20160705 12:48 発信地:パリ/フランス

 

心の働きが免疫力を高めることは以前から知られていたが、今回はそのメカニズムの一部が解明されたと考えていいだろう。こうして科学が進歩してゆくと、医療は今のような科学的な物質移動の問題だけではなくて心の開放や悟りの平安などをもたらす技術になってゆくだろう。

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http://www.afpbb.com/articles/-/3092909?utm_source=yahoo&utm_medium=news

 

75 AFP】マウスの脳の快楽中枢を人工的に刺激すると免疫力が高まるとの研究論文が4日、英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に発表された。プラセボ(偽薬)の効力を説明する一助となる可能性のある結果だという。

論文の主執筆者で、テクニオン・イスラエル工科大学(Technion-Israel Institute of Technology)医学部のアスヤ・ロールズ(Asya Rolls)助教は「好ましい期待に関連する脳の部位を活性化させることが、病気に立ち向かう体の働きに影響を及ぼす可能性があることを、今回の結果は示している」と話す。

今回の研究成果が「病気を治すために脳の潜在能力を利用する新薬の開発につながる日が来るかもしれない」と、ロールズ助教は述べた。

有効成分を一切含まない偽薬であっても本物の薬だと信じて服用すると、人の脳の快楽をつかさどる報酬系を活性化できることは以前から知られていた。

ロールズ助教は、AFPの取材に「だが、これが肉体の健康に影響を及ぼす可能性があるかどうかは不明だった」と語った。

また、実際に免疫反応が強化されるとしても、その場合に免疫信号が体中に伝わる正確な仕組みも科学的に解明されていなかった。

ロールズ助教と研究チームは、マウスの脳の報酬中枢にある特定の細胞を刺激した後、そのマウスから採取した免疫細胞を致死性の大腸菌にさらして培養した。

論文によると、これらの免疫細胞は、細菌を殺傷する効力が通常の免疫細胞の2倍以上高かったという。

研究チームは次の実験で、これと同じ免疫細胞を別の複数のマウスに接種した。

30日後、この新たなマウス群も同様に、感染症の撃退に成功する確率が通常の2倍以上高かった。

 

■摂食と性行動

免疫を高める信号は「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」と呼ばれる脳の部位から発せられる。この部位には、気分を変える化学物質のドーパミンによって作動する報酬系がある。

マウスやヒトが、おいしい食事や性的接触による快感を近い未来に体験できると知ると、脳スキャン画像ではこの部位が明るくなる。

腹側被蓋野から発せられる免疫向上の指令は、危機的状況での急な反応に関与する交感神経系を経由して体中に送られ、細菌と闘う免疫反応を誘発することが今回の研究で分かった。

今回の実験で観察された関連性では、進化的圧力が重要な役割を果たしている可能性があると研究チームは推測している。

「摂食行動や性行動によって、個体は細菌にさらされる」とロールズ助教は説明する。「報酬系が活性化されると同時に免疫が高まるとすれば、進化上の利点がもたらされると考えられる」

研究の次の段階では、この因果関係を再現できると考えられる分子を見つけるためのマウス実験を実施する予定だ。これらの分子は、薬剤として利用できる可能性がある。

「これらは、新たな治療標的として使用できるかもしれない」と、ロールズ助教は指摘した。(c)AFP/Marlowe HOOD