グルコサミンによる変形性関節症での最終糖化産物受容体(RAGE)発現抑制効果

 

グルコサミンは軟骨を作るのではなくて、関節軟骨の滑膜炎、骨髄炎を抑制する作用があることが確認された。

テレビなどでは軟骨が再生するかのように宣伝され、近所の頭の固い医師からはなんの効果もないと無知ゆえの断言をされて患者さんは困っていることだろう。

 

真実は意外な場所にある。

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リウマチ学の専門ジャーナル(電子版)に、グルコサミン投与による変形性関節症での最終糖化産物受容体(RAGE)抑制および滑膜リモデリングへの働きを示した臨床研究が報告されていました。(Rheumatol Int. 2013 Feb 27.)

グルコサミン(塩酸塩・硫酸塩)は、変形性膝関節症の予防や症状改善効果、膝関節置換術リスク低減効果が示されており、十分なエビデンスが構築され、関節対策のサプリメントとして広く利用されています。
(日本では、GAIT1のネガティブデータが短絡的に引用されることが多く、混乱していますが。)

作用メカニズムは、経口摂取されたグルコサミンが、細胞内外の情報伝達物質として作用し、関節軟骨に起因する症状の改善(滑膜炎および骨髄炎の抑制と改善)に働く、と理解されています。
(初期の研究でイメージされていたような、関節軟骨の成分を経口摂取することで、その成分が関節の修復に働く、という機序とは異なってきています。)

さて、今回の研究では、変形性膝関節症患者において12週間のレジスタンス運動によって生じる骨格筋でのコラーゲンやRAGEへの変化に対して、消炎鎮痛剤(NSAID)とグルコサミンの働きが調べられています。

 

AGEs(終末糖化産物、advanced glycation end-products)というのは、
ブドウ糖(グルコース)などの還元糖とタンパク質、脂質、核酸といった生体の分子との間の非酵素的糖化反応で生成され、慢性炎症や糖尿病といった疾患や老化に伴い蓄積します。
RAGE(receptor for advanced glycation endproducts)は、最終糖化産物(AGEs)の受容体として同定されました。

慢性炎症や糖尿病では、RAGEの発現亢進が見出されています。
具体的には、55-69歳の変形性膝関節症患者を対象に、
・NSAID投与群、
・グルコサミン投与群、
・偽薬投与群の3群について、12週間のレジスタンス運動トレーニングの前後で、筋肉(外側広筋)のバイオプシーが行われ、筋肉中のコラーゲンとRAGEの評価が行われました。

解析の結果、トレーニング前と比較して、各群とも、コラーゲンⅣ型の増加が示されました。
グルコサミン投与群では、コラーゲンⅠ型の減少が認められました。
偽薬群においてのみ、トレーニング後に、RAGE量の有意な増加が見出されています。

グルコサミン群と偽薬群の比較でも、偽薬群における有意な増加が認められました。
以上のデータから、変形性膝関節症患者において、グルコサミンの投与は、レジスタンス運動時に生じる筋肉中でのRAGE蓄積を抑制し、慢性炎症に伴う病態を抑えると考えられます。

変形性関節症に対しては、グルコサミンやコンドロイチンといったサプリメントに加えて、
適正体重の維持や運動習慣も大切です。

また、抗炎症作用を有するウコン(クルクミン)やピクノジェノールによる効果も知られています。

今回の研究から、グルコサミンは、OA患者での運動時にもシナジーが期待されます。
グルコサミンは、変形性膝関節症などの関節疾患に広く利用されているサプリメントです。

作用メカニズムとして、アミノ糖であるグルコサミンが関節軟骨の成分であることから、構成成分を経口摂取することによる直接的な修復機構が想定されていました。

一方、最近の研究では、グルコサミンやコンドロイチンは、情報伝達機構における調節因子であることが示されており、変形性膝関節症に対する改善効果のメカニズムとして、構成成分自体を直接摂取する作用というよりは、シグナル伝達物質を摂取することによる作用が考えられています。

膝OAなどの変形性関節症に対して、
サプリメントでは、グルコサミンやコンドロイチンが最もエビデンスが豊富であり、欧州の学術団体EULARではグレードAの推奨になっています。