思春期の脳がさまざまな恐怖を克服して行くことを脳科学が示している。確かに子供を見ていると、小学生低学年まではお化けを怖がり、一人でトイレに行くことも怖がり、行動も母親と一緒であるのだが、徐々に成長するにつれて友達と出かけるようになり、自分ひとりで暮らしたいと考えるようになる。

それが自立の過程だろうとおもう。それが脳内で扁桃体、海馬でおきていることである。これもまた人類に組み込まれた知恵だろう

恐怖の克服はしかし、大人になっても必要な機能である。大病を克服するのもそうだし、仕事上の挑戦にも恐怖感は伴ってくる。この、恐怖の克服が単に思春期に神から与えられた一時的な脳内ペプチドの働きでしかないならば、我々人間の自主性はどこにあるのだろうか。

病気の克服に関しても、この恐怖感の克服なくしては完全に克服することは困難だろう。やはり人間に与えられた最大の能力、思考する力、を鍛錬することが必要なのではないだろうか。

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【1月20日 AFP】脳は思春期に変化して子どものころの恐怖体験を抑圧するという、マウスを使った実験に基づく研究成果が、10日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された。若者が無謀な行動をする理由を知る手がかりになるかもしれない。

 研究をしたのは米国のコーネル大学(Cornell University)、ブラウン大学(Brown University)、ニューヨーク大学医学部(New York University School of Medicine)の研究者たち。恐怖に対する反応を調べるため、マウスが子どものうちに電気ショックと雑音を同時に与え、その後、その体験と似た状況に置かれたときに示す反応を観察した。

子ども、思春期、大人と3つの年齢層のマウスを比べた場合、恐怖で体をこわばらせる反応は、思春期のマウスが一番鈍かった。これは一定の状況に関連づけられた「文脈的恐怖」が抑圧されているからだという。

思春期のマウスの脳を調べると、恐怖体験を処理するとされる脳の2つの領域、扁桃体と海馬の活動のレベルが低かった。これは、思春期のマウスが恐怖を認識しないというわけではなく、子どもの大人のマウスの脳が送るのとは違う信号を発しているのだという。

論文では「文脈的恐怖の抑圧とシナプス活性は、マウスが思春期に入ると起こる。これは、扁桃体におけるシナプス活性の鈍化、海馬からの信号の減衰と関連をもつ一時的なもので、文脈的記憶は思春期初期には顕在化しないが、思春期を過ぎるとまた復活する」と説明している。

こうした恐怖感の薄さは親をいらだたせるかもしれないが、自分の限界を試しながらひとり立ちしようという思春期には適している。論文では「進化論的にいえば、思春期に文脈的恐怖が一時的に抑圧されるということは、環境に適応するうえで非常に有利かもしれない」と指摘している。

文脈的恐怖のレベルが高い思春期初期のマウスは、巣離れや行動半径の拡大、コロニーからの独立などの際に必要となる冒険的な行動に不適応を示す傾向がみられた。

脳が恐怖感を抑圧するメカニズムをさらに研究すれば、恐怖症や不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療に役立てられるかもしれないと研究チームは期待している。(c)AFP