シリコンバレーダイエットの肝はMCT(中鎖脂肪酸)とコーヒーの効用である。

いずれも脂肪燃焼と抗酸化、抗炎症という健康のキーワードを抑えている。

FIAFというたんぱく質が絶食の際に、脂肪の燃焼を促進し脂肪の蓄積を防ぐ働きがあるのだ。

また、MCTオイルもコーヒーも腸内環境に変化を及ぼし、脂肪燃焼の促進と蓄積の抑制を行うのようである。

ダイエットの本質は低炭水化物と高蛋白質そして、このコーヒーとMCTなのだろう。

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http://diamond.jp/articles/-/78172

「コーヒーと脂肪」が最強に痩せる組み合わせ

 

シリコンバレーの有名ハッカーが、自分の体を「ハック」し尽くして発見した、食にまつわる真実とは? 低炭水化物、低カロリー、菜食主義……15年間、30万ドルを投じて世界中の食とダイエットを研究しつくし、あらゆる食事法の「痩せる効果」「健康効果」「頭をよくする効果」をすべて検証、自らもIQを20ポイント上げ、50キロ痩せた「完全無欠」の食事メソッド! 全米の食生活を変えたベストセラー『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』から、内容の一部を特別公開する。

パフォーマンスを最大化する「ベストの朝食」とは?

僕が初めてバターのパワーを知ったのは、2004年、チベットのカイラス山に近く人里離れた地域の、海抜5580メートルの高地で出会った小柄な女性からだ。零下23℃の薄い空気で冷えきった体でゲストハウスによろよろと入っていったら、伝統的なヤクのバター茶、あのクリーミーな一杯をふるまわれて、生き返った心地になったのだ。

飲んでも飲んでも飽きなかった。僕の中のバイオハッカーが問いかけた。

 こんな空気が薄い場所なのに、これを飲んだらなぜ、とても元気になるんだ? テントで生活していて荷物は軽くすべき遊牧民族が、あえて重いブレンダーや手動の攪拌機を持ち運ぶのはどうして?」

これらの疑問は「完全無欠(ブレットプルーフ)コーヒー」のレシピ誕生に不可欠の要素になった。

帰国してから紅茶を淹れてバターと一緒にブレンダーにかけてみたが、それはただのあぶらぎった紅茶でしかなかった。チベットのお茶では何か別のことが起こっていたのは明らかだ。地元の中国系小売店で最高級茶を買ったが、それでも記憶にある魔法の効果は得られない。そこで肝心なのはバターのほうかどうか確かめようと、最寄りのグルメ食品店へ出かけ、全世界のブランドバターを片っ端から買いあさった。

当たりだった。

逐一試していった結果、秘訣は、グラスフェッド牛の無塩バターを使うことだった。幸運にも地元の農家から入手できる人もいるかもしれないが、そうでなければ「ケリーゴールド・ピュア・アイリッシュ・バター」(米国、欧州連合)やニュージーランド産「アンカー・バター」(アジアの大部分とオーストラリア)などが目的にかなう。100%グラスフェッドバターが望ましいが、手に入らない場合は、「ブレス産バター」他AOP(原産地呼称保護)認証のものなど、飼料まで厳しく管理され、できるだけ牧草飼料の割合が高い高品質のバターが良い。

僕はアンチエイジングの研究から、ココナッツオイルはとても健康的だと知っていたので、ココナッツのミルクとオイルを紅茶に加える実験もしたが、これでは紅茶の風味が消されてしまう。そこで紅茶を僕の大好物のコーヒーに切り替えた。コーヒーは紅茶よりもココナッツオイルの風味と合った。

そして最終的にたどり着いたレシピは、コーヒーにMCTオイル(ココナッツから抽出した中鎖脂肪酸オイル)大さじ12杯と、良質の無塩バターまたはギー大さじ12杯を加えること。

