<PTSD>悪化の原因特定 名城大助教ら

毎日新聞 4月15日(月)22時33分配信

 強い恐怖を体験した時に発症する心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は、特定のホルモンが脳内で過剰分泌されて悪化する可能性があることを、米ルイジアナ州立大を中心とするグループがマウス実験で突き止めた。グループの一員で、15日に発表した名城大薬学部の間宮隆吉助教(薬品作用学)は「PTSD発症の仕組みの解明や治療の確立につながる」と話している。研究結果は米科学アカデミー紀要に掲載される。

 グループは、パニック障害に関連があるとみられているホルモン「コレシストキニン」がPTSDを悪化させる要因と仮説を立てた。遺伝子操作でこのホルモンが脳内に過剰分泌される特殊なマウスと正常なマウスを使って実験。両方のマウスに、人間の幼少期に相当する生後25日に強い電気ショック(トラウマ)、青年期に相当する生後2カ月にやや弱い電気ショック(トラウマを呼び起こすストレス)をそれぞれ与えた。その後、2度目のショックを与えた時のケージに再度マウスを入れると、特殊なマウスは正常なマウスに比べて長時間、「凍り付いて動かない」というPTSDに似た症状をみせた。

 一方、不安障害に関連があるとみられている他の4種類のホルモンを過剰に分泌するマウスで同じ実験をしたが、正常マウスとの違いは確認できなかった。間宮助教は「コレシストキニンの影響で幼少期のトラウマが成人後のストレスで呼び起こされることが分かった」と分析している。【花岡洋二】

 富山大学大学院の井ノ口馨教授(脳科学)の話 PTSDにホルモンが関係しているのだとすれば、新しい発見だ。PTSDについてはいろんな再現実験の手法があり、その中でもホルモンの効果が確認できれば治療などにインパクトのある成果になる。