きすぎる
4.外為売買が自由な時代の、通貨の増発の結果
5.スペインの債務問題の結論
6.ユーロ共同債の発行という方法はない
7.じゃ、どうなるか

【後記:ユーロ崩壊と日本の輸出】

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■1.回復が不可能なスペイン債務問題

▼スペインの債務

スペインは、GDP(110兆円:08年)の3.6倍の、官民の債務をかか
えている借金大国です。政府の債務が80兆円、金融機関の債務が
85兆円、民間企業の債務150兆円、世帯の債務82兆円で、合計397兆
円(約400兆円)の債務残があります。

2008年頃までのスペインは、債務が積み上がりながら、バブル景気
の最中でした。投機的に買われた住宅と株の値上がりで、家計も資
産リッチになっていたのです。1990年までの日本に似ていました。
違っていた点は、日本は国内のマネーでバブルが起こり、スペイン
は、海外からの借金からだったことです。

年収300万円の世帯に、全平均で3.6倍の1080万円の借金があると
例えれば、「利払いも返済も無理」というのが了解できるでしょう。
スペインの金利は最も低い国債でも7%です。世帯や企業が借りれ
ば10%を超えるでしょう。

利払いだけでも[1080万円の借入金×10%=108万円]になり、世
帯収入300万円の30%にもなります。企業も同じです。借りた借金
の利払いと返済は、売上が3倍にならないと不可能でしょう。

(注)実際は、借金のある世帯は、全世帯の50%程度なので、住宅
ローン借金の平均額は上記の2倍の2080万円です。金利が10%なら、
300万円の年収で、208万円の利払いです。まるで不可能です。世帯
が利払いができないローンは、銀行のデフォルト債権になります。

企業も同じです。売上収入が、今の3倍にならないと利払いができ
ない。企業の売上が3倍になるということは、スペインの名目GDPが
3倍になるということです。ところが2012年、13年のスペインの
GDPは、当然に数%のマイナス予想です。世帯も企業も、借金の利
払いができない。つまり、スペインの債務は、ほぼ全部がデフォル
トします。

失業率は24%で、ギリシアの22%を超えて、世界で最高です。4人
に1名が失業し、25歳以下では、半分の人が働く場所がない。GDPが
伸びるわけもない。逆に縮小です。

▼南欧の不動産バブルの、同時崩壊

スペインでは、住宅価格と土地が、2.5倍に上がっていた不動産バ
ブルの崩壊が生じています。ユーロ加盟前の2000年の住宅価格を
100とすると、2008年には、全国平均でも、250に上がったのです。

【住宅価格】
2000万円の普通の住宅が、平均で5000万円に上がり、元々の資金は
海外から来たローンで買ったということです。

250という価格は、平均です。都市部やリゾートの人気のある地域
では300~400に上がった住宅も多かった。

(注)PIIGSで資産バブルがもっとも激しかったアイルランドの住
宅価格は、1995年の6倍にも上がっていて、2008年から暴落しまし
た。

2012年現在で、スペインの住宅価格は(スペイン政府の公的な統計
で)180付近に28%下げています。住宅価格は、近々、100に戻りま
す。もっと下げ、1995年の価格(70以下)に下がる可能性が高い。

スペインの住宅価格の下落は、現在進行形です。新しく住宅を買え
る人は、スペインには極小です。このため、下げは大きくなります。

不動産価格の下落によって、企業と世帯の債務(合計で232兆円)
のうち、最小でも50%(116兆円)は、回収が不可能な不良債権に
なります。

スペインは、住宅と土地価格の下落という要因だけからでも、GDP
(110兆円)に匹敵する不良債権が生じます。これは、確実なこと
です。

政府統計の不良債権は貸付額の9%に過ぎませんが、これも明らか
な擬装です。(↓以下の36ページ)
http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh12-01/pdf/s1-12-2-1-1.pdf

日本に例えて言えば、名目GDP(469兆円)の金額に匹敵する、住宅
ローンや企業ローンでの不良債権が生じることに等しい。上がって
いた不動産が下がるとローンを抱える企業と世帯は、破産します。
この寸前にあるのが、スペインです。

銀行はローンの返済と利払いを猶予していますから、企業と世帯に
破産が生じていないだけのことです。このため、銀行が破産します。
スペイン債は、下落の予想が多いため市場で売れません。政府も国
債を発行して、銀行に資金を入れる手段がないのです。

