乳がんの予防効果が示されている。

しかし、そのメカニズムははっきりとは分からない。

ただ、現象としては予防効果があるということである。

 

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英国医学ジャーナルに、EPAやDHAなどオメガ3系必須脂肪酸の摂取量が多いと、乳がんリスクが低下するという関係を示したレビューが報告されていました。
(BMJ. 2013 Jun 27;346:f3706.)

EPADHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。
最近では、オメガ3系脂肪酸による心臓病の二次予防効果@メタ解析
という研究が報告されました。

さて、今回のレビューでは、オメガ3系必須脂肪酸あるいは魚類の摂取と、乳がんリスクとの関連について検証されています。

具体的には、前向きコホート研究を対象にしたメタ解析および系統的レビューとして、
医学論文データベース(PubMedとEmbase)から2012年12月までの論文が対象となりました。
26報から、乳がん患者20,905名、21コホート研究から883,585名の参加者が抽出され、
11報の乳がん患者13,323名、参加者687,770名について、魚類の摂取が調べられ、

17報の乳がんイベント16,178例、参加者527,392名では、オメガ3系必須脂肪酸の摂取量が調べられました。

また、12報の乳がんイベント14,284例、参加者405,592名では、α-リノレン酸の摂取量が調べられています。

解析の結果、魚類のオメガ3系必須脂肪酸(EPAやDHA)の摂取量が多い群では、
少ない群に比べて、乳がんリスクが14%低いことがわかりました。
サブグループ解析では、BMIで補正した研究よりも、補正を行っていない研究のほうが、
魚由来のオメガ3系必須脂肪酸の摂取と、乳がんリスク低下との間に顕著な負の相関が見出されています。
(補正した研究では10%のリスク低下傾向、補正していない研究では26%のリスク低下。)

また、用量依存性も示されており、オメガ3系必須脂肪酸の摂取量が1日あたり0.1グラム増えるごとに、
あるいは、1日あたりの摂取エネルギー比で0.1%増えるごとに、乳がんリスクが5%低下する、
という関連が認められました。

なお、α-リノレン酸との関連は見出されていません。
以上のデータから、魚由来オメガ3系必須脂肪酸(EPAやDHA)の摂取量が多いと、乳がんリスクが低下すると考えられます。

EPADHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。
EPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸では、抗炎症作用を介した動脈硬化抑制作用による生活習慣病予防効果が知られています。

オメガ3系脂肪酸の抗炎症作用のメカニズムとして、以前は、オメガ6系との比率からアラキドン酸カスケードへの機序が考えられていました。
現在では、これに加えて、EPAとDHAの代謝物自体に抗炎症作用があることがわかっています。

臨床研究におけるオメガ3系脂肪酸の投与量は、1日あたり数百ミリグラムから4グラム程度です。
また、EPA:DHA=2~3:1の割合です。日本人の食事摂取基準では、EPAおよびDHAの摂取量を一グラム/日としています。

EPAもDHAも、どちらも健康維持や疾病予防に重要です。
一般に、DHAは脳の栄養素、EPAは血管の栄養素といえるでしょう。