分子標的薬であるタルセバは発売当時はがん細胞のEGFRのエルロチニブだけを阻害して副作用も起きない薬として大きな期待ともって迎えられた。しかし。実際副作用の問題は尽きることがない。
どころか、現在これらの分子標的薬の副作用には間質性肺炎などの致命的なものが多く起こることが分かっている。
結局薬で副作用もなく、がん治療を行うことはほぼ不可能だろう。
やはり自然療法と組み合わせた上で、IPTのように少量で抗がん剤を使う方法が最も効率的だろう。
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2012/07/01
報道事務局: Jason Bardi (415) 502-6397

肺癌の治療にタルセバを服用している患者は、いつ生じるかわからない耐性の問題にびくびくしている。つまり、タルセバを服用することによって最初は腫瘍が縮小したとしても、間違いなくいつかは腫瘍が再増悪する日はやってくるのである。そして、多くの患者にとって、その日はあまりにも早くやってくるのである。

現在、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)Helen Diller Family総合がんセンターの研究チームは、ヒトタンパク質であるAXLによりタルセバに対する耐性獲得が促進される、また、AXLを阻害することで、タルセバに対する耐性獲得が防止される可能性が示唆されることを発見した。

この発見はNature Genetics誌2012年7月1日号で発表されたが、これにより、タルセバとAXL阻害剤の組み合わせといった「プレシジョン・メディシン」(遺伝子異常等に基づいた精度の高い医療)の開発に結びつく可能性がある。

「実験的にはAXLの活性化を阻害すると、タルセバに対する耐性を克服できることを見出しました。これにより、新規のより効果的な治療薬への道が開かれます。」と、Trever Bivona博士(血液学・腫瘍学助教)は述べた。

実験において、Bivona博士が率いる研究チームが用いたAXL阻害剤は、臨床的に用いるのに必ずしも望ましい薬とはいえない。しかし、現在、研究チームは、Kevan Shokat氏(ハワード・ヒューズ医学研究所治験責任医師兼UCSF細胞・分子薬理学部門教授)と共同研究を行い、臨床試験に向けて、より効果の高いAXL阻害剤を開発している。

肺癌は癌死亡原因の第1位である

肺癌は、世界的に見て、癌死亡原因の第1位である。毎年、乳癌・結腸癌・前立腺癌で死亡した人々の合計よりも、多くの人々が肺癌で死亡する。肺癌により、米国で毎年150,000人超が死亡し、世界で約1,400,000人が死亡する。米国では、全肺癌患者の約85%は、診断から5年以内に死亡する。

大部分の症例はたばこの煙が原因である。しかし、他の原因として、石綿・化学物質・環境要因や遺伝的要因が含まれる。

肺癌の診断が難しい理由の1つは、早期には無症状のことが多いので、早期発見されないことが多いことが挙げられる。米国では、早期発見されるのは肺癌患者の約30%のみであるが、このために肺癌患者全体の生存率が低くなってしまう。

しかし、極めて早期に肺癌が発見された患者でさえも、楽観はできないのである。というのも、早期発見によって治癒率が非常に高くなる他の癌種と異なり、肺癌の場合はⅠ期であっても35%~45%の患者は術後5年以内に再発により死亡するのである。

肺癌に対する治療法は、肺癌の組織型・病期・所属リンパ節への転移の有無に基づいて決定されるが、いずれにしても手術や手術に放射線治療や化学療法を併用した治療が標準治療であることが多い。

タルセバはこの様な化学療法薬の1つである。タルセバは、エルロチニブとしても知られているが、上皮成長因子受容体(EGFR)と呼ばれる酵素を阻害することで、効果を示す分子標的薬である。研究チームは、AXLがEGFR阻害剤の効果から肺癌を「救出」することによって、タルセバに対する耐性獲得を促進することを発見した。

「AXLは、医薬品を設計する際の重要な標的となるキナーゼと呼ばれる、分子の1つです。」と、Bivona博士は述べた。タルセバなどの、現在既に臨床現場で使われている癌に対する分子標的薬の多くは、1つまたは複数のキナーゼを阻害することにより効果を示している。

本論文「Activation of the AXL kinase causes resistance to EGFR-targeted therapy in lung cancer(AXLチロシンキナーゼの活性化により、肺癌でEGFR標的薬に対する耐性が生じる)」(著者(以下、敬称略):Zhenfeng Zhang、Jae Cheol Lee、Luping Lin、Victor Olivas、Valerie Au、Thomas LaFramboise、Mohamed Abdel-Rahman、Xiaoqi Wang、Alan D Levine、Jin Kyung Rho、Yun Jung Choi、Chang-Min Choi、Sang-We Kim、Se Jin Jang、Young Soo Park、Woo Sung Kim、Dae Ho Lee、Jung-Shin Lee、Vincent A Miller、Maria Arcila、Marc Ladanyi、Philicia Moonsamy、Charles Sawyers、Titus J Boggon、Patrick C Ma、Carlota Costa、Miquel Taron、Rafael Rosell、Balazs Halmos、Trever G Bivona)は、Nature Geneticsウェブサイト上でアクセス可能である。

UCSFの他にも、本研究の著者は、ケース・ウェスタン・リザーブ大学(クリーブランド市)、コロンビア大学(ニューヨーク市)、蔚山大学校(大韓民国ソウル特別市)、メモリアル・スローン・ケタリング癌センター(ニューヨーク市)、イェール大学、Germans Trias i Pujol大学病院(スペインバルセロナ市)、およびUSP Dexeus大学研究所(スペインバルセロナ市)と提携している。

本研究は、助成金K08 1K08CA154787・P01 CA129243を介して、米国国立衛生研究所による支援を受けた。また、Uniting Against Lung Cancer研究賞、National Lung Cancer Partnership Young Investigator 賞、La Caixa財団による助成金、米国癌協会研究奨学金、および韓国健康技術研究開発プロジェクトを介して、追加支援を受けた。

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渡邊岳 訳
田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学教授)監修