日本の債務問題は、GDPの2.2倍(1050兆円)の、政府部門の債務
です。世帯や企業の債務は、少ない。

スペインでは、世帯と企業の債務が多い。このため、ECBがスペイ
ン国債を買う程度では、スペインは救われないのです。

▼対外債務はGDPの171%(188兆円)

政府の国債より民間企業の債務(150兆円)、世帯の住宅ローン債
務(82兆円)が多い。それに、ユーロ加盟以降、ドイツ、フランス、
英国から借りた対外負債が多い。

●スペインはGDPの171%(188兆円)がドイツ、フランス、英国、
オランダなどから借りた対外債務です(世銀統計)。

対外資産(582兆円)から対外債務(329兆円)を引いた対外純資産
が253兆円の日本とは、異なります(11年12月末)。こうした対外
純資産の構造をもつのは、日本、ドイツ、スイス、中国です。

http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2011.htm

■2.ギリシアに続く、スペインの銀行預金の取り付け

スペインの民間銀行の預金は、1兆6250億ユーロ(162兆円:12年4
月:ECB統計)です。この預金は、2011年央から、毎月ほぼ1%の
ペースで減少し、今までに約10%(1600億ユーロ:16兆円)減って
います。

ECBの統計では、2012年4月だけで、総預金の1.9%が流出したとし
ています(ロイター)。銀行預金の取り付けで、ギリシアを追って
いるのがスペインです。この預金減は、ECBの公的統計です。

財務大臣は、「スペインに預金とりつけは起こっていない」と否定
していますから、預金が大きく減ったデータは出せません。逆に増
えているデータを出す。その中に、ECBからの借入増が含まれても、
です。

●実態では、上記の公的統計をはるかに上回る預金取り付けが起こ
っていると見ます。推計で、公的統計の3倍(30%:48兆円)の預
金減でしょう。

ギリシアが政府債務を擬装していたように、南欧政府にとっては、
こうした擬装は稀(まれ)ではない。

財政再建の政府計画も、信用に値しません。
数ヶ月後には、変更することを続けています。

■3.スペインの債務は、ユーロにとって大きすぎる

スペインの債務の規模は、ギリシアの5倍(約400兆円)です。

預金者は、ギリシアについで、スペインも、ユーロ離脱を迫られる
恐れを感じています。ペソに戻れば、ギリシアのドラクマと同じく、
預金者が大損をするからです。スペインでもギリシアのように、預
金取り付け(Bank Run)が進むことを防ぐ手だてはない。

政府による預金封鎖やペソ回帰の噂が立てば、預金者の取り付けは、
一層勢いを増します。自分が、スペインの銀行にユーロで預金して
いると想定すれば、簡単にわかるでしょう。

預金取り付けが進めば、スペインの債務(400兆円)のほとんどが、
不良化します。銀行の金庫は、ほぼ5%の預金減で、枯渇します。
銀行が、預金者からの引き出しに応じるには、ECBがユーロを貸し
付けるしか方法はない。それがないと、銀行窓口の閉鎖です。

EU(欧州経済連合)では、スペインの銀行に対する数兆円の資本提
供が検討されていますが、足りるはずもない。

ユーロに属するままでも、ユーロから離脱しても、EU(欧州経済連
合)にとっての結果は、同じです。ECBが、スペインの銀行に不足
する資金を印刷し、貸し付けねばならない。

▼貸しつけた、欧州の銀行の損失

スペインをデフォルトをさせ、スペインの対外債務188兆円を切り
捨てれば、債権をもつドイツ、フランス、英国の銀行、及び、CDS
での保証債務を抱える米銀には、ECBが資金供給をせねばならない。

両方とも、結果は同じであり、要は、ECB(欧州中央銀行)のユー
ロ印刷です。

ギリシアやスペインのユーロからの離脱で、事が解決するわけでは
ない。ECBは、スペインの銀行に、これから不足する資金(推計
200兆円)を増加印刷し、貸し付けができるのか?

