アバスチン、スーテントは乳癌幹細胞を増加させる/ミシガン大学

 一時は夢の薬とも言われた薬が徐々にその欠点を暴かれてきたというのが正解だろうか?
これらの分子標的薬は主に、がん細胞の新生血管の成長を阻害する働きをするのだが、この研究では新生血管を阻害する際に起こるがん細胞の低酸素状態が癌を活性化するということが分かってきた。

今から100年前にオットー・ワールブルグによりノーベル賞を受けた理論が今も正しかったことをうかがわせるではないか。

「癌細胞の特異性は低酸素を好み、グルコースだけに依存する細胞である」

 

その細胞に低酸素環境を与えて良いはずは無いし、血糖値をあげてよいことは無い。

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http://www.cancerit.jp/15987.html

2012年2月12日

アバスチン、スーテントは乳癌幹細胞を増加させる

研究結果から乳癌に対する抗血管新生療法の限界を説明

 

ミシガン大学総合がんセンターの研究者らが実施した新しい研究によると、血管の成長を阻害する癌治療は、マウスにおける乳癌幹細胞数を増加させることが判明し、これらの薬剤が生存期間を延長させない理由を説明できそうだ。

 

アバスチンやスーテントなどの薬剤は乳癌治療に有効なものとみなされてきた。しかし、これらの薬剤は腫瘍を縮小させ癌進行に至る期間を延長させるものの、その効果は持続せず、最終的に癌は再び増殖し広がっていく。

 

「本研究により、アバスチンなどの血管新生阻害剤は乳癌女性における腫瘍再発までの期間を遅延させるが、患者の生存率に影響を与えないという臨床試験結果を説明しうる。われわれの結果を臨床に適用し、治療を効果的に行うならば、現在われわれの研究室で試験中の治療法のように、これらの薬物と癌幹細胞阻害薬を併用することが必要であろう」と、本研究著者であるミシガン大学総合がんセンター長の Max S. Wicha医師は述べた。

 

研究者らが乳癌発症マウスを対象にアバスチン(ベバシズマブ)およびスーテント(スニチニブ)を投与したところ、両薬物とも血管新生といわれる過程において血管の形成と成長を阻害することで効果を発現した。しかし、彼らはこれらの薬物を投与された腫瘍は、腫瘍内にわずかに存在する、癌の増殖、浸潤を誘導し、しばしば標準治療に耐性を生じさせる癌幹細胞をより増殖させることを発見した。これら薬物による治療後、腫瘍の形成に関わる癌幹細胞数および腫瘍中の癌幹細胞の割合ともに増加した。

 

研究者らは癌幹細胞が増加したのは腫瘍低酸素といわれる、細胞の低酸素環境に対する細胞の反応が原因であることを発見した。そして癌幹細胞を活性化させる低酸素に関与する特異的経路を確認した。

本研究の結果は米国科学アカデミー会報誌(Proceedings of the National Academy of Sciences)早版オンライン版に掲載された。

 

FDAは最近、乳癌に対するアバスチンの承認を撤回したが、本薬剤の他の癌種に対する使用承認は継続されている。その承認取り消しは、アバスチンからベネフィットが得られるのは短期間であり、患者の乳癌はすぐに再発しその癌は以前に増してより浸潤性が高く全身に転移することを示した臨床試験結果に対処したものである。よって総合的に本薬剤は患者の生存期間を延長させないと判断された。

 

現在の研究では、血管新生阻害薬に癌幹細胞阻害薬を併用することで治療効果が高まる可能性が示唆されている。研究者らはこの治療法についてマウスで試験中であり有効な初期データを得ている。

 

乳癌統計値:米国癌協会によると今年1年で米国人209,060人が乳癌と診断され40,230 人が死亡するとみられている。

 

共著者:Sarah J. Conley氏、 Elizabeth Gheordunescu, 氏、 Pramod Kakarala氏、 Bryan Newman氏、Hasan Korkaya氏、Amber N. Heath氏、Shawn G. Clouthier氏(以上ミシガン大学)

資金提供:乳がん研究財団(Breast Cancer Research Foundation)、米国国立衛生研究所、トーブマン研究所( Taubman Institute)

情報公開: Wicha氏はファイザー社およびOncoMed Pharmaceuticals社の顧問でありOncoMed Pharmaceuticals社の株式を保有する。

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武内優子 訳
原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院) 監修
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