パーキンソン病の方にはコエンザイムQ10が不足していることは明らかなようだ。その欠乏を補充したら症状に改善がみられるかどうかが問題である。今回の研究で体内に不足がなかったグルタチオンの点滴で振戦や歩行障害が改善することも分かっているので、体内での不足と症状には別の関連があるかもしれない。

 

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http://www.dhcblog.com/kamohara/archive/2253

今月の神経科学の専門ジャーナルに、パーキンソン病におけるコエンザイムQ10欠乏を示した臨床研究が報告されていました。 (J Neurol Sci. 2012 Jul 15;318(1-2):72-5) コエンザイムQ10は、①抗酸化作用、②ATP(エネルギー源)産生作用を介して健康保持や疾病予防に働きます。 もともと体内で合成される成分ですが、生活習慣病や加齢によって減少するため、アンチエイジング分野で広く利用されているサプリメントです。 また、さまざまな疾病において、内在性コエンザイムQ10の低下が報告されてきました。 例えば、神経変性疾患であるパーキンソン病では、 病態生理において活性酸素による酸化障害の関与が示唆されており、 抗酸化物質による臨床研究も試みられています。 さて、今回の研究では、パーキンソン病患者における内在性コエンザイムQ10が調べられました。具体的には、2004年から2008年にかけて、パーキンソン病患者22名と、 対照群88名の2群について、検証されています。 (なお、本研究は、グルタチオン、コエンザイムQ10、セレン、ビタミンE、αリポ酸含有抗酸化剤による介入試験のためのデータです。) 解析の結果、対照群に比べて、パーキンソン病患者群では、コエンザイムQ10値が有意に低値でした。(OR: 4.7-5.4; 95% CI: 1.5-17.7; P=0.003-0.009) ビタミンE、セレン、αリポ酸、グルタチオンについて両群間に差は認められていません。 コエンザイムQ10欠乏の割合は、対照群に比べて、パーキンソン病群において有意に高値でした。(32-36% vs. 8-9%; P=0.0012-0.006) 以上のデータから、パーキンソン病では、コエンザイムQ10欠乏が顕著であり、抗酸化状態が末梢での病態マーカーになりうることが示唆されます。 今後、コエンザイムQ10介入によるエビデンスの構築が期待される分野です。 なお、予備的な臨床研究では、1日あたり最大1,200㎎のコエンザイムQ10をパーキンソン病患者に投与したデータが知られています。 コエンザイムQ10には、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。 還元型CoQ10のほうが、酸化型CoQ10よりも体内で利用されやすいと考えられます。 (酸化型CoQ10は、体内に吸収された後、いったん還元されてから、利用されます。) コエンザイムQ10に関するこれまでの研究の多くは、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)を用いています。 したがって、一般的には、生活習慣病の予防やアンチエイジング目的に関して、酸化型CoQ10のユビキノンの摂取で十分な効果が期待できます。 一方、特定の疾患に対して用いる場合、あるいは、体内の生理機能が低下している高齢者の場合には、還元型CoQ10の利用が推奨されます。