【LTRO枠は1兆ユーロ】
昨年12月と今年1月のLTRO(国債購入と3年物長期資金供給オペ)の
金額枠は1兆ユーロ(100兆円)でした。ECBは、無条件で、即時に
資金が不足する銀行に貸し付けをすると表明したのです。

LTROとして100兆円というECBの発表によって、一時的には(12年2
月~3月)、ユーロはPIIGSの債務危機を脱出したと見られたのです。
このため、世界の株価も上がりました(12年2月~3月)。

しかしPIIGS債の下落対策に、1兆ユーロでは足りなかった。足りな
い資金しか準備しなかったのは、EUが、PIIGSの不良債権を、見積
もることができなかたからです。

加えて、その後の原因は、2つです。

(1)外為売買で、ユーロの銀行から、ドルと円に向かってユーロ
資金が脱出したこと。ユーロ売りによるユーロ安、円買いによる円
高です。
(2)ギリシアとスペインで預金取り付けが起こり、銀行の資金が
減ったこと。

つまり、ユーロの銀行に貸したECBのマネーは、ユーロ売りと預金
取り付けによって、抜けてしまったのです(12年4月~)。

■4.外為売買が自由な時代の、通貨の増発の結果:重要

▼ユーロからの資金の流出

ヘッジファンドや金融機関による株の売り、及びユーロ債の売りで、
ユーロから資金が流失しています。(注)ユーロ建ての株と証券を
売って、ドル債や円債に変えることは、ユーロの金融機関から、資
金が流出することです。

ECBが緊急に注ぐとした1兆ユーロ枠のLTROは、ドルや円になってし
まったのです。理由は、ユーロの、一層の下落への予感からです。
ユーロ建ての株・債券・国債をもっていれば、ユーロの下落で損を
するからです。

以上が、各国の通貨が自由に売買できる、金融の開放経済体制での、
中央銀行のマネー増発がもたらす結果です。

中央銀行のマネー増発(及び低金利策)は、その国のマネーの価値
の下落ですから、為替市場で売られます。その結果、通貨安が起こ
る。

●通貨安とは、中央銀行のマネー増発分、あるいはそれ以上が、海
外の通貨買いになって流出することです。マネー・エクソダス(通
貨脱出)とも言います。

1兆ユーロの売り、100兆円の円債買いがあると、100兆円分が日本
の金融機関に入ります。この売買の結果として円は上がり、ユーロ
は下がります。通貨の変動は、こうした意味をもちます。

●買われる通貨(=上がる通貨)にマネーが集まり、売られる通貨
からはマネーが逃げるのです。

▼外為売買に規制があった時代

外為売買に規制額の上限があり、自由ではない時代、言い換えれば
固定相場の時代(1971年まで)は、中央銀行が増加印刷したマネー
が海外に流出することはなかった。

(注)現代で言えば、中国がこれです。日本は1980年代まで、これ
でした。資本移動(=為替売買)が自由化されたのは、金融ビッグ
バンと言われた1995年(橋本内閣)からです。日米欧の為替売買の
自由化は、比較的に新しいことなので、経済学でも常識として了解
されているとは言えません。なお、日本への金融ビッグバンは、米
国が日本のマネーを利用できるようするために、要請したことです。

閉鎖経済では、中央銀行が増加印刷したマネーは、国内でのマネー
量の増加になって、物価や資産のインフレ(言い換えればマネー価
値の下落)をもたらしていました。

物価が10%上がることは、お金の価値が10%下がることです。同じ
1万円で、物価が10%上がる前の9090円分の商品しか買えなくなる
ことだからです。以上は、金融が一国経済だった時代です。

▼金融の開放経済の体制

為替売買がいくらでも自由である開放経済では、どんなことが起こ
るか?

1日での、世界の為替売買は、前号(有料版598号)で示したように、
$5兆0564億(400兆円:2010年)もあります。1年に20%増える傾
向を続けていますから、2012年では、500兆円/日という巨大さで
しょう。

100兆円のユーロ売り(円買い)も、1日で起こりえるということで
す。このため、各国の通貨の交換レートは、株価のように激しく変
動する。

【事例】
ECBが、危機対策としてのLTRO枠で、1兆ユーロを資金が不足する
ユーロの銀行に貸し付けたとします。ユーロの銀行は、その資金を
運用して、借入金の金利以上の利益を生まねばならない。

●危機が続くPIIGS債(ユーロ建て)ののままもてば、銀行が損を
します。このため、保有する通貨ユーロやPIIGS債を売り、まだ危
機ではない円国債やドル国債を買うはずです。

日本債は0.8%、米国債は1.6%と金利は低くても、為替差益
(ユーロに対する円高、ドル高)が期待できるからです。

ECBは、ユーロ債やPIIGS債を金融機関が買い支えてくれるという目
的で1兆ユーロのLTRO枠を作った。しかし、ユーロの金融機関に、
その資金を貸し付けた結果は、「通貨ユーロの売りとPIIGS債の売
り」だった。

