妊娠中に葉酸サプリメントを摂ると小児の自閉症リスクが低下する 

葉酸は不思議なサプリメントである。妊娠中に不足すると奇形が増えるし、不足すると大腸がんのリスクも上昇する。補給するとリスクは減少する。取らねばならないと言っても良いと思う。

野菜には100gあたりの葉酸の量が多い順にモロヘイヤ、パセリ、ブロッコリー、ほうれん草、アスパラガス、ねぎ、小松菜、シソ、ニラ、かいわれだいこん、とうもろこし、カリフラワー、カボチャなどである。
豆類では枝豆、ソラマメ、大豆、あずき、納豆、いんげん。
海藻類では、焼き海苔、味付け海苔、岩のり、昆布、ひじき。
果物では柚子、イチゴ、アボカドなどである。

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今月の米国医師会ジャーナルに、妊娠中の母親の葉酸サプリメント摂取と、その子供の自閉症リスクとの関連を調べた研究が、ノルウェイのグループ(Norwegian Institute of Public Health)から報告されていました。(JAMA. 2013 Feb 13;309(6):570-7)

葉酸はビタミンB群の一つです。
妊娠初期に不足すると、小児の発達障害を生じ神経管欠損症のリスクを高めることから、日本でも、妊娠中の葉酸サプリメントの利用が推奨されています。

妊娠初期の葉酸サプリメントの摂取と、子供の神経管欠損症以外の脳神経系への関係は明らかではありません。
そこで、今回の研究では、妊娠中の葉酸サプリメントの摂取と、その小児の自閉症(自閉症圏障害, 自閉症スペクトラム障害、ASDs)リスクとの関連が調べられました。

具体的には、ノルウェイ母子コホート研究として、2002年から2008年にかけて生まれた小児85,176名を対象に、(3.3歳から10.2歳まで。平均6.4歳)2012年3月末までの追跡が行われました。

葉酸サプリメントについては、妊娠時(最後の月経周期から受胎を計算)の4週間前から8週間後にかけての葉酸サプリメントの利用が調べられています。

解析の結果、追跡期間終了時に、270名の小児がASDsと診断されました。
114名が自閉症性障害(autistic disorder)、
56名がアスペルガー症候群、
100名がPDD-NOS(非定型自閉症、特定不能の広汎性発達障害)
と診断されています。

母親が葉酸サプリメントを摂取していた群では、その小児における発症率は0.10% (64名/61,042名)でした。
一方、葉酸サプリメントを摂っていなかった群では、発症率は0.21% (50/24,134)と2倍以上になっています。

母親による葉酸サプリメントの利用によって、自閉症リスクは39%低下していました。(OR;0.61, 95% CI, 0.41-0.90)
なお、アスペルガー症候群とPDD-NOSについては有意な相関は見出されていませんが、検出力不足であることが考えられます。

以上のデータから、妊娠初期における葉酸サプリメントの摂取は、小児の自閉症リスク低下と有意に相関することが示唆されます。今後、因果関係の検証、作用機序の解明が期待される分野です。
葉酸は、妊娠初期において重要ですので、妊娠がわかってから摂取するのではなく、妊娠を計画している時点で摂り始めるのがポイントです。

成人の場合、生活習慣病、特に動脈硬化性疾患に対する葉酸サプリメントの効果が知られています。
また、大腸がん抑制など抗がん作用も知られています。