コルチゾールはストレス反応を調べる際に必須の検査項目である。この項目が高い場合には体内では炎症や血管収縮が起きている可能性を考えねければならない。あらゆる疾患の基本的な問題だろう。
そのときの体調や体質を見ることも可能な検査だろう。
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コルチゾールとは?
http://www.kensa-book.com/expression/cortisol.html

 コルチゾールと言う言葉はよく耳にする言葉ではないかもしれませんがお薬などの成分表などで一度は目にしたことがある言葉かもしれません。
 このコルチゾールとは、副腎皮質(ふくじんひしつ)と呼ばれる組織から分泌される「副腎皮質ホルモン」のひとつです。

 またコルチゾールは「糖質コルチコイド」と呼ばれる成分の一種でもあります。
 医療薬剤の成分としてはヒドロコルチゾンと記載されているケースもあります。
 糖質コルチコイドとは体内に在留するたんぱく質成分を糖分エネルギーに変換する働きをもつホルモン成分です。
 糖質コルチコイドは蛋白質を糖分へ変換する事で「血糖値」を上昇させる働きをもっております。
強い作用をもたらすステロイドホルモン

 コルチゾールは
●たんぱく質
●脂質
●炭水化物
 などの主要栄養素の代謝に関与する、人体にとって欠かせない成分のひとつでもあります。
 副腎皮質ホルモンとしてはかなり強い作用を発揮するステロイドホルモンであり、強い抗炎症作用をもたらします。
 但し、強い能力をもつ成分は強い働きが逆に人体に悪影響を与えるケースもあるものです。
 人体内で生成される成分ではありますが、医療用として使用されるコルチゾールの使用に関しても注意が必要となります。
脳の海馬を萎縮させる可能性が確認される

 コルチゾールの存在が深く認識されるようになった要因のひとつにPTSDとの関連性があげられます。
 PTSDとは心的外傷後ストレス障害のことで、強度のストレスや恐怖感の強い危機的体験が引き金となって発症する精神的疾患のひとつです。
 人は強いストレスを受けると、交感神経が過剰に反応し副腎皮質からアドレナリンを分泌させます。
 このアドレナリンの働きがあるおかげで、肉体的、精神的痛みに人間はある程度対応できるようになっております。
 しかしPTSDのように長期間に渡って心的ストレスが継続的に加わると、今度はこのストレスに対応する為に、同じく副腎皮質からコルチゾールが分泌されます。
 コルチゾールは血糖値を上昇させるとお話ししましたが、血糖値を高めることで心的ストレスに対抗する免疫組織の活動を抑制し安定化させているのです。
 但し、このコルチゾールはあまりにも長時間分泌され続けると脳の海馬を萎縮させる可能性があることが近年わかってきました。
 海馬は記憶を司る機関です。
 「強いトラウマのような体験を緩和させる為にコルチゾールがあえて脳の海馬を萎縮させているのか?」
 それとも別の何かの目的があるのか?
 現在も解明されていないコルチゾールの働きの謎でもあります。
※過剰のコルチゾール分泌は海馬を萎縮させる可能性がある
アジソン病・ACTH不能症の検査
 コルチゾール血液検査が行われるケースについて見ていきましょう。
 コルチゾール血液検査は、主に
●アジソン病
●ACTH不能症
 などの副腎皮質機能が関与する疾患を確認する際にコルチゾール検査が実施されます。
 これらの副腎皮質機能は糖質コルチコイドの増加・減少に伴ってホルモンの分泌をコントロールします。
ストレス量で分泌量も変動する
 コルチゾールはストレスの影響を受けることで、分泌量がコントロールされていることもわかってきております。
 強いストレスが発生しているときは分泌量を増加させ、ストレスが消化されると分泌量は平均値に戻ってきます。
 その為、躁鬱病の診断や、状況の確認を行う際にもコルチゾール測定検査が実施されます。
 尚、コルチゾールがあまりも体量に放出された場合は脳の海馬を萎縮する可能性がありPTSDとの関連性も近年注目を集めております。
※コルチゾールはストレスの大きさによっても分泌量が変化する
自覚症状を伴わないストレスの存在
 強いストレスを受けると、人体はそのストレスに対応する為にコルチゾールの分泌を行い対応しようとします。
 このような働きを防衛反応と呼びますが、その影響を受け脳に異変をもたらす可能性がある事も近年になりそのメカニズムが解明されてきました。
 但し、このストレスは本人が気がついていない段階で人体を蝕んでいく事もある点は覚えておかなくてはいけません。
 「自分はストレスとは無縁!」
 そう思っている人に限って躁鬱病を発症すると重症に至るケースも多くあるのです。
 特に営業職などで年中強いプレッシャーと戦っているサラリーマンなどは一度コルチゾールの数値をチェックしてみると良いかもしれません。
 自覚症状を伴わずに蓄積するストレスの存在があることもここでは覚えておきましょう。
※ストレスは自覚症状があるとは限らない
1日の中でも分泌量が大きく変化するホルモン
 コルチゾールは1日の中でも分泌量が大きく変化するホルモンです。
 このような1日内の成分分泌量の変動を日内変動と呼びます。

