おいしい物には気を付けよう。ポテトチップスとかポテトフライは皆が大好きな食品である。

 

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食品の発がん性物質「アクリルアミド」摂取抑えるには

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毎日新聞

=Getty Images

 ジャガイモなどの野菜やコメなどの穀類を高温で調理すると発がん性物質の「アクリルアミド」が発生します。健康へのリスクは意外に高いため、できる限り摂取を抑える工夫が必要です。食生活ジャーナリストの会代表、小島正美さんのリポートです。【毎日新聞経済プレミア】  ◇焼き菓子やコーヒーにも  アクリルアミドの発がん性が大きな話題となったのは2002年のことだ。アクリルアミドはもともと、トンネル工事の水漏れ防止など工業用に使われる化学物質として知られていたが、スウェーデン政府が、ジャガイモのスナック菓子など広く親しまれている食品から高濃度で検出されることを公表し、世界に衝撃を与えた。  これを受けて、日本の農林水産省などが調べたところ、ポテトチップス、フライドポテトなどジャガイモを使った菓子のほか、クラッカー、クッキー、いりごま、かりんとう、ほうじ茶、コーヒー、コロッケ、ギョーザなどさまざまな食品に含まれていることが分かった。  アクリルアミドは、食品に含まれるアミノ酸の一種のアスパラギンと果糖・ブドウ糖などが120度以上の高温調理で化学反応を起こして生成される。簡単に言えば、炭水化物を含む食材を高温で調理すると発生しやすい。身近な例では、トーストを焼くときにできる焦げ茶色の部分にアクリルアミドが含まれている。  その毒性は強く、マウスなどの動物実験の結果、どんなに少量でも遺伝子を傷つける発がん性物質と分かった。「これ以下なら、がんが発生しない」という明確な量が設定できないため、どんなに少量でもそれなりにリスクがあることになる。  ◇日本人は「できる限り低減に努める」  農水省が調べた食品に含まれるアクリルアミドの濃度は1キログラムあたり約10~1000マイクログラム(マイクロは100万分の1の単位)。では、日本人は毎日、どれくらいのアクリルアミドを摂取しているのだろうか。  内閣府食品安全員会のリスク評価(16年)によると、日本人が平均的に摂取しているアクリルアミドの量は体重1キロあたり1日あたり0.24マイクログラム。体重50キロの成人なら、1日で12マイクログラムだ。この摂取量が人の健康に及ぼすリスクについて、同委員会は「健康リスクの懸念がないとは言えない。できる限り低減に努める必要がある」との評価結果を出した。  こうした食品のリスク評価を考えるうえで、重要な物差しとなる「暴露マージン(MOE)」という考え方がある。暴露とは一般には「秘密をあばく」ことをいうが、リスク評価の世界では「摂取する」ことを指す。  MOEは、動物実験でがんを10%増やす体重1キロあたりの摂取量が、人間が実際に食べている量の何倍にあたるのかを示す数値で、MOE値が高いほど「余裕度」が大きく安全な食品ということになる。  食品安全委員会によると、MOE値が1万以下ならなんらかの対策が必要で、アクリルアミドの値は1000前後。このため「低減に努める必要」があるというわけだ。  ◇「煮る・ゆでる」で避けよう  ちなみに他の発がん性物質のMOE値をみよう。国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子・安全情報部長によると、海外の研究では、日本でも一時、話題になった食べ物の焦げに含まれる化学物質の「ベンゾ(a)ピレン」の値は意外にも1万~700万とアクリルアミドよりも安全の余裕度が高い。逆に、コメなどに含まれる無機ヒ素の値は一桁から数十と余裕度はかなり低い。一方、不安だと騒がれやすい残留農薬は、人が摂取する量は極めて少ないため、MOE値は大きく、そのリスクはアクリルアミドよりもはるかに低い。  ただし、必要以上にアクリルアミドを怖がる必要はない。アクリルアミドは、食材を長時間高温で揚げたり、炒めたりすることでより多く発生しやすい。同じ魚の料理でも、焼いたり揚げたりすると生成量は増える。その意味では、たまには煮たり、ゆでたりする調理を心掛けるといった程度の注意は持ちたい。農水省は、一般向けの小冊子「安全で健やかな食生活を送るために――アクリルアミドを減らすために家庭でできること」を作製し、家庭での実践を呼び掛けている。