結果は、1兆ユーロのLTRO枠にもかかわらず、ユーロ安でした。
ユーロとユーロ建てのPIIGS債は売られて、PIIGS 5ヵ国の国債金利
は、下がるのとは逆に、上がったのです。

【その理由】
ECBが増加印刷したマネーは、価値の下落を恐れたユーロから抜け、
円やドルになったのです。このため、PIIGSの債務危機は、12年4月
から、より深刻になっています。

皮肉なことですが、ECBがユーロを増加印刷したことが理由で、
ユーロが売られて下がり、PIIGS 5ヵ国のマネー不足はより一層深
まっています(12年4月以降)。

●これが、外為の売買が1日に500兆円もある金融の開放経済です。
世界から、価値が下がると見られた通貨は売られ、売られた通貨か
らはマネーが抜けるのです。

中央銀行のマネー増発は通貨の価値を下げますが、閉鎖経済の時代
と違い、金融の開放経済ではインフレ(債務の価値の下落)を起こ
すにことにはならない。

●むしろその通貨が売られ、それ以前より深刻なマネー不足すら起
こします。これが、現在ユーロで実証されつつあることです

(注)ギリシアやスペインの銀行から流出した富裕者の預金は、ド
イツへの預金か、スイスフラン、あるいは英ポンドや米銀への預金
になっているでしょう。どの国でも、金融資産で上位2~4%の富裕
者が預金総額の50%以上を持ちます。少額の庶民はタンス預金です。

ユーロは、極東の日本より、はるかに国際的です。ユーロ内のドイ
ツ国債も買われ、このためドイツ債の金利は、10年債で1.6%に下
がっています(国債価格は上昇)。

ドイツの中央銀行から、ユーロ内の銀行に出たユーロが、「PIIGS
債の売り、ドイツ債の買い」にもなっているということです。

この結果がPIIGSとドイツの金利差(スプレッド)の拡大です。
PIIGSは国債が売られて上がり、ドイツ国債は買われて下がってい
ます。

PIIGSを含むユーロの銀行は、コンピュータ画面で瞬時に、世界の
通貨の売買をしています。ECBは、こうしたマネーの国際的な動き
(1日500兆円)を意識しながら、ユーロの増刷決定をしたのでしょ
うか?

12年6月13日には、ECBが1000億ユーロ(10兆円)を、スペインの問
題銀行に貸すことが決定しました。ところが市場は逆に、スペイン
債を売り浴びせてスペインの国債価格を下げ、長期金利を6.8%上
げています(FT紙)。

こうしたことも、ECBがマネーを印刷して注いでも、市場はスペイ
ン債を売って、スペインからマネーを抜くことを示すものです。

■5.スペインの債務問題の結論

▼ギリシアのユーロ離脱は必然

金融市場では、ギリシアがユーロ離脱を迫られる可能性は、2012年
内に30%程度としか見られていません。ギリシア国債の回収を保証
しているCDSの回収保証保険の料率が、現在、30%くらいだからで
す。

CDSは金融機関の相互でかけあってます。公開市場はない相対の取
引です。長期国債の金利は、28%付近です(12年6月)。

12年6月17日の、ギリシアの再選挙次第と見られていますが、その
結果がどうであれ、債務問題では、変わるものではない。

「ギリシアの債務は返済しないのではなく、どの政党が政権につい
ても返済と利払いができない。」からです。

債務問題は、当該政府の意思には、かかわりません。返済できる資
金がないことが問題です。どの政党でも返済と利払いはしなければ
ならない。しかし返せないものは、どうやっても返せない。これが
真実です。(注)ユーロでは、真実を塗り固める先延ばしの策が多
い。

社債が発行できず、銀行融資も受けられず、倒産する企業を想定す
ればわかるでしょう。売上が上がれば、返済できるという。しかし
仕入と賃金の支払いにも不足するようになると、売上は上がりませ
ん。債務カットしか、方法はなくなります。

【ギリシアのユーロ離脱】
ユーロ離脱は、その後のドラクマの下落によって、ギリシアの商品
価格、観光価格、賃金が、おそらく1/3に向かい切り下がることで
す。

これによってユーロ、米国、日本から見れば1/3に安くなった観光
価格によって、現在は暴動の恐れのため激減しているギリシア観光
は、増えるでしょう。

例えが悪いと叱られますが、沖縄観光が今の10万円付近ではなく、
3万円に下がれば、沖縄に行く人は増えるでしょう。沖縄製品も1/
3の価格に下がると、本土にもってくれば飛ぶように売れます。

