プロレスラー高山善廣、首から下が全く動かない「頚髄完全損傷」

 

プロレスラーの頚髄損傷事故のニュースが出ていた。頚髄損傷の病態をほとんどの人は知らないと思う。ネット上で調べてもらえばわかるが完全損傷となるとほぼ社会復帰は無理だろう。社会復帰どころか命の危険性もある重症である。

学生時代にラグビーの試合で頚髄損傷をおこした場面のビデオを見せられたことがある。頭から地面に突っ込んでいった選手の首があらぬ方向に曲がった。その後全身がけいれんしぴくぴくと波打ったのを覚えている。それ以降患者は歩くことも車いすさえ乗れなくなった。頚髄が完全損傷すると首以下の筋肉が全く動かないから車いすにさえ乗れない。体幹がフニャフニャするから姿勢が保てないのだ。そしてウンコもオシッコも垂れ流しになる。

2年ほど前に僕のところで通院していた患者が自転車で走行中に誰かがイタズラで張ったハリガネワイヤーに首をひっかけ転倒した。頚髄の完全損傷を起こし、寝たきりになった。自発呼吸ができず気管切開にて管を入れたままになった。そのためしゃべることもできず2年で亡くなった。

頚髄損傷は重症である。しかし、今回の高山選手の受傷機転を調べるとプロレス技の回転エビ固めの失敗である。回転エビ固めをするには高山選手の体は太りすぎている気がしたが、普段は大丈夫なのだろう。格闘技自体が相手の体を痛めつける競技で、プロレスは見せる格闘技だから相手の技を受けることも、派手できつい技をかけることも多いのだろう。その中での失敗は自己責任のうえでの事故だから仕方がないのかもしれない。

しかし、医療関係者として言わねばならないのは一生を台無しにして下手すれば社会的にも活躍できず下手したら死んでしまう事になるほどに危険であることを知ってほしいと言う事である。誰しも生まれてきて他人や社会の厄介にはなりたくない。自分で生活して自分なりの人生を生きてゆきたい。それがある日突然寝たきりになるかもしれないのだ。

エクストリームスポーツもまた似たようなものである。バイクで数十メートルもの高さのジャンプをしたり、壁をよじのぼったり、下ったりする。スケボーで、スノーボードで高い山の道路や雪の斜面を下る。ムササビマントをきて1千メートルの滑空をする。サーフィンで台風の中の巨大な波に乗る。

人間の限界を超えるかのようなこれらのエクストリームなアクテイビテイーは神業を持つ限られた人にだけ可能である。また、彼らも肉体の衰えと共に技に陰りが出始め、それでも無理をした人は命を落とす。

人間は平凡で幸福な毎日に耐えられず、危険で魅力的な冒険をする生き物である。僕はそれをよく理解している。だからこそ、自分の力量を体調を管理する必要がある。そして運、確率もある事を肝に銘じる必要があるのだ。エクストリームな体験は運が悪ければ命取りになる。それをわかってほしいと思う。

かつて力道山の活躍した時代には男同士がパンツ一丁で殴り合うだけで、投げあうだけでも興奮していた時代があった。しかし、今ではそんなものでは飽き足らず、ジャーマンスープレックス、パイルドライバー、関節技、ラリアット、空中殺法と呼ばれる危険な技が当たり前になった。頚髄損傷にかかわらず、命に係わる技が多数出てくる。人間の見たいという欲望、見世物でライオンに人間が戦いを挑むのを見たいという野蛮な欲望が、危険と隣り合わせのスポーツを見たいという欲望にとって代わっただけだ。それをスポーツというのか、見世物というのかわからないが、見世物にしている点では同じである。人間とはかくも退屈を嫌い、興奮とスリルを味わいたいものである。

おそらくそれは偏桃体の記憶の底にある命を懸けた戦いの記憶だろう。その記憶が途切れないようにその時代でのエクストリームな体験が必要なのだ。または見るという体験が必要となるのだ。

ああ、あらゆるエクストリーム好きな人たちが、その卓越した技術と体力と精神力を途切れることなくいてほしい。運命の目が意味から愛されてほしい。そして、いつかはい衰えが来る自分の肉体の限界を知り、その限界に気が付いて潔く身を引く勇気を持ってほしいものだ。

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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170904-00000065-it_nlab-ent

プロレスラー高山善廣、首から下が全く動かない「頚髄完全損傷」に 支援団体TAKAYAMANIA設立

 

9/4() 18:13配信 ねとらぼ

プロレスラー高山善廣、首から下が全く動かない「頚髄完全損傷」に 支援団体TAKAYAMANIA設立

 

PRIDEなどで活躍し、54日にDDTプロレス豊中大会で負傷して長期休養に入っていたプロレスラー・高山善廣選手の状態が発表され、頚髄(けいずい)完全損傷で回復の見込みなしと診断されました。

 

DDT豊中大会の試合後に病院に救急搬送され、その翌日の55日に「頸髄損傷および変形性頚椎(けいつい)症」という診断が下りていた高山選手でしたが、94日にあらためて発表されたのは「頚髄完全損傷」というあまりに厳しい診断でした。

 

高山選手によると、頚椎を痛めてしまい首から下が全く動かず、また呼吸もできなくなってしまったとのこと。さらに首の手術を受けた後、心臓停止などもあり、術後の経過が思わしくなく、なかなか報告できる状況になかったとしています(現在は呼吸器は外れ呼吸や会話は可能)。

 

高山選手と言えば、タッグチーム「NO FEAR」での活躍、さらにはPRIDEでドン・フライと完全ノーガードで殴り合ったシーンなどを見せてきた、日本を代表するプロレスラーの1人。

 

現在、首から下が動かない状況の中で厳しいリハビリを受けている高山選手を応援するため、有志一同による団体「TAKAYAMANIA」が設立されました。今後、各プロレス団体の協力のもと、試合会場で募金箱の設置、応援グッズの販売、チャリティー興行などを行う予定で、DDTプロレスでも97日のDNA新木場大会から各会場に募金箱を設置します。

 

今後の活動は高山堂ブログで随時更新されます。募金先は以下の通り。

 

【銀行振込】

東京三菱UFJ銀行

代々木上原支店

(店番号)137

口座番号:普通預金 0057767

口座名義:株式会社 高山堂

※通帳は高山選手の奥様が持っています。

 

プロレス界を長年引っ張ってきた高山選手に、プロレス界のみならず各界から多くのエールが集まっています。

 

発表会見で涙ながらに盟友の病状を語った鈴木みのる選手は「高山善廣に勇気をたくさんもらったと思うので、ぜひ皆さん力を貸してください」と呼び掛けました。

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