 コルチゾールは、一般的に起床時に最も高い数値を示し、時間の経過とともに数値は徐々に低下していきます。
 朝の起床後すぐは最も高く、就寝前には最低の数値となるのです。
 ですから血液検査を行う際は検査を実施する時間帯についても意識しておく必要があります。
日内変動のメカニズム
 このコルチゾールの日内変動のメカニズムは、副腎皮質ホルモンの分泌量をコントロールする「副腎皮質刺激ホルモン」の分泌の影響が関与しております。
 その為、コルチゾールの血液検査を行う際は、「副腎皮質刺激ホルモン」の検査も同時に行うケースが多くあります。
 尚、一般的なコルチゾール検査は起床時の空腹状態で採血を行うのが通常です。
 血糖値が高まる前の最も自然に近い状態で数値を測定することで信頼性がより高い指標となる為です。
 朝は最もコルチゾール数値が高まる時間帯ですから、基準範囲も朝の状態を指標としているケースが大半です。
※検査では朝食を食べる前に採血を行う
日内変動が体内で行われているかどうかも重要
 日内変動のメカニズムは何となくわかってきましたね。
 ここではシンプルに起床した時が最も高く徐々に数値は減少し寝る前が最も低くなると覚えておけば良いでしょう。
 尚、簡易検査キットなどで測定を行う場合は、早朝だけでなく「夜間の数値」も一度確認してみることをお勧めします。
 異なる時間帯で測定を行うことでしっかりとコルチゾールの日内変動が体内で行われているかどうかの確認を行うことも大切です。
※朝と夜の数値をチェックすることも大切
 もし変動が確認できない場合は副腎皮質ホルモンの分泌過程に問題が生じている可能性も検討されます。
~ポイントのまとめ~
★コルチゾール検査では朝食を食べる前に採血を行う
★朝と夜の数値をチェックし日内変動の確認を行うことも大切
検査表の見方とポイント
 コルチゾール検査値の一般的な正常値の範囲、基準値の範囲について見ていきましょう。
 ここで掲載する数値の範囲は、一般的なコルチゾール検査値の基準値の指標です。
 仮に基準値内であっても、疾患の可能性がないという訳ではもちろんありません。
 尚、コルチゾール血液検査では、「血液中」のコルチゾール含有量を測定します。
測定前のチェックポイント
 コルチゾール検査の数値は前項でお話ししたとおり1日の中でも数値が大きく変化します。
 日内変動を考慮し、検査は起床後に行うのが基本です。
 定期的に測定を行う場合は、比較指標として同一の時間帯に測定する必要性があります。
※コルチゾール数値の測定は毎回同一の時間帯・状況で行うこと
 また、採決は朝食を摂る前の食事前の段階で行うこと。
 定期的に日内変動の有無のチェックも行うことが理想です。
コルチゾール検査値の基準値の範囲早見表
 では基準値の範囲を実際にチェックして見ましょう。
 以下の基準範囲表は測定条件として起床時から2時間以内の範囲の指標となっております。
 検査の標準単位は(μg/ml)です。
【コルチゾール検査値の基準値の範囲早見表】
範囲 単位(μg/ml)
上昇が認められる範囲 24.0以上
基準値の範囲 4.0~23.9
低下が認められる範囲 3.9以下
数値が高い場合に考えられる疾患の可能性
◆数値が高い場合に考えられる疾患の可能性
 血液検査の結果、コルチゾール検査値が基準値の範囲よりも高くなっている場合について見ていきましょう。
 もしコルチゾール数値に上昇が確認された場合は、幾つかの疾患の可能性を検討していくことが大切です。
 数値が高い場合に考えられる疾患としては以下のような疾患を発症している可能性が考えられます。
●クッシング症候群
●過度のストレス状態
●薬物の副作用
●うつ病
数値が減少している場合の疾患の可能性
 数値が高値を示した場合であっても妊娠中の妊婦の場合は過度な心配は必要ありません。
 妊娠中の妊婦さんの場合は、コルチゾールの数値が全般的に向上する傾向にあります。
 女性は妊娠すると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量も増加し、妊娠週数が増えるにつれてその分泌量が増加していきます。
 コルチゾールに関してはエストロゲンほどの上昇はみられませんが、早朝から夜間にかけて妊娠前の状態よりも若干血中濃度が高まるのです。
 人体の免疫システムは人体内に侵入した細菌やウイルスを駆除する働きがありますが、これらの免疫システムにとっては赤ちゃんも体内に侵入してきた異物であることには変わりません。
 生物は不思議なことに自分のお腹の中の子供に関しては免疫システムが反応しないようになっておりますが、これらのわずかな反応を抑制する目的でもコルチゾールが分泌されている可能性があります。
数値が減少している場合の疾患の可能性
 血液検査の結果、コルチゾール検査値が基準値の範囲よりも低くなっている場合のケースについて見ていきましょう。
 このように検査値の数値が基準値よりも減少しているケースでは、以下の疾患の可能性が検討されます
~数値が減少している場合の疾患の可能性~
●先天性副腎皮質過形成
●アジソン病
●副腎結核
●ACTH副腎皮質刺激ホルモン不応症
●下垂体副腎皮質機能低下症
●副腎皮質ホルモン剤の副作用(ヒドロコルチゾン)