材料を混ぜ合わせたら、これまで味わったなかでも最高にクリーミーで、最高においしくて、パフォーマンスを最大化するコーヒーができあがった。「完全無欠コーヒー」だ。僕はもう7年以上も、毎日必ず1杯の完全無欠コーヒーで一日を始め、これが与えてくれるエネルギーと脳パワーを利用して体をハックするかたわら、自らのキャリアを切り拓き、人生のあらゆる分野で成功しつつある。

このコーヒーは脳を復活させ、食物への渇望から解放してくれた。しかも同じことが何万人もの人たちにも起こっている〔訳注:バターが入手不可の場合、ココナッツミルク大さじ4杯とMCTオイル大さじ12杯で代用することを著者は推奨している(体重65キロほどの人の朝食の目安)〕。

 

カフェインが脳を守る

完全無欠コーヒーを飲んでいた僕は、運動せずに14000キロカロリー以上の食事の脂肪を増やそうとしたときでも、瘦せた体をキープできた。なぜこんなことが可能なのか、僕は徹底的に解明しようと決心した。

コーヒーの1つ目の有益な成分は、カフェインだ。カフェインはどんな供給源から摂っても、エネルギーを高めるだけにとどまらない。脳内の炎症を防ぐことで、認知機能の衰えを軽減し、アルツハイマー病の発症リスクを低下させる。

イリノイ大学のグレゴリー・フロインド医学博士によると、「神経変性疾患に伴う脳の炎症を活性化する新しいシグナルを発見したが、カフェインがその活性化を阻害するようだ」。また、健康な人のインスリン感受性をカフェインは高める。これは持続的な減量にとって非常に重要なことだ。

どんなコーヒーを飲んでも、短期的にも長期的にも脳に影響が及ぶ。コーヒーが気分に与える短期的な効果は、セロトニンとドーパミン活性の変化によるものだろう。これに対し、気分に長期的に影響すると思われるメカニズムは、抗酸化性および抗炎症性に関連しているようだ。

コーヒーは作り方もあなたの健康とパフォーマンスに影響を及ぼす。コーヒーに含有される油脂(カーウェオールとカフェストール)は独特の強力な抗炎症性物質であり、酸化ストレスとDNAのダメージを防ぐ。フレンチプレスや金製フィルター、エスプレッソマシンなど、金属のフィルターで淹れると、これら貴重なコーヒーオイルが守られ、体内で働いてくれる。

また、コーヒーに加えるバターやオイルを、ただ混ぜるだけでなく、溶かし合わせることも大切だ。というのも、バターやオイルを溶かすとミセルという状態に分解され、脂肪をエネルギーに変換するようになるからだ。胆汁からも生成されるミセルだが、多ければ多いほど脂肪が使われやすくなる。つまり、バターをコーヒーにブレンドすることが、脂肪をエネルギー源とする体の働きを助けるのだ。

バターの包み紙をはぎ、スニッカーズみたいにかじりつつコーヒーを飲んでも、結果は同じにならない。知れたことだ──僕は実際やってみたんだから!

 

「腸内細菌」を飢えさせると、脂肪が燃える

あなたがハッカーだとしよう。新しいコンピュータに侵入したはいいが、同業者に先を越され、そこはすでに支配されていた。あなたは自分のコントロールシステムを設置し、相手ハッカーがシステムを荒らすのを防ぐ措置をとりたい。じつは、この相手ハッカーというのが腸内細菌だ。腸内細菌はシステムを乗っ取って、食物への渇望を起こさせ、不自然なほど多くの余分な脂肪を体に蓄えさせる。

ヒトの体は、脂肪の燃焼と貯蔵をコントロールするよう精緻に調整されたシステムである。肝臓が、絶食誘導脂肪因子(FIAF)というタンパク質を生成する。FIAFの役割は、体に脂肪を貯蔵させるリポ蛋白リパーゼという酵素を阻害することだ。肝臓は必要に応じて適量のFIAFを生成し、FIAF濃度が高いときに余分な体脂肪が燃やされる。