沖縄の住宅も1/3に下がるので、3000万円のものが1000万円に下が
ったことになって、本土からの投資が増えます。松下も工場投資を
します。ドラクマに回帰し通貨価値が1/3になると、ギリシア商品、
不動産、労働に、このような「競争力」の回復が起こります。

【債務はデフォルトする】
ただし、現在のギリシアのユーロ建ての債務は、1/3に安くなった
ドラクマにとっては3倍の重みになるので、返済と利払いはますま
す無理になります。

以上から、ギリシアのユーロ離脱とは、欧州の銀行が、対ギリシア
への債権をカットせねばならないことを意味するのです。ドイツ国
民は、金融資産のうち、40兆円くらいを「実質的に」失うことにな
るでしょう。

実質的にということの意味は、ECBのユーロ増刷分を、損失を蒙っ
たドイツの金融機関に、低い金利で与えねばならないからです。

(注)日本のバブル崩壊の後、政府・日銀は、ゼロ金利策をとりま
した。これは預金者がもつ800兆円の預金の金利が、ほぼゼロに下
がったということです。損失を蒙っていた銀行は、預金金利の支払
いがないという特典を受けています。

2%が普通の預金金利とすれば、1998年のゼロ金利以降の14年間で、
[800兆円×2%×14年=224兆円]の、所得移転が、預金者から銀
行に与えられたことになります。銀行は14年間のゼロ金利の特典で
回復したのです。

ゼロ金利でこの損をしたのは、預金者(純預金をもつ50歳以上の世
帯)であり、国民です。銀行が、不良債権の特別損失を引いた申告
所得で、プラスを出して納税するようになったのは、やっと2012年
からです。

ドイツ国民が、ギリシアのユーロ離脱で蒙る金融資産の損は、以上
のような構造からのものです。

▼スペインのユーロ離脱

GREXIT(グレクジット:ギリシアのユーロ離脱)は、将来の可能性
ではなく、近々の現実のものになりつつあります。

EU(欧州経済連合)は、ギリシアだけだったら、早々に、「ユーロ
離脱」という結論を出したはずです。40兆円程度の債務カットなら、
EUにとって、堪えられる金額だからです。

【問題】
問題は、ギリシアに続くスペインです。本稿で数値を上げて分析し
たように、スペインが対外債務188兆円に対し、利払いして返済で
きる可能性はない。その188兆円を含む、国内の総債務400兆円も同
じです。

ということは、デフォルトするということです。というより、現在
はすでに、ECBからの追い貸しがないと、金利も払えない。つまり
「事実上、デフォルト」しています。

スペインの年間GDPは、債務の1/4の100兆円くらいしかない。しか
も今後、減少する見込みです。2012年には、スペインが自国の国債
を発行しても、買い手がない。国債が発行できないということは、
政府にお金がないということです。

こうした状況であってもスペイン債の金利上昇が7%程度で止まっ
ているのは、スペイン政府の新規国債の発行がないからです。その
分、ECBが貸付をし、スペイン債を買っています。

(注)欧州では、これどころか、銀行間の短期資金の融通が、スト
ップしています。ECBが一手に引き受け、不足資金を供給していま
す。

【時間とともに増えるのが負債】
債務問題は、時間が経てば解決するものではない。
時間とともに、支払うべき金利は増えます。
払えない金利分は、新たに借りますから、債務は、毎月膨らんで行
きます。

サラ金に利払と返済をしないと、金利が金利を生んで、負債額が、
毎月、増えるのと同じです。つまり、時間が経てば経つほど、利払
いと返済が、一層不可能になってゆくのが借金です。

結論を言えば、ギリシアのユーロ離脱があると、その直後には、ス
ペインもユーロを離脱せざるを得なくなります。

その結果は、欧州の銀行にとっては、おそらく200兆円規模(スペ
インのGDPの2倍)の債務カット、つまり損失です。

■6.ユーロ共同債の発行という方法はない

EU(欧州経済連合)では、ユーロ共同債の発行も俎上に上がっては、
ドイツの反対で、消えています。

共同債は、倒産する企業と、財務が健全な企業が合併し、共同で社
債を発行して、それを売り、倒産企業に必要な資金を与えることで
す。(注)債務の返済と利払いができないことが倒産です。

