アミロイドたんぱく質の蓄積は多くの疾患に関連があります。アルツハイマー型認知症、Ⅱ型糖尿病、狂牛病、ハンチントン病、甲状腺髄様癌、不整脈などです。いずれもこのアミロイドたんぱくが作るアミロイドの蓄積が組織構造を破壊する事であり、それによって正常な細胞の働きを阻害されることである。

ビールを飲むことでアミロイドたんぱく質の蓄積が抑制されるならば、治療の展望が開けることになる。アルコールの中でもビールだけというなら本当に物質的にビールは有用な働きを持つ可能性がある。

 

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臨床アルコール代謝研究の専門ジャーナル(電子版)に、ビールの摂取が多いと、脳内のアミロイドβタンパク質の蓄積が少ない、という関連を示した研究が、スウェーデンとフィンランドのグループから報告されていました。(Alcohol Clin Exp Res. 2016 May 24.) アルコールの消費と、認知症や認知機能障害の発症との関係については、議論があり、明確な結論は得られていません。 アルツハイマー病では、記憶や言語など認知機能の障害が認められ、神経病理学的には、タウたんぱく質のリン酸化やアミロイドβたんぱく質アミロイドタンパク)の蓄積などの病態が検出されます さて、今回の研究では、各種のアルコール摂取と、脳内のβアミロイド蓄積との関連が検証されました。具体的には、 突然死症例125(3570歳の男性) の剖検所見から、(Helsinki Sudden Death autopsy Series) アルコールの消費、脳内のβアミロイド蓄積、ApoE遺伝子多型(アルツハイマー病の遺伝素因)との関連が調べられています。 本人のアルコールの消費歴に関して、親類を対象に質問票での調査が行われ、βアミロイドは脳内の神経組織学的検査による測定が行われました。 ApoE遺伝子多型は、心筋のサンプルからDNA抽出により調べられています。 解析の結果、まず、脳内のβアミロイド蓄積の増大は、加齢との有意な相関が見出されました。(p = 0.001; OR = 1.09, CI = 1.04 to 1.15) 次に、ビールの消費は、脳内のβアミロイド蓄積の減少と有意な相関が見出されたということです。(p = 0.024; OR = 0.35, CI = 0.14 to 0.87) なお、アルコールの消費量と、βアミロイド蓄積は関連がなく、また、蒸留酒やワインの消費も関連は認められませんでした。 以上のデータから、論文著者らは、ビール消費により、脳内でのβアミロイド蓄積が抑制される可能性を考察しています。 今後、因果関係や作用機序の検証、臨床的意義の解析が期待される分野です。 現時点では、さすがに、ビールを飲めばアルツハイマー病リスクが低下するとはまだまだ言えないですので、関与する機能性食品成分の解析や作用メカニズムの検証、その他、日本人での検証などが必要です。 (今回は、剖検所見による脳内βアミロイド蓄積は定量的に調べられていますが、飲酒量は、本人ではなく、親類からの質問票の結果ですので、信頼度が必ずしも高いわけではなく、人種差もあると思われます。)