食事療法には色んなものがあり、それを提唱する医師にも色んな人がいる。
ある人は自分の体験を元に野菜中心がよいといい、ある人は漢方医学に基づいて体を冷やす食べ物は駄目だという。
しかし、科学的な証拠を持つ食事療法が日本で語られたことはないのではないだろうか?ある程度データが出ているものもあるが、食事療法というほどのものではなく、食材に関してのデータがあるのみである。
これからの医学が科学であるならば、今までの経験から出てきた推奨や漢方医学というもともとエビデンスがはっきりしない統計的なものではなく、きちんとした科学的データで語られるべきものだと思う。
その点でMDアンダーソンのこの文献は面白い。
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人気の食事療法で癌は防げるか?/MDアンダーソンがんセンター
MDアンダーソンがんセンターの専門家が語る栄養学的見解
MD
アンダーソンがんセンター
2011
411どんな食事療法でも癌の発症リスクを低減させるというわけではないと語るのは、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの専門家らだ。同センターの栄養学専門家らは、一般に行われている食事療法を良いものと悪いものに分けた。

「体重が多すぎたり肥満体なら、体重を減らせば癌の発症リスクも減らせます」とMDアンダーソン臨床栄養部門の上級臨床栄養士(senior clinical dietitian)であるDaxaben Amin氏は述べた。「ですが気をつけてください。体重を減らそうとすることは、癌のような病気と闘うために必要な栄養も身体に与えないということなのです」。

良好な栄養摂取はすぐに身につくものではない
「”推奨リスト”に入る食事療法は、長い目で見た変化を促すものです」とAmin氏は言う。「あらゆる食品群のなかから、さまざまなものをどうやって選ぶかということでもあります」。

地中海式食事
地中海式の食事療法は「推奨」。なぜなら、地中海式食事は人々に生涯を通じて良好な栄養摂取に対する取り組みを促すからである。

この食習慣は、癌や心疾患の予防に用いられる多くの食事指針の基準をも満たしている。その特徴は:
・果物、野菜、ナッツ、その他の植物由来の食物を毎食ごとに多く取り入れている。
・バターでなくオリーブオイルやキャノーラ油などの健康的な油脂を選んでいる。
・塩ではなくハーブやスパイスで味付けをしている。
・牛肉・羊肉やアルコールの摂取量が少ない。
・1週間に最低2回は魚や鶏肉を食べる。

全身的アプローチ
この種の食事療法で重視されているのは、毎日3回多めの食事をとるという通常のスタイルではなく、6~7回小まめな食事をとることである。これが「推奨」とされるのは、下記に示す癌予防効果が期待できるからである:
・果物、野菜、全粒の穀類を少なくとも1日の食事の半分に取り入れている。
・脂肪分の少ないタンパク質の摂取を増やす。
・脂肪分の多い食事を控える。
・一日のなかに運動の時間を作る。

極端な食事制限を行うダイエットは悲惨な結果に陥る
「短期間で変化を目指そうとする食事療法では、一日に身体が必要とする栄養が取れないことが多いです」とAmin氏は言う。「このような食事療法が”悪い”ダイエットです」。

グルテン・フリー・ダイエット(グルテン抜き食事療法)
グルテンとは小麦、ライ麦、大麦、オーツ麦といったほとんどの穀類に含まれるタンパク質である。グルテン・フリー・ダイエットは今流行っているダイエットの1つである。グルテン・フリーに走ると、全粒穀類を含む食事を食べなくなる。しかし、セリアック病でもない限り、グルテン・フリーを目指すべきではない。

その理由として、全粒穀類には繊維質をはじめ、各種ビタミンやミネラルが多く含まれており、癌の発生につながる恐れのある細胞障害を防ぐからである。

ノンカーボ・ダイエット(炭水化物ぬき食事療法)
「徹底的な”ノンカーボ”(炭水化物摂取制限)を謳う食事療法を行ってはいけません」とAmin氏は言う。

Amin氏によれば、健康な体重を維持するためには炭水化物の摂取量を一定限度にとどめる必要があるものの、炭水化物の摂取を完全に断つことは、われわれの身体に必須な最低限のエネルギー源の摂取も断つことになる。

さらに悪いことには、野菜をはじめ、果物、全粒穀類および豆類といった癌と闘ういくつかの重要な炭水化物までも身体から取り上げることになる。
「ノンカーボに走るより、炭水化物を賢く選びましょう」とAmin氏は述べる。「ケーキ、クッキー、その他の加工食物や精製穀類や精製糖ではなく、全粒穀類を食べましょう」。

中庸が成功の秘訣
健康的な体重の維持は生涯を通じて取り組むべきことである。そして、長い目で見た成功の秘訣は中庸である。

「台所の棚には、MDアンダーソン推奨の癌予防食材リスト*1www.mdanderson.org/focused)掲載のいろいろな癌予防食品を入れておいてくださいね」とAmin氏は語った。

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窪田 美穂 訳
酒井 伸茂 (薬剤師) 監修
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原文

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*1 [参考]リンク先

癌予防のための食材リスト/MDアンダーソン

癌予防につながる食べ物をぜひ台所に!

今度買い物に行くときはこのリストをもち、癌と闘うための食材を購入しましょう。

大切なのは、果物、野菜、豆、そして全粒穀物を中心とした食事をとることです。

野菜・果物
・さつまいも
・ブロッコリー
・カリフラワー
・レンズ豆
・芽キャベツ
・チンゲン菜(できれば有機栽培)
・ケールまたはコラード(できれば有機栽培)
・豆類 (新鮮なもの、または冷凍)
・コスレタス
・枝豆
・トマト(缶詰の場合は食塩不使用のもの)
・にんにく
・梨
・オレンジ
・赤または黒ぶどう(輸入品の場合、できれば有機栽培)
・生または冷凍のベリー類
タンパク質
・鶏または七面鳥の赤身
・鮭やハリバ(注:大型の白身魚)、レッドフィッシュ、鯛などの脂身の少ない
・豆腐
・黒豆、赤いんげん、小豆 (低ナトリウム)
乳製品
・スキムミルク
・低脂肪チーズ
・卵または代用卵
・ひよこ豆 (低ナトリウム)
穀物
・玄米またはワイルドライス
・全粒粉パスタ
パン
・全粒粉使用のパンやトルティーヤ、丸パン
シリアル
・ブランフレーク
・オートミール
スナック
・ポップコーン
・全粒粉トルティーヤチップスまたはクラッカー
・フムス (注:ひよこ豆のペースト)
・アーモンド(味付けしていないもの、無塩)
調味料
・ケチャップ
・オリーブオイル
・キャノーラ油
・低脂肪または無脂肪ドレッシング
香辛料
・ウコン
飲み物
・黒ぶどうのジュース(果汁100% 砂糖不使用のもの)
・緑茶または白茶 (ティーバッグまたはリーフ)

内田彩香 訳