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臨床栄養学の専門ジャーナル(電子版)に、ベジタリアン食・ビーガン食によるヒト腸内細菌叢への影響を調べた臨床研究が、ドイツのグループ(University Hospital, Tübingen)から報告されていました。
(Eur J Clin Nutr. 2011 Aug 3.)

植物性食品を中心とした食事による生活習慣病予防効果が知られています。
作用メカニズムとして、脂質構成の相違、タンパク質の種類、ファイトケミカルの量といった機序が考えられています。

腸内細菌叢(腸内フローラ)への作用では、動物性脂肪や動物性食品の摂取が多いと、悪玉菌が増加し、
植物性食品が多いと、善玉菌が増加することも示されています。
(肉食・動物性脂質やたんぱく質の摂取が多いと、便が悪臭を生じます。)

腸内細菌は、整腸作用以外にも免疫調節作用があり、体内では最大の免疫担当器官です。
さて今回の研究では、ベジタリアン食と非ベジタリアン食による腸内細菌叢への影響が検証されました。
(なお、ベジタリアン食は「野菜食」ではなく、ベジタリアンは「野菜人」ではありません。
一般的な定義は、獣肉類を含まない食事/摂取しない人、です。)

具体的には、ベジタリアン(n=144)、ビーガン(n=105)、非ベジタリアン(肉類を摂取する対照群、年齢や性別を一致)を対象に、嫌気性菌や好気性菌などの測定が行われています。

解析の結果、
対照群に比べて、ビーガン群では、
Bacteroides spp., Bifidobacterium spp., Escherichia coli and Enterobacteriaceae spp.
が有意に低い値でした。(それぞれP=0.001, P=0.002, P=0.006, P=0.008)

(一方、E. coli biovars, Klebsiella spp., Enterobacter spp., other Enterobacteriaceae, Enterococcus spp., Lactobacillus spp., Citrobacter spp. and Clostridium sppには有意差なし。)

また、ベジタリアン食群では、ビーガン食群と対照群の間の数値が示されています。
なお、全菌数には有意差は示されていません。
その他、対照群に比べて、ベジタリアン食とビーガン食摂取群では、有意に低い便のpH値が示されました(P=0.0001)。

便のpH値は、E. coli とEnterobacteriaceaeの数に有意に比例します。
以上のデータから、ベジタリアン食およびビーガン食では、腸内細菌叢の全菌数を変化させることなく、菌の種類・構成に影響を与えることが示唆されます。