問題は、腸内細菌もFIAFを作っていて、自らの目的のために操ることだ。腸内細菌はあいにく高脂肪・高糖質食を摂っているときにFIAFを抑制し、脂肪を燃やすよりむしろ蓄えるように働くと考えられている。もっとも、腸内細菌はどれも悪玉というわけじゃない──正しい種類が正しく働くかぎり、体に良いものだ。ただし、大量すぎたり悪い種類がいると、肥満につながりかねない。

幸いにも、この相手ハッカーを出し抜く方法はある。腸内細菌はでんぷんや糖質に「飢えた」とき、空腹になる。空腹になった細菌はFIAFを生成し、体脂肪を燃やしてくれるのだ。しかし糖質やでんぷんが供給されるとFIAFの生成がストップし、脂肪が蓄えられていく。

 

体内の「瘦せ型」細菌にえさをやる

MCTオイル、なかでも炭素数が最小のカプリル酸(C8)は腸内細菌叢にプレッシャーをかけるので、特にファスティング(断食)中にこれを摂取すれば、脂肪を貯蔵しようとする腸内細菌を妨げることができる。コーヒーに含まれるポリフェノールもまた、瘦せている人に多く見られるバクテロイデス門の細菌のプレバイオティクスとして働く。この細菌はサプリでは増やせないから、えさを与えなければならない。

コーヒーと脂肪を摂ることで、すべての腸内細菌をいったん抑制したあとで「瘦せ型」細菌にえさを与えて増殖させることができる。これが実際、僕自身の腸の分析結果と、完全無欠ダイエット実践者から報告されたユーバイオーム社の検便結果に見られたことだ。

彼らの体内では、瘦せることに伴うバクテロイデス門の細菌は平均よりも多く、太ることに関連するファーミキューテス門の細菌は少なくなっていた。最適な健康状態のためには両方なければならないが、これらの割合の変化が、エネルギーレベルと体重を管理する能力とに大きな影響をもたらす。

ラット実験で、コーヒーと高脂肪食(体に良くない脂質も含めて)を組み合わせたところ、体重、体脂肪、肝臓中性脂肪、エネルギー補給が減ったという研究がある。さらに、コーヒーは、望ましい身体組成を促し、ファーミキューテス門とバクテロイデス門の割合を最適化するのにも役立った。短鎖脂肪酸の供給を改善もしたが、これも腸に良いことだ。この研究では、ラットにインスリン抵抗性ができたが、これは長期間にわたって超低炭水化物ダイエットをしている人に見られる現象でもある(完全無欠ダイエットでは、少なくとも1週間に1度は適量の炭水化物を摂ることで、この問題に対処している)。

コーヒーに加えるミルクをバターに置き換えると、体に良いことがいくつかある。コーヒーに含まれ、パフォーマンスを手助けする抗酸化物質ポリフェノールの一つが、クロロゲン酸と呼ばれるものだ。ミルク、ハーフ&ハーフ(牛乳とクリーム半々)、クリームなどを入れると、乳タンパク質のカゼインをコーヒーに加えることになり、クロロゲン酸は3.4倍も生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)が低下してしまう。

カゼインは発酵バターにはほとんど、ギーにはまったく含まれない。すなわち、加えるものをミルクやクリームからバターに切り替えれば、あなたのコーヒーの抗酸化物質は3.4倍に増えるのだ! また、すでにご承知のとおりバターには酪酸塩も含まれているから腸が清められ、脳の炎症がただちに低減される。

完全無欠コーヒーにさらにココナッツのエキスやMCTオイルを加えれば、独自のメリットが生まれる。ただしMCTオイルは、様子を見ながら、ゆっくり加えていくように。急に大量に加えすぎると腹がゆるんで、完全無欠ダイエット実践者が「悲惨なパンツ」と俗にいう事態に陥りかねないからだ。