心の声を聴くと言う事、身体の声を聴くと言う事

昨日ニュースで俳優・歌舞伎役者の中村獅童が肺腺癌になっており手術になるとの記事を見かけた。

僕の中では「また、歌舞伎役者か」という思いがある。特に歌舞伎役者と親しくはしていないし彼らの生活習慣なども知る由もないが、中村勘三郎さんが食道癌で(57歳)、市川團十郎さんが白血病で(66歳)坂東三津五郎さんが膵臓癌で(59歳)と有名な方が立て続けに癌で亡くなっている。がんは体と心のストレス(過剰な負担)で起きる病気だから、職業的に肉体的にきついのか、精神的にきついのか、その両方かと言う事になる。

仕事で地方興行が多く、興行中には家族親戚の不幸があっても途中休むこともできないと聞いたことがある。また、かつての日本伝統を受け継いでいるためにかくあるべしという考え方を矯正されているのではないだろうかとも思う。親や親せきまたは友人などの死に際して葬式にも行けないのは立派なストレスだ。ただでさえ寂しい気持ちになるのに、その通夜や葬式にも出席できないとなれば自分を責める気持ちも出てこようし、無念な気持ちにさいなまされるだろう。また、歌舞伎役者周辺の方々の生活が自分の方にかかっているのも重荷となろう。

人間のストレスで肉体的なものと精神的なものとどちらが重要かはわからない。しかし末期がんの患者さんたちを見てきた経験から言うと精神的なストレスのほうが重要度は大きいと思う。末期がんが治癒する人は、総じて精神的なあり方が変化する方が多いからである。精神的な変容がなく末期がんが治った人がいるとは聞いたことがない。いくら菜食主義になろうとも玄米を食べようとも、サプリメントを摂取しようとも心のストレスが消えないかぎり末期がんは治らないと感じている。

では心のストレスはどうやったら解消するのか?まずは自分で自分のストレスを認識していないことがある。肉体のストレスもそうである。まだまだ行けるだろう、もっと動ける。もっと強くなろう、もっと動ける。気持ちもこれくらいでへこたれてどうする、まだまだ自分を追い込んでいけるはずだ。

などの考え方が徐々に自分の心を追い詰めることがある。勿論強くなっていくことと、ストレスをかけることはほぼ同意義であるので否定できるものではないが、どっかで度が過ぎて害になっているのである。自分の体の声を聴くことが出来ていないときにはオーバーワークになり、知らない間に風邪をひきやすくなったり、何かしら体調が不安定になる。心の世界ではイライラが止まらなくなり怒りやすくなる。不安感が顔を出すことが多くなり焦燥感が出てくる。これらの症状が出始めたら要注意であろう。人と会ったり会食したり、出歩いて自分の体と心をごまかすことは可能であるが、それは一種の目くらましである。車の異常を示すランプがついているのにその電源を抜いて消してしまうのと同じである。後で必ず深刻な故障が生じてくるのである。その前に自分で自分の異常に気が付くことが大切である。自分の体の声を聴け、心の声を聴け、がん患者さんにはまずこれを教えてあげたい。そうすれば必ず解決策がある。