統合治療最前線~カンザスでの発表、高濃度ビタミンC点滴療法のQOLに与える影響。もし医師がガンになったらどの治療法を選ぶのか?

 

今年の10月7,8日。カンザス州ウイチタにおいて点滴療法研究会の会長、柳澤厚生先生が研究発表された。ここ4年ほど前からアメリカ、カナダの学会にはよく参加しているが日本人の研究発表を聞くのは初めてのことである。

発表した研究は「高濃度ビタミンC点滴療法のがん患者QOLに及ぼす効果」と 

「医師が癌になったときに選ぶがん治療」である。

まず高濃度ビタミンCが癌患者のQOL(生活の質)を向上することは昔から言われていたが、論文としては今まで韓国の医師会雑誌への発表があるのみであった。今回は我々が所属する点滴療法研究会の発表であった。

患者数は45人。そのうち8人以外は標準治療を受けている。高濃度ビタミンC点滴療法を受け始めてから2週間後、4週間後に全般的健康度を測定すると前が44、2週間後が55、4週間後が62であった。つまりこれは総合的な健康度スコアが上がっていることを示している。また、自覚症状尺度のうち疲労感、嘔気、痛み、息苦しさ、不眠、食欲不振、便秘、について優位に改善が見られた。

今までビタミンCが抗がん剤の副作用を軽減するとか、体調が良くなるとか言われていたが、この研究によってある程度それが証明されたと考えられるだろう。我々も自信を持って治療に当たっていけることとなった。

嬉しいことである。

 

次に「医師が癌になったときに選ぶがん治療」であるが、この研究は我々点滴療法研究会の会員とその知人の医師、歯科医師に対して行われたアンケート調査である。そのため、統合医療の知識が通常の診療だけを行っている先生方よりも豊富である点を考えなければならない。ある程度統合医療をよしとするバイアスがかかっているとみてよい。

しかし、結果は非常に興味深いものであった。

1、医師、歯科医師が「自分で抗がん剤が唯一の選択肢の場合、ファーストラインの抗がん剤を選択する」と回答したのは62%であった。一方、38%は選択しないと回答した。

2、「抗がん剤を選択する」と回答した医師、歯科医師の46%が「もしファーストラインの抗がん剤が無効あるいは副作用で続けることができない場合、セカンドラインの抗がん剤を選択する」と回答、一方、54%は「選択しない」と回答した。

3、92%の医師、歯科医師が標準治療を受ける受けないに関わらず、「標準治療以外のがん治療を受ける」と回答した。

4、腫瘍専門医はがん患者に治療としての「化学療法」を提案する時に、「化学療法を受けない」選択肢も提示するべきである。また、腫瘍専門医は癌患者に高濃度ビタミンC点滴や免疫療法などの非標準治療についても提示すべきである。

 

このアンケート調査結果を見てどうだろうか?ちなみにファーストラインとは抗がん剤で延命効果を認められるものを示している。また、セカンドラインとは抗がん剤で延命効果が認められないものを示している。

 つまり抗がん剤で延命効果がないと証明されている抗がん剤を投与することに関して医師は自分たちは54%はやらないと言っており、92%の医師は高濃度ビタミンC点滴療法や免疫療法を行いたいと考えている、のである。

 

だったら自分たちが選択するように患者さんにも標準療法以外の治療法もありますよというべきだという結論である。まさしくこれこそ統合医療の医師の考え方ではないだろうか。

ちなみに統合医療を否定している大学病院の医師たちも多くは抗がん剤以外の非標準療法を求めており、私のクリニックへも大学教授の関係者が治療について相談に来ていたことがある。人間だれしも可能性がある治療法を求めていることには変わりがないのである。

また、副作用だけが出て延命効果がないことがわかっている抗がん剤を患者さんにはほぼ100%薦めている今の医療は間違っているのではないだろうか?自分たちはいろんな治療法も試しているのに、患者さんに情報を与えないということは決して倫理的ではないと、私は思う。