児童虐待、被害者に残る「分子の傷跡」 研究

10/3() 11:07配信

 

エピジェネテイックの研究はこれからどんどん盛んになるだろう。幼少期の虐待は体に強烈な刺激を与え、それが遺伝子の傷となるのだ。精神疾患や癌などの疾患もこの遺伝子の変化が関連しているのだと思う。

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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181003-00000013-jij_afp-sctch

 

AFP=時事】虐待を受けた子どもは、そのトラウマ(心の傷)を示す物質的特徴が細胞の中に刻み込まれている可能性があるとする研究論文が2日、発表された。研究は、過去の虐待歴を調査する犯罪捜査の助けとなる可能性を秘めている他、トラウマが世代間で受け継がれるのか否かをめぐる長年の疑問解明への一歩ともなり得る。

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カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)などの研究チームは今回の研究で、児童虐待の被害者を含む成人男性34人の精子細胞を詳しく調べた。

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その結果、精神的、身体的、性的な虐待を受けたことのある男性のDNA12の領域に、トラウマによる影響の痕跡がしっかりと残されていることが分かった。虐待のレベルについてはさまざまとされた。

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研究チームは、未来の児童虐待容疑の捜査において、「メチル化」として知られるこのDNAの改変を捜査当局は調べることになるだろうと予想する。

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ブリティッシュコロンビア大遺伝医学部の博士号取得候補者のニコル・グラディシュ(Nicole Gladish)氏は、AFPの取材に「遺伝子を電球とみなすと、DNAメチル化はそれぞれの光の強度を制御する調光スイッチのようなものだ。そしてこれは細胞がどのように機能するかに影響を及ぼす可能性がある」と語った。

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「ここで得られる情報から、児童虐待が長期的な心身の健康にどのように影響するかをめぐる、さらなる情報が提供される可能性がある」

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発達のさまざまな段階で遺伝子を「オン・オフ」するものについて調べる「後成遺伝学(エピジェネティクス)」分野での研究が近年、進められているが、今回の実験もその範疇に入るだろう。

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遺伝子をめぐってはかつて、受精時において既にプログラムが完了しているものと考えられていたが、現在では、環境要因や個人の人生経験によって活性化・非活性化される遺伝子も一部に存在することが知られてる。

 

 

■予想以上だった「調光スイッチ」の影響

 

精神医学専門誌「トランスレーショナル・サイキアトリー(Translational Psychiatry)」で論文を発表した研究チームは、メチル化が個人の長期的な健康にどのような影響を与えるかについてはまだ不明だとしている。

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統計的に見ると、女性は児童虐待の被害者となる確率が男性に比べてはるかに高いが、卵細胞の抽出が困難なため、今回の実験を女性で再現する予定はない。

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今回の研究結果によると、子どもの時に虐待を受けた男性のゲノム(全遺伝情報)の一部は、虐待を受けていない男性と比較して29%異なっていた。これについて研究チームは、DNA領域における「調光スイッチ」の影響は予想以上に高かったとコメントしている。

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なお、メチル化の度合いには経時変化がみられるため、被験者の男性の細胞を調べることにより、虐待が行われた大まかな時期について知ることができた。

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これについては、「医療従事者が活用したり、法廷で用いられる証拠として使用されたりする可能性のある検査方法を開発する助けになるかもしれない」と、グラディシュ氏は指摘している。

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論文の筆頭執筆者のアンドレア・ロバーツ(Andrea Roberts)氏は、精子細胞内に含まれる虐待の痕跡が、受精後も元の状態のままかどうかについてはまだほとんど明らかになっていないが、今回の研究により、トラウマが次の世代に伝えられるかどうかの解明に向けて「少なくとも一歩近づいている」と述べた。【翻訳編集】 AFPBB News