サリノマイシンと転移性乳がんの幹細胞を選択的に攻撃する薬剤が開発されている。今までは抗がん作用を持つ薬の開発が盛んだったが、これからは幹細胞を攻撃することがメインの目標となる。
幹細胞を押さえ込むことが転移性がんの治療に効果的だからである。

つまり、通常の抗がん剤では転移を回避することが出来ずいずれ時間の問題で転移再発するからである。このことから一部では転移するがんは本当の悪性であるから治療しても意味がない。ということをいう医師も出てきている。しかし、この転移のメカニズムを阻止することが出来たら転移性のがんでも抑えることが可能ではないだろうか。

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2012/7/18

エーザイは、7月17日、米子会社のエーザイ・インクが、米Verastem社との間で、がん幹細胞を標的とするWntシグナル阻害剤に創出に向けた共同研究契約を締結したと発表した。エーザイは、この契約に基づき、Verastem社が開発中のポリエーテル系天然物VS-507(一般名:サリノマイシン)の類縁体を合成展開し、新規Wntシグナル阻害剤を創出していく計画だ。

VS-507は、Wntの共受容体であるLPR5とLPR6のリン酸化を抑制し、その分解を促進することで、Wntシグナルを阻害することが報告されている。Wntは、初期発生や形態形成、器官形成、出生後の細胞増殖・分化・運動などの制御に関わる糖たんぱく質だ。

エーザイは、同社が持つ天然物合成化学の創薬技術基盤を活用することで、VS-507の類縁体の合成展開を行う方針だ。なお、今回の共同研究で見いだされた新規化合物の権利はVerastem社が保有し、エーザイは事業化に関する優先交渉権を持つ。Verastem社が事業化した場合は、エーザイが売上高に応じたロイヤリティーを受け取ることになる。