肺がんリスクをビタミンDが低下する研究がある。ビタミンDは肺がんに限らずさまざまなガンのリスクを低下するが、ガンの幹細胞の正常化をもたらす研究も出てきている。

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今月の臨床栄養学の専門ジャーナル(電子版)に、女性において、ビタミンDサプリメントの摂取と、肺がんリスクとの関連を調べた疫学研究が、米国のグループから報告されていました。
(Am J Clin Nutr. 2013 Aug 21.)

ビタミンDには免疫調節作用や抗がん作用があることから、アンチエイジング医学の分野では、ベーシックなサプリメントとして、一日あたり1,000 IUから2,000 IUのサプリメント摂取が推奨されています。

先行研究では、ビタミンDは、特定のサブグループにおいて、肺がん予防効果を有することが示唆されています。
そこで、今回の研究では、女性において、ビタミンDの摂取と肺がんリスクとの関連が調べられました。

具体的には、前向きコホート研究として、1993年から2010年の追跡期間の閉経後の女性128,779名が対象となりました。(1771名の肺がん患者を含むWHI研究の被験者が対象です。)

12%の被験者が、実薬介入を受けています。
(1日あたり1,000mgのカルシウム+400IUのビタミンD3の投与。カルシウム/ビタミンDトライアルとして。)

食事調査およびサプリメントの利用状況が調べられ、ビタミンDなどの摂取量が測定されました。
解析の結果、まず、全被験者ではビタミンDと肺がんとの間に有意な相関は見出されませんでした。
次に、非喫煙者(過去に喫煙歴がない非喫煙者)では、ビタミンDの総摂取量が一日あたり400 IU以上において、肺がんリスクの有意な低下が認められました。

一日あたりのビタミンD摂取量が、100 IUの群に比べて、800 IU群では、肺がんリスクが63%低下していました。(HR: 0.37; 95% CI: 0.18, 0.77)

なお、ビタミンAの摂取量は、ビタミンDの摂取量や肺がんリスクとの関連に影響を与えていません。
ただし、カルシウム/ビタミンDトライアルでは、1日あたりのビタミンA摂取量が1000μg未満の女性において、肺がんリスク低下作用が見出されています。
(HR: 0.69; 95% CI: 0.50, 0.96; P-interaction = 0.09)

以上のデータから、閉経後の女性の中で、喫煙歴のない非喫煙者では、
ビタミンDの摂取と肺がんリスク低下との間に有意な相関が示唆されます。

今後、介入試験による因果関係の検証が期待されます。
ビタミンD3サプリメントは、費用対効果の高いベーシックサプリメントの一つですので、広く推奨できます。近年、ビタミンDは、骨の健康維持だけではなく、免疫調節作用や抗がん作用など、多彩な効果が示されています。

一般に、健康保持や疾病予防の目的で利用されるビタミンD3サプリメントの摂取量は、1日あたり
25マイクログラム(1,000IU)から50マイクログラム(2,000IU)です。

ビタミンDは、免疫調節作用や抗がん作用など、多彩な作用を有する脂溶性ビタミンの1種です。
多くの生活習慣病や慢性疾患、難治性疾患の患者群において、ビタミンD低値が示されており、ビタミンDサプリメントの臨床的意義が注目されています。

日本からの報告では、ビタミンDサプリメントのインフルエンザ予防効果が知られています。
また、さまざまな生活習慣病では、血中ビタミンD値が低いことが知られており、健康保持や疾病予防のために、ビタミンDサプリメントの摂取が推奨されます。

(欠乏症の予防ということでは通常の食事からでも補えますが、疾病予防という目的では、1日あたり1,000~2,000IUの摂取が必要であり、サプリメントを利用することになります。)

今日では、ビタミンD欠乏症の典型例のような疾患は少ない一方、血中ビタミンDの低値が広く認められることから、生活習慣病の予防やアンチエイジングを目的としたビタミンDサプリメントの利用が推奨されます。

日本人の間でも、ビタミンDの潜在的不足/欠乏が顕著になっています。たとえば、
日本人妊婦の90%がビタミンD不足
血中ビタミンD値が高いと大腸腺腫リスクが低い
というデータがあります。

DHCでは、ビタミンD3サプリメントを製品化しています。
ビタミンDサプリメントに対する効果には個人差がありますが、
臨床的には、ビタミンDサプリメントを1,000IU/日の用量で投与すると、血中25ヒドロキシビタミンD値が10ng/ml増加する、という報告もあります。

マルチビタミンのビタミンDはRDAのための設定ですので、別途、ビタミンDサプリメントの利用となります。