低炭水化物食を嫌う医師もこれほどにエビデンスが蓄積してくると認めざるを得なくなり、かつ一般人の方々にも低炭水化物が健康的だということは流布してきていると思われる。
ただし、いまだに炭水化物さえ制限すれば焼肉食べ放題的な、愚かなことを言うものもいて臨床の現場ではいまだに混乱があります。
 実際に減量するからこそ効果があるのであって、摂取カロリーが減少しなければこの低炭水化物だけでは効果は低い。この減量自体が難しいのである。
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今月の内科学の専門ジャーナルに、糖質制限食・低炭水化物食による心血管リスク低下効果を示した臨床研究が報告されていました。(Ann Intern Med. 2014 Sep 2;161(5):309-18)

昨日に続いて、ダイエット法・減量法に関する研究です。
昨日のレビューの
糖質制限食・低炭水化物食も低脂肪食も減量には有効:メタ解析
では、糖質制限食も低脂肪食も同程度の効果とされていますが、
最新のデータから、減量だけではなくて、生活習慣病のリスクを考えると、糖質制限食が有用と考えられます。

従来、低脂肪食・低カロリー食が肥満に対する標準的な食事療法でした。
一方、この10年ほど、糖質制限食・低炭水化物食のエビデンスが集積されており、
多くの臨床試験によって、糖質制限食・低炭水化物食のほうが、低脂肪食・低カロリー食を上回る減量効果が示されています。

今回の研究では、糖質制限食・低炭水化物食による心血管疾患リスクへの影響が調べられました。
具体的には、ランダム化比較試験として、心血管疾患や糖尿病を有していない148名の男女を対象に、
・低炭水化物食(1日あたり40グラム未満):75名
あるいは、
低脂肪食(エネルギー比30%未満、飽和脂肪酸のエネルギー比7%未満):73名
の2群について12か月間の介入が行われました。

被験者は運動習慣をかえないように指示され、1日1食の低脂質食や糖質制限食の置き換え食が投与され、
定期的に栄養士によるカウンセリングも行われています。
低炭水化物食群60名、低脂肪食群59名が試験を完了しました。

12カ月の時点で、低脂肪食群よりも、低炭水化物食群のほうが、
より大きな体重減少(-3.5 kg [95% CI, -5.6 to -1.4 kg]; P = 0.002),
体脂肪量減少(-1.5% [CI, -2.6% to -0.4%]; P = 0.011),
総コレステロール/HDL比の減少、(-0.44 [CI, -0.71 to -0.16]; P = 0.002),
TGの減少(-0.16 mmol/L [-14.1 mg/dL] [CI, -0.31 to -0.01 mmol/L {-27.4 to -0.8 mg/dL}]; P 0.038)

HDL値の上昇、(0.18 mmol/L [7.0 mg/dL] [CI, 0.08 to 0.28 mmol/L {3.0 to 11.0 mg/dL}]; P < 0.001) が認められました。 以上のデータから、低脂肪食よりも糖質制限食・低炭水化物食のほうが 心血管リスク低下作用が示唆されます。 糖質制限食・低炭水化物食では、三大栄養素のバランスが高タンパク質・高脂肪食になるため、動脈硬化リスクを高め、心血管疾患の要因となるのでは、という批判があります。 ただし、糖質制限食・低炭水化物食は、良質のタンパク質と良質の脂質の摂取が推奨されており、焼き肉食べ放題、という食事ではありません。