マイクロ RNA のバイオマーカーとしての応用
マイクロRNAは体液に必ず含まれており、がんの発見にも役立つものだ。このマイクロRNAの働きとしては、遺伝子の発現を抑制することで癌の発生を抑制している。だからマイクロRNAが体内で減少していると癌抑制遺伝子の働きが低下してがんが発生したりする。血管増殖因子の抑制因子が減少すると血管増殖が活性化すると言った具合である。
研究ではこれらのマイクロRNAを正常化するための物質があるかどうか?生薬にその働きがるかどうかが盛んにおこなわれている。つまり、マイクロRNAをコントロールすることで癌を抑制しようという創薬の発見である。
この遺伝子を左右する働きはエピジェネテイックと言い、これからの医学の大きなトレンドになるだろう。
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http://www.abcam.co.jp/epigenetics/focus-on-mirna-biomarkers-1
マイクロ RNA(miRNA)をさまざまな疾患のバイオマーカーとして用いる研究が進んでいます。miRNA のバイオマーカーとしての可能性と最近の知見をご紹介します。
なぜ miRNA がバイオマーカーとして適しているのか?
疾患の予測や診断、症状の観察などの指標として利用されるバイオマーカーの重要性は改めて述べるまでもありません。早期の診断が治療指針の決定に重要な疾患や、現時点で診断法が確立していない疾患の中には適切なバイオマーカーが存在しないものもあり、そうした疾患での必要性も叫ばれています。
近年、小分子非コード RNA(small noncoding RNA; small ncRNA)がバイオマーカーとして有用であるとの報告が増え、世界中の研究者から注目を集めています。マイクロ RNA(miRNA)においても、その研究が進むにつれ、疾患によって固有の mRNA 発現パターン示すことが明らかになってきており、miRNA のバイオマーカーとしての利用に期待が高まってきています。
また血液、尿、唾液といった、生体からの採取が容易な体液中に安定して存在していることも、miRNA がバイオマーカーとして適している点の一つです。この mRNA は現在 qPCR やアレイなどさまざまな方法での測定、解析が試みられています。
バイオマーカーとしての miRNA と前立腺癌
バイオマーカーとしての miRNA の研究が最も進んでいるのはがんの分野で、がんのタイプと miRNA 発現パターンの関連についての解析が盛んに行われています。がんの診断、治療、経過観察治療においては、がんのタイプをできるだけ早く判別することが重要となるためです。
がんの種類によって miRNA 発現プロファイルが固有のパターンを示すことは、miRNA のバイオマーカーとしての有用性につながる重要な発見でした(Mitchell et al., 2008)。例えば miRNA が前立腺癌の診断に応用できる可能性について、2 報の論文が発表されています。
前立腺癌においては腫瘍が、即時の治療が必要な悪性度の高いものであるか、または現時点でその必要はないのかを判断することは、従来の方法では簡単ではありませんでした。Mihelich らは前立腺癌患者の血清より miRNA を採取して解析し、14 種類の miRNA の発現パターンが、悪性度が高い腫瘍の患者と悪性度が比較的低い腫瘍の患者では異なることを見出しました(Mihelich et al. 2015)。これを利用することにより、即時の治療が必要のない患者に対する過剰な治療を防ぐことができる可能性があります。
また前立腺癌については、miRNA の解析が骨転移の判定に有用との報告もあります。前立腺癌の骨への転移はよく認められ、患者の生存率と密接な関係があります。3 種類の miRNA、miR-15、miR-16、miR-21 の量と前立腺癌の骨への転移の頻度が、高い関連性を持つことが報告されています(Bonci et al., 2015)。
バイオマーカーとしての miRNA と肺癌
miRNA のバイオマーカーとしての研究、応用が進んでいる癌としては肺癌もあります。早期の検出が難しい癌の一つである肺癌において、miRNA をバイオマーカーとして用い、喫煙者などの肺癌予備軍から、本当に肺癌になる人をスクリーニングすることが試みられています。
一つは Continuous Observation of Smoking Subjects の肺癌スクリーニング・プログラムより参加者を募り、血中 13-miRNA のバイオマーカーとしての有用性を調べた試験で、ここでは 74.9% の正確性で肺癌を発見することができました(Montani et al., 2015)。もう一つは Multicenter Italian Lung Detection の一部として行われた試験で、ここでは 87% の感度と 81% の特異性で肺癌を発見することができました(Sozzi et al., 2014)。このような有望な結果から、miRNA をバイオマーカーとして利用した肺癌の早期診断の実用化は近づいていると言えます。
がん以外への応用
miRNA のバイオマーカーへの応用が研究されているのは、がんだけではありません。さまざまな循環器疾患や神経疾患において、疾患固有の発現パターンが報告されています(Min & Chan, 2015; Rao et al., 2013)。
特に研究が盛んに行われている疾患の一つはアルツハイマー病です。この疾患に対する予防法や治療薬についてはさまざまな方向から研究が進められていますが、その中の大きなテーマの一つに早期診断法の開発があります(Blennow et al., 2015; Framminella et al., 2015)。最近の研究で、脳脊髄液(CSF)における miRNA のパターンが、アルツハイマー病患者と健常者で違いがあることが明らかになりました。3 種類の miRNA について比較したところ、95.5% の正確性でアルツハイマー病患者を同定することができたと報告されています(Denk et al., 2015)。
今後の展望
これまで挙げてきたもの以外でも、さまざまな疾患について miRNA をバイオマーカーとして利用するための試みが盛んに行われています。このような研究、探索を進めるに当たっては、多種類の miRNA について多くのサンプルを同時に測定、解析できるようなアッセイ系を利用するのが効率的です。
アブカムの Multiplex Circulating miRNA Assays は、このような用途に最適なキットです。血清や血漿などの体液サンプルから、RNA 精製を必要とせずに miRNA を検出できる点も大きな特長です。
References
- Blennow K, Dubois, B Fagan AM, Lewczuk P, de Leon MJ, Hampel H (2015). Clinical utility of cerebrospinal fluid biomarkers in the diagnosis of early Alzheimer’s disease. Alzheimers Dement 11, 58–69.
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