一般的にはベジタリアンは非ベジタリアンに比べると癌のリスクが低いとされているが、今回の研究ではビーガンベジタリアンだけが乳癌のリスク低下がみられた。乳製品や肉食は癌リスクが高いのだが、そういったものを一切取らないのがビーガンである。鶏肉、卵、牛乳、チーズ、乳製品まで取らないのだから、一般的な日本人にはできないレベルである。

 

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今月の栄養学の専門ジャーナルに、乳がんの低リスク群において、ビーガン食による乳がんリスク低下効果を示した臨床研究が、米国のグループ(Loma Linda University)から報告されていました。(Br J Nutr. 2016 May;115(10):1790-7.) 米国人の女性では、乳がんは、罹患率および死亡率がいずれも第2位であり、予防/リスク低減、再発予防に関する研究が進めされています。 日本人は、欧米人/白人に比べると、乳がんの罹患率は低いとされていますが、 日本の女性の乳がん粗罹患率,年齢調整罹患率は、いずれも1975年以降増加傾向が続いています。 2010年の乳がん(上皮内がんを含む)の粗罹患率は、他の癌種に比べ 最も高い(人口10万対115.7人)ことが知られています。 また、、年齢調整罹患率も、乳がんが最多です(人口10万対88.7人)。 年齢別にみると、女性の乳がん罹患率は、30歳代から増加し、40歳代後半でピークに達し、 その後、ほぼ一定に推移、60代後半から次第に減少します。 これまでの研究では、食事と乳がんリスクとの関連について、さまざまなデータが報告されています。 人種による差やエピジェネティックな変化など補正に限界のある交絡因子があるため、必ずしも一定の結果とはなっていません。 今回の研究では、米国の女性において、乳がん罹患率に対するベジタリアン食と非ベジタリアン食の相違が検証されました。(アドベンティストヘルススタディ-2, AHS-2という研究の一環です。) 具体的には、2002年から2007年に試験登録した96,001名を対象に、食事調査が行われ、 ビーガン、ラクトオボベジタリアン、ペスコベジタリアン、セミベジタリアン、非ベジタリアンの分類され、48州の米国がん登録データとの比較が行われています。 女性の参加者50,404(うちベジタリアン26,193)、ベジタリアン群で478名の乳がんが見出されています。全部のベジタリアン群と非ベジタリアンの比較では、乳がん罹患率に有意差は認められませんでした。(HR; 0.97; CI 0.84, 1.11; P=0.64) 次に、ベジタリアンの中での層別解析では、ビーガン群では、非ベジタリアン群に比べて、 一定した乳がん罹患率低下作用が見出されています。(all cases: HR 0.78; CI 0.58, 1.05; P=0.09) 以上のデータから、米国人女性において、 セミベジタリアンやペスコベジタリアン、ラクトオボベジタリアンを含む全体のベジタリアン群では、非ベジタリアン群と比べて乳がん罹患率に差は認められませんが、 ビーガン群では、罹患率の低下が示唆されます。 一般に、植物性食品を中心とするベジタリアン食では、 抗酸化作用や抗炎症作用を含む機能性食品素材により、がんをはじめとする生活習慣病の予防効果が考えらます。 また、魚油に豊富なオメガ3系脂肪酸のEPADHAでは、抗炎症作用によるがんリスク低下作用が知られています。実際、EPAによる乳がんリスク低下作用が知られています。 一方、赤身肉や加工肉の摂取が、がんリスクを高めることはコンセンサスが得られており、がん予防のために、赤身肉・加工肉の摂取を減らすことが推奨されています。 今回の研究のように、ラクトオボベジタリアンやセミベジタリアンを含めての解析では、炭水化物や乳製品の摂取による影響があるため、ベジタリアン食による乳がんリスク低下作用が検出されなかったと考えられます。