最先端の次世代がん診断システム開発へ、産学官連携プロジェクト始動

-13種類のがんを1回の採血で診断-マイクロRNAでがん診断法開発が始動

 

今までがんの早期診断は感度、特異度に問題が多かった。私も使っていたCTC検査も感度、特異度に問題があった上に、費用も高額だった。ところが、今回のマイクロRNA検査では感度、特異度ともに99%に近い。おまけに13種類の癌の早期診断であっても2万円程度でできるようになってきたらしい。

マイクロRNAに関する情報が熱い。

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国立癌研究センターのサイトより

http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20140818.html

2014818日 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 独立行政法人国立がん研究センター 東レ株式会社

 

NEDOは、独立行政法人国立がん研究センター(以下、NCC)、東レ株式会社(以下、東レ)及びアカデミア、企業等他7機関と共に、健康診断などで簡便にがんや認知症を検査できる世界最先端の診断機器・検査システムの開発に着手します。 NEDOは、これまでにもがんの早期の診断・治療のために多くのプロジェクトに取り組んできましたが、今般、患者への負担が小さく、より早期に一度に様々ながんを診断できる技術の開発を支援することとしました。本プロジェクトの研究成果の実用化により新しい医療産業の育成につながることを期待しています。 本プロジェクト1では、NCCに蓄積された膨大な臨床情報とバイオバンクの検体、マイクロRNA腫瘍マーカーについての研究成果を基盤として、東レが開発した高感度なDNAチップと、東レとNCCが共同開発した血液中に存在するマイクロRNAバイオマーカーの革新的な探索方法を活用して、体液中のマイクロRNAの発現状態についてのデータベースを構築、網羅的に解析します。 この測定技術により、乳がんや大腸がんなど13種類2のがんや認知症の早期発見マーカーを見出し、これらのマーカーを検出するバイオツールを世界に先駆け実用化を目指します。 【用語解説】 ※1 「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」20142018年度 ※2 胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫

 

1.概要

疾患マーカーの探索は、これまで日本及び米国など世界中で実施されていますが、臨床現場での実用化に至ったものは少ないのが現状です。この原因の大きなものに、疾患マーカー探索研究が限られた検体群を用いて実施することを余儀なくされる場合が多く、さらには普遍的な研究が実施されないことが指摘されています。 本プロジェクトにおいてはNCC及び独立行政法人国立長寿医療研究センター(以下、NCGG)のバイオバンクに保存されている数十万検体の血清から、13種類のがん及びアルツハイマー病等の認知症について、疾患の早期発見マーカーや、医療現場で必要とされる様々な疾患マーカーの探索を網羅的に行い、確度の高い疾患マーカーを得ることができます。 さらに、日本発のバイオツール技術によって高感度・高精度なマイクロRNA疾患マーカー検出ツールを開発することにより、一部欧米に先んじられている検査・診断分野の開発における日本の地位を引き上げることが可能となります。 本プロジェクトは、マイクロRNAの研究を進めるNCC研究所 分子細胞治療研究分野落谷孝広分野長を研究開発責任者とし、NCCの研究部門と臨床部門、東レ株式会社をはじめとする9機関の連携、さらにNCC8大学の共同実施によって実施されます。アカデミアで運用されているバイオバンクの活用といった組織横断的連携に加え、産業界とアカデミア諸機関との協同、さらにNEDOによる継続的支援により実現します。 【マイクロRNAとは】 血液や唾液、尿などの体液に含まれる22塩基程度の小さなRNAのこと。近年の研究で、がん等の疾患にともなって患者の血液中でその種類や量が変動することが明らかになっています。さらに、こうした血液中のマイクロRNA量は、抗がん剤の感受性の変化や転移、がんの消失等の病態の変化に相関するため、全く新しい疾患マーカーとして期待されています。

 

 

2.プロジェクト概要

【事業期間】 2014年度~2018年度(5年間) 【事業規模】 約79億円(予定) 【研究開発項目】 (1)患者体液中マイクロRNAの網羅的解析

  • NCC及びNCGGのバイオバンクに保存されている血清検体から、日本人に多いがん種ごとに5,000検体以上、及びアルツハイマー病等の認知症の検体等についてマイクロRNA発現プロファイルを取得

2)疾患横断的に解析可能なマイクロRNA発現データベースの構築

  • マイクロRNAデータと臨床情報を格納し、横断的な解析を可能にするデータベースを構築
  • プロジェクトの成果を製薬企業、診断薬企業及び診断機器企業等に橋渡し、プロジェクト成果の実用化を推進するためにユーザーフォーラムを設立
  • ユーザーフォーラム参画企業がこのデータベースにアクセスできる環境を構築

