リコピンと魚油による大腸がん抑制作用

ガンへの食事療法の期待は高まっている。抗がん剤で根治できないガンに対して食事療法や免疫を高める生活を推奨することは重要である。

短期的な治療は抗がん剤が最も効果的だが、長期的には免疫低下を引き起こし、場合によっては緩和治療への道を進むこととなる。

やはり長期的視点に立って治療を行うべきである。
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今月の分子栄養学の専門ジャーナル(電子版)に、リコピンと魚油による大腸がん抑制作用を示した基礎研究が報告されていました。(Mol Nutr Food Res. 2012 Sep 7.)

 

トマトには、カロテノイド系ファイトケミカルの1種であるリコピン(リコペン)が含まれています。
赤色色素のリコピンは、抗酸化作用や抗がん作用を有しており、疫学研究では、肺がんや大腸がん、前立腺がんのリスク低減作用が知られています。

また、先行のin vitro研究では、リコピンとEPA(オメガ3系脂肪酸)の併用投与によって、ヒト大腸がん細胞(HT-29)の増殖が相乗的に抑制されたというデータがあります。
そこで、今回の研究では、大腸がんモデルを用いて、リコピンと魚油の投与による抗がん作用が検証されました。

具体的には、大腸がん異種移植マウスに対して、リコピンと魚油投与後の腫瘍増殖に対する影響がウエスタンブロットや免疫組織学的所見で検証されています。

解析の結果、
担癌マウスでのリコピンと魚油の投与によって、

大腸がん細胞抑制作用、
p21(CIP1/WAF1) やp27(Kip1)といった細胞周期関連分子への阻害作用、
β-catenin、cyclin D1、c-Mycといったタンパク質発現の抑制作用が見出されたということです。

これらの抑制作用は、MMP-7, MMP-9, COX-2,PGE2などの腫瘍増大に関与する分子の抑制を介しているというデータも認められています。

以上のデータから、リコピンや魚油による大腸がん細胞の増殖抑制作用が示唆されます。
今後、臨床的意義の検証が期待される分野です。

EPADHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。