先日NHKの番組で、遺伝子のスイッチについて解説していた。
その実験はオリーブオイルとアーモンドの摂取を6か月続けることでがん抑制遺伝子のスイッチが入るという実験だった。がん遺伝子は200程度の数があるのだが、そのうち100個以上のがん遺伝子が癌抑制方向に変化したという説明だった。
癌治療の現場では、ステージがⅣになるとなかなか治療効果が出ないことが多く、免疫療法や高濃度ビタミンC点滴を行っても著名な改善はないことが多い。最近ではPD-1阻害薬であるオブジーボやキートルーダの発売によって、免疫の状態を改善できる治療法が出てきている。この働きを何とか食事で作れないものかと思う。
食事のとり方で遺伝子が変わり、まるでPD-1阻害薬と同じように免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになればこれほどいいことはない。
番組の中では食事にオリーブオイルとアーモンドを加えて、半年で遺伝子の変化が出ていた。食事に普段から注意することは癌の予防にも効果がある事は確かに証明されている。
一歩進んで、がん治療にも食事の変化が利用できればいいなと思う。そして、患者さんも食事に関する良い情報を知り、毎日の食事の実践においてがん予防につとめてほしいとおもう。
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http://www.dhcblog.com/kamohara/archive/1611
今月の腫瘍学の専門ジャーナル(電子版)に,オリーブオイルによる膀胱がんリスク低下作用を示した調査研究が,ベルギーと英国のグループから報告されていました。
(Eur J Cancer. 2010 Oct 12)
一般に,西洋食は,動物性食品に由来する飽和脂肪酸を多く含み,膀胱がんのリスクを高めることが示されてきました。一方,地中海食には,オリーブオイルが含まれており,健康増進・疾病予防効果が知られています。
そこで,今回の研究では,動物性食品の摂取,オリーブオイルやその他の食事に由来する脂質の摂取による,膀胱がんリスクとの関連が検証されました。
具体的には,ベルギーの膀胱がんに関する症例対照研究として,200例のがん症例と,386例の対照に関して,データ解析が行われています。
年齢,性別,喫煙,職業上の暴露,カロリー摂取量などの交絡因子による補正が行われた結果,オリーブオイルの摂取と膀胱がんとの間に,用量依存的な,有意な負の相関が見出されたということです。(つまり,オリーブオイルの摂取が多いと,膀胱がんのリスクが低くなるという関係です。)
(三分位の最低群に比べて,最高群では53%のリスク低下,中位群では38%のリスク低下が見出されています。)
また,比較的わずかな有意差として,チーズの摂取が多いと,膀胱がんリスクが高くなるという相関も示されました。(OR: 1.53; 95% CI: 0.95-2.46; p-trend=0.08)
その他の食事因子に関しては,有意差は見出されていません。
以上のデータから,オリーブオイルによる膀胱がんリスク低下作用が示唆されます。脂質代謝におけるリノール酸神話は崩れていますが,現在のエビデンスを俯瞰的にみるとき,良質の脂質として,オメガ3系脂肪酸とエクストラバージンオリーブオイルの効果が示されています。
オリーブオイルは,単価不飽和脂肪酸というだけではなく,最近の研究では,エクストラヴァージン(バージン)オリーブオイルに含まれるファイトケミカル・ポリフェノールによる抗酸化作用の有効性も示されています。