ドイツが、ギリシア、スペイン、そしてイタリアの債務を肩代わり
することと同じです。ドイツは、ここまで行うでしょうか。議会は、
拒否するでしょう。つまり、共同債の発行はできない。

共同債の発行で、ドイツがギリシア、スペイン、そしてイタリアの
債務(総額では400兆円)を片代わりすれば、ユーロは守れるでし
ょう。

しかしその代償で、ドイツは国民の金融資産400兆円を失います。
これに国民が黙っていることは、絶対にない。政府には不信任を突
きつけるでしょう。ということは、その政策は採れないということ
です。

■7.じゃ、どうなるか

共同債の発行がドイツの反対でできないとなると、
残される方法は、
(1)ギリシアとスペインのユーロ離脱と、
(2)続くイタリアに対しては、ECBによるユーロの増刷です。

ギリシアとスペインのユーロ離脱は、両国の対外債務200兆円規模
が、デフォルトし、英国を含む欧州の銀行の損失、米銀の損失にな
ることです。欧州の全銀行の自己資本は、100兆円程度しかありま
せん。

ここに200兆円の損失が生じると、欧州と米国の銀行は債務超過に
なり、資産・負債の清算をしなければならなくなります。これは、
ユーロと世界に、リーマン・ショックの2倍の信用恐慌を生みます。

これを避けるためは、ECBが不足する200兆円の資本を、印刷マネー
で拠出すること、つまり国有化になるでしょう。ちょうど東電のよ
うなものです。ユーロは、60円水準に暴落することになる。

▼最後の貸し手BIS

実態では、BIS(国際決済銀行)がその資本を出すこと、つまり、
欧州の全銀行の、BISによる買収になるかも知れません。

これは、BISが、一時国有化された長期信用銀行を買収したリップ
ルウッドと外銀のような「ハゲタカ・ファンド」になることです。

リップルウッドは、この長銀に、日本政府が不足していた7兆9000
億円の公的資金(資本)を投入したあと、7兆円のお土産(みや
げ)をもらって、買収したのです。長銀は、現在は新生銀行になっ
ています。リップルウッドは、株の再上場の利益を得ています。

長銀の買収に似たプロセスをとって、最後に笑うのは、世界の最後
の貸し手、つまり「各国中央銀行の上の中央銀行」であると自称す
る私的な資本のBISでしょう。BISは、保有する金を、傘下の中央銀
行に貸し付けています。

BISの資本は、前号(有料版598号)で述べたように、その資本では、
米国の民間3銀行が支配しています。(JPモルガン、ファースト・
ナショナル・バンク・オブNY、ファースト・ナショナル・バンク・
オブ・シカゴ・・・この三行の資本は・・・として首魁を遡れま
す)

3行にとっては、表面では損をし、最終的に儲ける一世一代の勝負
が、ユーロの債務問題だったように思えます。

本稿は、金融市場の認識を、時間軸では数歩進めて、書いています。
3年という、悠長な期間ではない。1年6ヶ月でしょう。金融市場の
認識が早ければ、2012年内でしょう。

銀行の決算に合わせ、四半期(3月、6月、9月、12月)に、事件が
起こりながら・・・

【後記:ユーロ崩壊と日本の輸出】
日本にとっては、ユーロの暴落から、米国住宅ローンのデフォルト
が原因だったリーマン・ショックの、約2倍の規模の経済的なショ
ックが襲うということです。

現在、輸出先ではユーロ17ヵ国を、米国より大きなお得意様とする
中国の輸出が急減しています。その中国への輸出が、対米より多い
のが日本です。

2011年では対中輸出が13兆円、対米は10兆円です。この対中輸出品
の主なものは、中国の内需用ではなく、中国で組み立てて欧米に輸
出する三角貿易用です。このため、中国の欧州への輸出の減少は、
日本からの中国輸出の減少を意味します。

中国にある日本の工場から欧州に輸出しても、GDP計算では中国の
輸出として勘定されています。

前FRB議長のグリーンスパンが書いた『ゴールドと経済的自由:
GOLD and ECONOMIC FREEDOM』を翻訳し、解釈しようかと思ってい
ます。

中央銀行による紙幣印刷で、密かに狙われることが分かるからです。
本人がドルを印刷する側に立ったとき、グリーンスパンは、自分が
書いた過去のマネーへの論考をどう考えていたのか?

金と交換できない紙幣を使うことは、経済的な自由でなく、政府・
中央銀行に、その価値をコントロールされることだと述べているの
です。