血清インスリン、グルコース、インスリン抵抗性指標、そして前立腺癌リスク

この研究からもインスリン抵抗性と前立腺がんの関連が予想される。
つまりは血糖値との関連は不十分であっても血糖値をコントロールするインスリンホルモンの値が癌リスクと関連していることが示されている。

がん細胞が高血糖を好み、かつ血糖降下剤であるメトホルミンが癌幹細胞を攻撃することからも血糖値を上げるような食事や嗜好は控えるようにするべきである。
同時にインスリン分泌が過剰となるような食生活、生活習慣は改めるべきである。

ちなみに、当院では糖尿病の患者さんに食事指導をおこなった場合、きちんと守れる患者さんはほぼ例外なくHBA1cは6.5以下になり、多くは5台と下がってくる。
正しい食事制限が以下に大事であるかを患者さん自身も考えてほしいと思う。

最終的に治癒するのは薬ではなくあなた自身の治癒力なのだから。

 

2009年9月27日
http://www.cancerit.jp/1191.html

Serum Insulin, Glucose, Indices of Insulin Resistance, and Risk of Prostate Cancer.
J Natl Cancer Inst. 2009 Aug 21. [Epub ahead of print]
Albanes D, Weinstein SJ, Wright ME, Mannisto S, Limburg PJ, Snyder K, Virtamo J.
Affiliations of authors: Nutritional Epidemiology Branch, Division of Cancer Epidemiology and Genetics, National Cancer Institute, Bethesda, MD (DA, SJW); Department of Pathology, University of Illinois at Chicago College of Medicine, Chicago, IL (MEW); Department of Chronic Disease Prevention, National Institute for Health and Welfare, Helsinki, Finland (SM, JV); Division of Gastroenterology and Hepatology, Mayo Clinic, Rochester, MN (PJL); Information Management Services, Inc, Silver Spring, MD (KS).

背景:インスリン様成長因子の細胞分裂促進作用と成長促進作用は前立腺癌発症に関与すると考えられているが、血中インスリン値と前立腺癌のリスクとの直接関係については全く明らかになっていない。

方法:われわれはフィンランド人男性のAlpha-Tocopherol, Beta-Carotene Cancer Prevention Study(アルファ・トコフェロール, βカロテン癌予防研究)コホートでの事例‐コホート研究における前立腺癌の発生に対する血清インスリン値、血清グルコース値、およびインスリン抵抗性の代替指標(すなわちインスリンとグルコースのモル比とインスリン抵抗性のホメオスタシスモデル評価 [HOMA-IR])の関係を評価した。前立腺癌患者100例とより大きなコホートの前立腺癌を有しない400名を対象に試験した。空腹時血清は診断の5-12年前に採取された。インスリン濃度は二重抗体免疫化学ルミノメトリーアッセイで測定し、グルコース濃度はヘキソキナーゼアッセイで測定した。オッズ比[OR]として相対リスクを多変量ロジスティック回帰モデルで推定し、すべての統計的検定は両側検定で行った。

結果:診断される平均9.2年前に罹患群から採取された空腹時血清インスリン値は、比罹患群より8%高く、インスリンとグルコースのモル比、HOMA-IRはそれぞれ10%、6%高かったが、これらは統計学的に有意な差ではなかった。インスリン値が第2から第4四分位範囲の試験対象者ではインスリン値が第1四分位範囲の試験対象者と比較して、インスリン値の上昇が前立腺癌のリスク増加と統計学的に有意な相関を認めた(R = 1.50, 95%信頼区間 [CI] = 0.75-3.03; OR = 1.75, 95% CI = 0.86-3.56; OR = 2.55, 95% CI = 1.18-5.51; それぞれ第2から第4四分位範囲のインスリン値; P(trend) = .02)。類似したパターンが最大四分位範囲と最小四分位範囲でHOMA-IRにも認められた(OR = 2.10, 95% CI = 1.03-4.26; P(trend) = .02)。グルコース値ではリスクがさまざまで一貫性は認められなかった(P(trend) = .38)。インスリン値と前立腺癌リスクとの間の相関は、体脂肪の低い男性と肉体労働が少ない男性でより強かった。前立腺癌の粗発症率は、空腹時血清インスリン値の最低四分位範囲で100,000人年あたり154例の前立腺癌発症であったのに対し、最高四分位範囲で100,000人年あたり394例の前立腺癌発症であった。

結論:正常範囲内での空腹時血清インスリン値(グルコースではなく)の上昇は前立腺癌リスクの上昇と相関すると考えられた。

PMID: 19700655

平 栄(放射線腫瘍科) 訳