乳がん患者のストレスホルモンはヨガで減少する
ヨガにかかわらず腹式呼吸でも同様の効果があることがわかっている
ぜひやってみるべきだ。
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心身運動と単純なストレッチ運動の効果を比較した初めての研究をMDアンダーソンがんセンターが実施
MDアンダーソンがんセンター
2011年5月18日

テキサス大学のMDアンダーソンがんセンターの最新の研究によれば、放射線療法を受けている女性乳癌患者に関して、ヨガには患者の疲労を抑える以上の特有の効果があるという。
単純なストレッチ運動によって疲労は改善するが、他方、ヨガの呼吸、姿勢、瞑想、リラクゼーション方法を治療計画に取り入れたヨガに参加した患者らにおいては、身体機能の改善、健康状態の改善、コルチゾール(ストレスホルモン)値の低下などが認められ、さらには癌の経験の中でその意義をうまく発見することができる傾向にあった。

MDアンダーソンの教授でまた統合医療プログラムの責任者でもあるLorenzo Cohen博士が米国臨床腫瘍学会(ASCO)第47回年次総会で来月口頭発表する予定であるこの研究結果は、心身面のケアには癌患者の健康に対して良い影響があるという昔から信じられている考えの科学的な妥当性を示すための現在も進行中の試みの、最新の結果である。本研究は、インドのBangaloreにあるインド最大のヨガ研究協会、Swami Vivekananda Yoga Anusandhara Samsthana の協力のもと実施された。

本研究では、ヨガを行った患者群と一般的な単純なストレッチ運動を生活の中に取り入れた対照患者群とを比較し、初めて癌患者に対するヨガの効果を評価した。「ヨガの一部である心と身体とを連係させる運動には、治療および癌と診断されてからの生活において生じる精神社会的苦難や身体的苦痛に対して患者がうまく対処できるために支援するという点で、明らかに大きな可能性が秘められており、その効果には単純なストレッチ運動を超えるものがある」と、Cohen氏は述べている。

本研究を実施するにあたり、平均年齢52才(ステージ0-3)の女性乳癌患者163人を、1)ヨガ、2)単純なストレッチ運動、または3)ヨガ、ストレッチのいずれについても指示を行わない、の3つのグループに無作為に分けた。ヨガおよびストレッチ運動群の患者は、6週間の放射線治療の間、週3日、1日1時間、乳癌患者のために特別に設けた集まりに参加した。患者は、疲労、日常の生活動作、改善の有無、うつや精神面を含む生活の質について報告することが求められた。治療開始前、治療終了時、そして治療終了後1、3、6ヶ月後には唾液検体を採取し、また心電図検査を行った。

放射線治療終了後、ヨガおよびストレッチ運動群の患者からは疲労が減少したとの報告があった。ヨガを行った患者群では、放射線治療1、3、6ヶ月後の時点において、身体機能やおよび全般的な健康に対してより多くの改善の報告があった。同様に他のグループに比べて癌の経験による日常の変化を前向きに感じる傾向がよりあった

ヨガを行った患者はまたコルチゾールが一日を通じて大幅に下がっており、ヨガには、このストレスホルモンを調節する作用があることを示している。このことは、サーカーディアンコルチゾールリズム鈍化として知られる一日を通してストレスホルモンが高い値にある状態にあると乳癌の予後を悪くする傾向があるため、特に重要なことである。

Cohen氏によれば、ヨガ運動を展開することは癌治療を終了した患者に対しても有用であるという。「盛んな治療の日々から日常の生活に戻る時、それまでと同じレベルの診療や治療を受けることが出来なくなることにストレスを感じる可能性がある。そのような状況に対処するためのスキルとしてヨガのような心身運動を教えることで、この移行をより容易にするのである」。

米国国立癌研究所からの、癌分野でのヨガ研究においてこれまでで最も大きな助成により、Cohen氏と彼の研究チームは、今後、放射線治療中や治療後の身体機能、生活の質そして生物学的な効果改善におけるヨガのメカニズムを判断するため乳癌の女性患者に第3相臨床試験を実施する予定である。2番目であるものの大変重要であるとCohen氏が強調している目的は、一般的に病院の医療ケアに充てる費用の費用効率分析を評価すること、および患者の作業生産性を分析することである。

リラクゼーションをベースとした医療ケアが癌患者の利益となりうることを示す研究の拡大を、MDアンダーソンは認識している。統合医療プログラムの中で、ヨガのような補完治療がMDアンダーソン統合医療センターで提供されており、患者および介護者のために、症状の管理、ストレスの緩和、生活の質の向上、結果の改善を目的に主たる治療と合わせて利用される。MDアンダーソン統合医療部の教授陣は、また、心身面をベースとしたケアの生物学的および行動学的な影響、抗癌作用の可能性のある天然成分、一般的ながん治療に関係する副作用治療のための鍼の研究を実施している。

Cohen氏と共著者で、この研究に携わったMDアンダーソンがんセンターの研究者は以下の通りである。Kavita Chandwani医師、前上級研究コーデイネータ兼ヨガ指導者;放射線主要部門のRobin Haddad,M.P.H.、研究コーデイネータ、George Perkins医師;Amy Spelman博士、Kayla Johson,B.S.、Adoneca Fortier,B.S.、統合医療プログラム全スタッフ;乳腺腫瘍内科学部門のBranu Arun医師;Qi Wei,M.S.,上級統計分析者。ドイツ、ドレスデン市のドレスデン工業大学からはClemens Kirschbaum博士が研究に携わった。SVYASAからはNV Roghuram,B.E、R.Nagarathna医師で発起人でもあるHR Nagenda 博士の協力を得た。
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森田洋子 訳
原 文堅 (四国がんセンター 乳腺科) 監修