3)マイクロRNA診断マーカーとマイクロRNA検査/診断技術の開発

  • 臨床情報とマイクロRNAデータを解析し、血中マイクロRNA診断マーカーを探索
  • 臨床情報とマイクロRNAデータを解析し、血中マイクロRNA診断マーカーを探索
  • 診断用マイクロRNAマーカーが疾患や病態と関連するメカニズムの解明を実施

4)臨床現場での使用に向けた検査システムの開発

  • 臨床現場で、体液(血清)中のマイクロRNAの抽出から検出までを全自動で、簡便・短時間に行える自動検査システムを開発

 

  1. 委託先
  • 独立行政法人国立がん研究センター
  • 独立行政法人国立長寿医療研究センター
  • 東レ株式会社
  • 株式会社東芝
  • 特定非営利活動法人バイオチップコンソーシアム
  • 一般社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム
  • プレシジョン・システム・サイエンス株式会社
  • アークレイ株式会社
  • 国立大学法人京都工芸繊維大学
  • 国立大学法人大阪大学(共同実施)
  • 学校法人東京医科大学(共同実施)
  • 公立大学法人大阪市立大学(共同実施)
  • 国立大学法人東京医科歯科大学(共同実施)
  • 国立大学法人九州大学(共同実施)
  • 国立大学法人名古屋大学(共同実施)
  • 国立大学法人群馬大学(共同実施)
  • 国立大学法人広島大学(共同実施)
  • 独立行政法人産業技術総合研究所(再委託)

 

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サイエンスポータルのサイトより

http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2014/08/20140818_02.html

たった1滴の血液に含まれるマイクロRNAを計測して、がんを簡単に早期診断できる画期的な次世代診断システムの開発を目指した産官学のプロジェクトの会見とキックオフ会議が818日、国立がん研究センター(東京・築地)で開かれた。全国の研究者や医師ら約100人が集まり、5年で79億円を投じる大規模なプロジェクトの成功への意思を確認し合った。

このプロジェクトは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が今年度から予算化した。国立がん研究センターの研究所と病院、東レや東芝などの企業が連携し、8大学なども加わる。患者への負担が少なく、多様ながんを一度に診断できる技術の開発を目的としている。このプロジェクトを通じて、新しい診断機器製造などの医療産業の育成も期待されている。

新しい診断法は、従来とまったく異なる原理に基づいている。がん組織はエクソソームという小胞(直径1万分の1㎜以下)を血液などの体液に出しており、中にそれぞれ特有のマイクロRNAを含んでいる。主要な13種類の臓器のがんについて、国立がん研究センターが患者の同意を得て収集したバイオバンクの膨大な血液試料から特異的なマイクロRNAを探し出す。この網羅的な探索は、各臓器のがんごとに5000例以上、計65000例以上実施して絞り込み、マイクロRNAデータベースを構築する。

エクソソーム中のマイクロRNA 22塩基ほどの小さなRNA 。ヒトのマイクロRNA2500種以上知られているが、このうち、各種のがん特有のマイクロRNAは、がんの転移や病態変化などに関与しており、新しい疾病マーカーとして有望視されている。世界中でこの数年、盛んに研究されているが、患者の膨大なバイオバンクと照合して、実用的ながんマーカー探しはこのプロジェクトが初めてとなる。

エクソソーム研究の第一人者で、プロジェクトの研究開発責任者を務める落谷孝広(おちや たかひろ)国立がん研究センター分子細胞治療研究分野長は会見で「マイクロRNAは今までにないがんマーカーで、感度と特異性が高い。安価で迅速、正確なRNA 解析装置も作る。乳がんや大腸がんの研究が先行しており、できる限り早く使えるようにしたい。がんのマイクロRNAは人種を超えて共通なので、プロジェクトの成果は世界に発信できる」と話した。

マイクロRNAの分析では、東レの高感度DNAチップの3D-Geneが威力を発揮している。東レの米原徹(よねはら てつ)先端融合研究所長(専任理事)は「われわれはツールを持っているので、『事業化したい』という明確な意思を持って取り組む」と語った。また、倉田健児(くらた けんじ)NEDO副理事長は「プロジェクトの成果を広く医療現場に使えるようにしたい。日本の医療産業のイノベーションにつながっていく」と意義を強調した。堀田知光(ほった ともみつ)国立がん研究センター理事長は「5年間の国家プロジェクトで、世界をリードする。がん検診などの負担も減らしたい」と成果の最大化に意欲を見せた。

写真1. 記者会見する(左から)倉田健児NEDO副理事長、堀田知光国立がん研究センター理事長、米原徹・東レ先端融合研究所長
写真2. 高感度DNAチップの3D-Geneを使ったマイクロRNAの分析 =国立がん研究センター研究所