世界保健機関がディーゼル排気をヒト発癌性物質に分類

世界保健機関の一機関である国際癌研究機関(IARC)は、6月12日にディーゼルエンジンの排気ガスをヒトに対して発癌性が認められるグループ(グループ1発癌性物質)に分類した。この決定は、多くの証拠により、ディーゼル排気と肺癌リスク上昇との関連性が認められるというIARCのワーキンググループの考えに基づいている。ワーキンググループは、限られた証拠ではあるが、ディーゼル排気曝露と膀胱癌との関連性も発見した。

IARCは、ワーキンググループの評価の要約を6月18日付Lancet Oncology誌に発表した。

1988年、IARCは、ディーゼル排気はヒトに対して発癌性がおそらくあるグループ(グループ2A発癌性物質)に分類し、1998年、機関の諮問委員会は関連性の優先調査を求めた。今回改訂されたこの分類は、NCIおよび米国国立労働安全衛生研究所が中心となって行い、最近発表された研究「ディーゼル排気の鉱山労働者への影響に関する研究(DEMS)」を含むいくつかの大規模なヒトを対象とした試験結果に基づいている。

「ディーゼル排気と肺癌の関連性において、最も有力な証拠の一部を提供することによって行われた再評価で、われわれのデータが重要な役割を果たしているのは喜ばしいことである」とNCIの癌疫学・遺伝学部門の労働・環境疫学分野の主任であり、DEMSの主任研究者であるDr. Debra Silverman氏は言っている。

「ディーゼル排気の潜在的に有害な影響に関連した極めて多くの科学的証拠があった。数十の疫学研究、数百には及ばないまでも多くの実験動物を用いた基礎研究、そして、基礎的な細胞内プロセスとディーゼル排気やその成分がそれらにどのように影響するのかを調査した、文字通り何千もの分子生物学的またはその他の研究がある」とIARCワーキンググループの長Dr. Christopher Portier氏は記者会見で話した。

「われわれの役割は科学的証拠を要約し、それを公共の場に届けることであり、曝露の許容範囲や他の規制に関する問題に取り組むことではない」とIARCの長Dr. Christopher Wild氏は言う。「その証拠資料を提供するが、他の要因とのバランスをどれだけとるかは、まさに国内または国家間の規制当局次第である」と付け加えた。

これらの問題は特に汚染を引き起こす旧式のディーゼル技術がいまだに広く使われている、排出規制がおぼつかない発展途上国で重要な問題であろう、と結論づけた。